「子ども」と「地域」の両方を考える〜子ども支援拠点でのコミュニティソーシャルワーク〜

子ども支援拠点において子どもたちの抱える複雑な課題に直面していると、子ども・保護者への直接支援だけでなく、地域内での連携や資源開拓の重要性を感じる方も多くいらっしゃると思います。こども支援ナビではこれまで様々な団体の地域連携の事例をご紹介してきました。

今回は、「コミュニティソーシャルワーク」の視点を活用し、子どもや保護者への直接支援と地域への支援の両方を考えていくためのポイントなどをまとめます。

コミュニティソーシャルワークとは何か

コミュニティソーシャルワークの定義は様々ありますが、基本的には「個別支援と地域支援の両方を行う」ことを指します。

ここでは「生活上の課題を抱える人やその家族に対する個別支援」と、「個別支援をより良いものにしていくために関係者や専門機関がネットワークを構築し、その人や家族を支えていく地域支援」のどちらも一緒に実施していくこととして説明をしていきます。

なぜ必要なのか

個別支援だけでなく、地域支援も行う必要があるのはなぜでしょうか。背景には、子ども支援の抱える課題があります。子どもたちの置かれている状況は非常に複雑であり、周りの大人たちが精一杯努力しても適切な支援が難しいことが多くあります。その原因は大きく3つあります。

  • ①困難な状態に置かれている子どもに気付くのが難しい
  • ②困難な状態に置かれている子どもに気付いても、適切な支援につながらない
  • ③つながった支援先で、適切な支援が行われているか不透明である

このような状況を打破するために、子どもや保護者の支援をする個別支援だけでなく、地域で連携し、地域全体が子どもの成長にとって適切な環境になることが大切なのです。


出典:ソコスト

子ども支援拠点スタッフのコミュニティソーシャルワーク

専門のコミュニティソーシャルワーカーの場合、問題解決へ向かうためのチームを作り、課題の把握・計画作成と実施・振り返りのすべてを自身が主導します。しかし、全ての子ども支援拠点に専門のコミュニティーソーシャルワーカーがいるわけではありません。

ここからは、専門のコミュニティーソーシャルワーカーではなくても実施できるコミュニティソーシャルワークについて考えていきましょう。

​​子ども支援拠点のコミュニティーソーシャルワークでは、以下3つのポイントを考えていけると良いでしょう。

  • 1つめは、支援拠点のある地域の中で困難を抱える子どもがきちんと見つかり、必要な支援につながること
  • 2つめは、子どもたちが健全に成長できるよう、関係機関や地域住民と適切につながり、連携すること
  • 3つめは、関係機関や地域住民とつながり、一緒に考え、課題解決に向かうことです。特に子ども支援拠点では、学校・行政機関・地域住民との連携を強化し、子どもたちの健全な成長を支えるチームとなることが大切になってきます。

問題解決の流れ

では実際に、問題を抱えた子どもや保護者を発見した際、どのように問題解決へ向かうのか見ていきましょう。問題解決はおおよそ以下の流れで行われます。

  • ①現状把握
  • ②理想を描く
  • ③現状と理想を埋めるための計画策定と実行

それぞれ順番に確認していきましょう。

①現状把握


作成:NPO法人Learning for All

まずは子どもや保護者の現状を把握することに加え、地域の現状を把握する「地域アセスメント」も行います。地域にある課題を見つけると同時に、社会資源は何があるのかどう活かせるのかということについても検討しましょう。社会資源は例えば、行政の制度や学校、地域の民生委員やNPO団体などがあげられます。

困難を抱える子どもや保護者の周りにあるものや人、つながりの有無、問題を解決するために地域には必要な資源が整っているのか、などを洗い出しましょう。

②理想を描く


作成:NPO法人Learning for All

次に問題解決に向けて、地域には何があるべきなのか、関係機関の人にはどうあってほしいのかなど地域の理想を描きます。例えば「この機関の人には子どもに対してこんな眼差しを持っていてほしい」「こんなことをしてくれる人や団体があるといい」など具体的に理想を描くことが大切です。

子ども支援拠点のスタッフ全員でワークショップを行い、その地域の理想状態を描くのも良いでしょう。この時、物理的なものだけを考えるのではなく、地域の人からの子どもへの眼差しや想いなどについても検討してみましょう

③現状と理想を埋めるための計画策定と実行


作成:NPO法人Learning for All

そして計画をつくる際には、次の3つを意識できると良いでしょう。

1つめは、つなぐ・つながることです。子ども・保護者と関係機関、関係機関同士など、問題解決に必要なもの同士がつながり、情報連携をしながら活動できる状態を目指しましょう。例えば、子どもの通う学校、医療機関、福祉事務所などが連携し、子どもと保護者を支える1つのチームとなって活動していきます。

2つめは、支えることです。支える対象は子ども・保護者だけでなく、関係機関の職員等も含まれます。例えば、学校教員とのコミュニケーションがうまく取れない保護者に対して、子ども支援拠点のスタッフが両者の面談に同席し、間に入ることで、お互いが伝えたいことを伝えられるような場作りをします。保護者が感情的になってしまう場面などがあれば気持ちを代弁し、冷静に面談を進めるサポートなどができると良いでしょう。

3つめは、より良い地域社会を作ることです。地域社会の支援の仕組みを整える、新たな社会資源を創出するなど、より良い地域社会を作るためのアクションを検討しましょう。ある地域では、学校主催のケースカンファレンスへ子ども支援拠点のスタッフが参加して、学校の課題を地域の課題として支援の仕組みを整えるサポートを行った事例があります。また、子どもの居場所がなかった地域では、問題意識を持っていた町会長を始め、町会と連携することで、子どもの居場所を開設したところもあります。このように、ないものは生み出していき、より良い地域社会を作っていくことを検討することも、柔軟に活動できる民間の子ども支援拠点が実施できることの一つです。


出典:ソコスト

まとめ

今回は、コミュニティソーシャルワークの考え方から、子ども支援拠点でコミュニティソーシャルワークを行う際の視点について紹介しました。改めてポイントを以下にまとめます。

  • コミュニティソーシャルワークとは対象者への個別支援と、それを支える地域支援を行っていくこと
  • 様々な関係機関と連携し情報共有することで、複合的な問題にも対応でき、問題解決のスピードも上がる。
  • 自拠点だけで支援しようと思うのではなく、地域でつながり、支えあいながら子どもたちをサポートしていく体制を整える

※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません

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