行政・地域・支援者との連携を通して見えた、包括支援のあり方とはーNPO法人TEDIC 鈴木平氏ー

2020年12月12日(土)にLearning for All が主催する「地域でつくる子ども包括支援」についてのオンラインイベントが開催されました。
当日は寄付者、他NPO団体、行政、メディアなど、約200名が参加し、イベント中にも多くの質問が飛び交うなど大変な盛り上がりを見せました。

 本イベントでは、これからの「地域の子ども支援の在り方」について、様々な方面で活躍するゲストと共にパネルディスカッションを行いました。
今回は、ゲストとしてご参加いただいた、NPO法人TEDIC事務局長 鈴木 平氏のディスカッションをご紹介します。

プロフィール:鈴木 平
NPO法人TEDIC事務局長。2014年から東北地方での活動を始める。NPO法人TEDICには2017年より参画。ユースソーシャルワークみやぎ代表幹事、いしのまき市民公益活動連絡会議理事、石巻市市民公益活動推進委員、宮城県地域学校協同活動評価・検証委員など県や市の委員も兼任。

 

「震災がきて、救われた」この言葉によって、社会には苦しい思いをしている子どもがずっといたことに気づいた。

━━TEDICさんの活動内容について教えてください。

私たちTEDICの活動は、東日本大震災後、避難所の子どもたちの学習支援から始まりました。当時、創設者がその中で出会った子どもが、私たちの活動の原体験になっています。

その子は、以前から家庭でネグレクトや暴力を受けており、本人も引きこもりがちになっていました。震災によって、様々な人達が入ってきて、自分の声を拾ってくれ、自分のことを見つけてくれた。その子が発した言葉は、「震災がきて、救われた」でした。

震災によって課題が出てきたのではなく、この社会には苦しい思いをしている子どもがずっといたということを私たちが強く意識した出来事でした。

 現在では、学習支援拠点の運営、定期訪問支援、フリースクール運営、世帯全体の個別伴走支援、子ども食堂の運営など様々なことを行っています。一人ひとりのケースに対応していたら、自然と実施する支援も増えていきました。

NPO法人TEDIC作成

 2018年には宮城県の事業として、「石巻圏域子ども・若者総合相談センター」を設立しました。

0歳から39歳までの子ども・若者のあらゆる相談を受け止め、適切な機関につなぎ、、継続的な支援を行う仕組みを作りました。
相談したくても「たらい回し」にされてしまうような現状を解決し、地域として包括的な支援を行うことを目的としています。

関係する相手の立場を理解しながら、常に子ども目線で、子どもの人生に向き合うこと

━━行政との連携に苦労している団体も多いですが、実際に「子ども・若者総合相談センター」を通して官民連携をする中で見えてきた課題や工夫はありますか?

 4点あると思います。

 1点目は、立場を越えて議論をすることの難しさです。

行政・民間や、教育・福祉など、自分の置かれている立場だけで議論をすると折り合いがつかないことを日々の活動で感じています。基本的に他者と連携するときは、役割を明確に分担することが多いと思いますが、ケースごと、状況毎に都度合意形成をすることが大切だと思っています。。

相談者も支援者も人です。状況が変化する中で協働するのですから「これは行政の担当区分。行政が対応するべき」などの「べき論」になってしまわないようにすることをTEDICの現場では意識しています。

 2点目は、子どもを”課題”として捉え過ぎてしまう危険性です。

例えば、学校に行っていない子どもに対して「不登校」を解決したらそれで関わりが終わる形ではなく、人と人として関わり続ける必要がありますが、支援の現場では、ついその子を「不登校」という「課題」や「ケース」として捉えがちになってしまいます。つながる入り口は「課題」かもしれませんが、相手は自分たちと同じ、ひとりの人であり、その子の人生はその子のものであることを忘れないように意識しています。

 3点目は、大人の都合ではなく、子どものための連携を徹底することです。

より良い支援体制を作ることと、その子どもにとって最善の寄り添い・連携方法は必ずしも同じにはなりません。
子どもを主語にした連携を常に意識し、「この言動は当事者の子どもの前で使えるか?」という問いを、TEDICの中では問いかけ合うようにしています。

