【後編】ボランティアの募集方法とマネジメント方法ーNPO法人ブレーンヒューマニティーの事例ー

大学生ボランティアに子ども支援現場に参加してもらっている団体の中には、大学生とのチームビルディングやボランティア向けの研修作りについて困りごとを抱えている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、大学生との関わり方やボランティアに実施している研修について、NPO法人ブレーンヒューマニティー(以下、ブレーンヒューマニティー)代表理事の松本 学氏と、ボランティアのマネジメントを担当されている駒井 まゆ氏に伺いました。

プロフィール:松本 学
関西学院大学総合政策学部・大阪市立大学創造都市研究科修了。学生時代よりブレーンヒューマニティーにて活動。卒業後、TOTO株式会社にて勤務。2013年に経済的に困窮した子どもの支援を行う公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンに入社。東日本大震災で被災した子どもたちの教育支援に従事。2015年にブレーンヒューマニティーに入社。事務局長を経て2018年より代表理事に就任。子どもや若者が主体的に多くの選択ができる社会を作っていきたい。

プロフィール:駒井 まゆ
1994年、兵庫県尼崎市生まれ。2015年、ブレーンヒューマニティーにて活動を始める。高校生のキャリア教育プログラムに従事し、企画管理者として数多くの企画に携わる他、約1年間事業部代表を務める。2017年大阪市立大学商学部を卒業し、株式会社ミナジンに入社。2018年、同社を退社し、ブレーンヒューマニティーに入社。今後は大学生スタッフが当会のビジョンの実現に向け尽力できるような環境作りをしていきたいと考える。

沢山の大学生ボランティアが参加する要因

━━ブレーンヒューマニティーではボランティアの約9割が大学生とのことでしたが、多くの大学生ボランティアに参加いただいている要因はどこにあると思われますか。

駒井:ボランティア募集のときに様々な工夫を凝らしている点もあると思いますが、これから活動に参加しようと考えている人が実際の活動のイメージがしやすいようにしています。例えば、学習支援事業では支援現場で活動する前に面接や研修を行ったり、子ども食堂では説明会を開催したりしています。

━━研修や説明会を行うなど、ボランティアが活動しやすいように工夫をされているのですね。ボランティアが責任を持って積極的に活動している要因はどこにあると思われますか。

松本:そもそもボランティア自身の意欲が高いという点は大きいです。有償ボランティアよりも、自分で交通費を支払って来てくれている人など無償ボランティアの方がやりたいことが明確にあって活動に参加してくれる印象があります。

また、ボランティア自身がブレーンヒューマニティーをひとつの居場所だと思えるような雰囲気づくりを心掛けています。

ブレーンヒューマニティーのボランティアは約9割が大学生です。そのため、大学生が事務所で過ごしやすいように、ボランティアが使うことができるスペースを作ったり、PCを配置してネット環境を整備したりしています。また、大学生がいつでも事務所に来所できるように、大学生も事務所を開けることができるようにしています。そして、大学生の居場所に代表が入りすぎないというのも工夫のひとつです。

そのような工夫の結果、多くの大学生がブレーンヒューマニティーをサークルのように思ってくれて、仲間と共に活動を頑張ってくれています。

━━多くの大学生とチームを作る中で、時には意見がぶつかることもあるのではないでしょうか。そのような時はどのように対応されていますか。

駒井:もちろん、チームで活動する中で意見がぶつかることもあります。私は、り良い関わりやより良い現場づくりのためであれば意見をぶつけ合うことは重要だと思っています。そのため、お互いに出した意見を踏まえてどのようにすれば、より良い関わりや現場になるのかを話し合っています。むしろ、意見をぶつけ合わせられる関係性を築けるようにしたいと感じています。

また、そのようにして自分たちで意見を出し合い考えていく過程が、大学生自身が子どもと関わる時に活きてくるとも思っています。最近は、子どもも大学生も本音で話すことが難しくなってきているのではないかと感じています。だからこそ、まずは大学生が自分の考えを伝えたり、他人が伝えてくれたことを受け入れたりできることが大切だと思っています。

松本:大学生が意見をぶつけ合える関係性を築けている理由は、長く一緒にいることや同じテーマに関心を持って活動していることだと思います。

ただ、オンラインでのコミュニケーションが増えてからは、意見をぶつけ合うことが減ったように感じます。そのため、大学生が意見を出し合えるよう、スタッフが働きかけることもあります。

駒井:そうですね。日常会話の中で、スタッフが大学生に対して、どのように感じたのかを聞いたり、意見を伝えない場合はどうして伝えないのかを尋ねたりしています。

 

ブレーンヒューマニティーで実施している研修の種類

━━ブレーンヒューマニティーではボランティアに対してどのような研修を行なっていますか。

松本:事業によって多種多様な内容の研修を実施しています。ここでは一例として、学習支援事業の研修を紹介したいと思います。学習支援事業の場合、大きく分けて3つの研修を行っています。

①事前研修

子どもの貧困や、学習支援を行う時の子どもとの関わり方ついて説明しています。また、SNSの使い方など社会人として必要な基本的なマナー・モラルや知識についても説明しています。

②専門的な領域についての講習会

年に1、2回の頻度で、不登校や虐待のような専門的な領域についての講習会を行っています。ブレーンヒューマニティーで実施することが難しい内容もあるため、近隣のNPOなどと連携しながら実施することもあります。

③現場のチームリーダーによる自主勉強会

ブレーンヒューマニティーでは、半期の任期でチームリーダーを決めており、チームリーダーが中心となって月に1回程度自主勉強会を行っています。自主勉強会では、気になる子どもがいるかどうかや、どのような関わりが実際に上手くいったかをシェアしています。


画像:ブレーンヒューマニティー提供

 

研修の作り方と効果

━━事前研修の内容はどのように作られているのですか。

松本:子どもの貧困については、相対的貧困の理論的な話をするだけではなく、最近の事例についても経験に基づいて話すようにしています。また、毎回同じ研修内容にするのではなく、経験をもとにその都度研修内容を変更して充実させるようにしています。

━━専門的な領域についての講習会では他のNPOなどと連携することもあるとのことでしたが、どのようにして連携する団体を探していますか。

松本:連携する団体を意図して探すというよりは、事業を通して繋がった団体や人と連携をしています。居場所支援事業で出会ったLGBTQの専門家の方や、関西にあるNPOの集まりで出会った団体などがその一例です。

現在は対面での集まりや交流は難しいのですが、反対に、オンラインでの研修が可能になったことで、全国にある団体とも繋がりを持つことができるようになりました。

━━研修や勉強会による効果はどのようなところに現れていると感じますか。

松本:大学生の間での学び合いが増えたと感じています。当初は、現場責任者である職員がボランティアを集めて研修を実施していたのですが、その形式だと研修が「受けなければならないもの」という位置づけになってしまっていました。

その状態を改善したいと考え、研修も大学生が主体で行うようにしました。それにより、子どもについて大学生自身が考えたことの共有という目的以外にも、大学生が自主的に勉強会を行うということ自体に価値が出てきたように思います。

 

まとめ

 今回は、ブレーンヒューマニティの松本さん、駒井さんにボランティアに活躍してもらうために実施していることについて伺いました。ポイントを下記にまとめます。

  • ボランティア自身が団体をひとつの居場所だと思い、自主的に活動できるような環境・雰囲気づくりを行う。
  • より良い子どもとの関わりや現場づくりのために意見をぶつけ合える関係性を築くことを大切にしている。
  • 事業に合わせて多種多様な研修を行っており、学習支援事業では事前研修の他、他団体と連携して実施する講習会や、大学生が自主的に行う勉強会を実施している。
  • 研修を作る時には、経験に基づいて事例を話すなど、研修ごとに内容を工夫する。また、経験をもとにその都度研修内容を変更して充実させる。
  • 勉強会を学生主体で行うことで、大学生同士の学び合いが増えた。

松本さん、駒井さん、ありがとうございました!

前編では、大学生ボランティアの募集方法についてお伺いしています。

【前編】大学生ボランティアの募集・マネジメント方法 ―NPO法人ブレーンヒューマニティーの事例―
【前編】大学生ボランティアの募集・マネジメント方法 ―NPO法人ブレーンヒューマニティーの事例―

 

※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りませ​ん​。

 

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