 4点目は、言葉の共通認識を都度確認することです。

「支援」「連携」「ソーシャルワーク」など、使っている言葉は同じでも意味合いが違うことは多くあります。文脈や背景も含めて、その言葉が何を指すかは意識して考える必要があると思います。

 ━━なるほど、支援が目的化しないように、子どもを真ん中に置いて、課題だけではなく子どもの人生のストーリーを捉えた上で関わることは非常に大切ですね。

 はい。私も事業の運営業務が増え、現場から離れがちになったのもあり、何か決定をする際には、現場のスタッフの意見を起点に判断するようにしています。現場の最前線のスタッフが最も子どものリアルを把握しているので、彼らを起点にする、自分の判断に現場目線のフィードバックを入れてもらうこと大事にしています。

 「助けて」と声をあげたら周囲が助けてくれる、その中で個人として繋がりを増やしてきた

━━TEDICさんは、官民連携だけでなく地域連携・団体連携も力を入れていますが、それらを行うようになった経緯について教えてください。

これまでも、たくさんの方に助けられてきましたが、コロナの影響で困難な状況に置かれた子どもが更に増え、組織自体にも色々なことが起き、私もスタッフも苦しくなりました。「自分たちだけでは出来ない。」けど、目の前には声を上げてくれる子どもたちがいる、思い切って、周囲の人に電話やSNSなどを通して「助けて欲しい」と声をあげたのがきっかけです。一番苦しい時期にたくさんの人にたすけていただきました。

また、石巻には子どもにとって、魅力的な大人は沢山いて、そして多くの人が「子どもを助けたい」と思ってくれていることに気付きました。

そこから、農家さんや漁師さんなど、支援職以外の人とも繋がりが生まれ、農業体験など新しい経験を子どもに提供できるようになりました。

 NPO法人TEDIC作成

  「自分たちは支援職だから」と背伸びをしたり、「自分たちだけでやらなければ」というバイアスを取り除くことで、多くの人の協力を得ることができ、見える世界が広がったと感じています。

 その他、2016年頃には地域内での支援者同士のネットワークも作りました。

子どもたちを支援をしている仲間がバーンアウト(離職)していく姿を目の当たりにし、「子どもたちを幸せにしたいと思い活動している人たちが不幸せになっている現状を変えたい」と思ったのがきっかけです。

 ━━地域連携・団体連携をやってみての難しさについて教えてください。

あくまで「子どものため」の連携であることが重要だと感じています。「連携実績を作ること」など、本来の目的以外のことが入るとかえって状況は難しくなります。

また、「団体」ではなく「個」として繋がることも重要だと思っています。「団体」や「組織」を背負っていると立場上、難しい事もあります。信頼のある「個」と「個」の関係を築くことで突破できたことは少なくないです。

 上記のように難しさはありますが、子どもを支える大人同士で、何かあった時に助けてくれる人がいることはとても重要です。

苦しい状態にある支援者の中には、団体内で相談しづらい出来事で悩んでいる人もいると思います。組織の外に第3、第4の環境をを用意することは結果的にバーンアウトを減らすことにも繋がると信じています。

 ━━地方は都内に比べ、人員的なリソースが限られる面もあると思いますが、その中で具体的にはどのように繋がりを増やしていったのですか?

人員的なリソースは豊富だと思っています。私たちが勝手に「リソースがない」と思い込んでいたり、お互いを知らなかったり、繋ぐ人がいなかったり。そういうことが前提にあるだけだと思います。

 私の場合で言うと、自分自身がその地域でたくさん遊び、周囲に活動内容を話すことで結果的につながりが増えていきました。言い換えると、単純に友達が増えました。地域の人と一緒に農作業をする、自分が地域のアクティビティに参加して仲良くなるのが第一歩だと考えています。遊びをしているときは、皆笑っていますよね?社会や事業の話を通して仲良くなる時もありますが、楽しい時間を通して仲良くなっていくことも大事だと思っています。そして、地域の人に子どもの話やミッションについて話をすると、他の人を紹介してくれたり、新しい取り組みを提案してくれたりと自然と繋がりが生まれてきます。

 また、団体内部でつながりを持ち寄ることも大切にしています。「個と個」での繋がりの重要さについて話をすると、「実は飲み屋でこんな人と仲良くなった」「妻の実家で田んぼが余っている」など意見が出てくることがあるんです。団体内で既に持っているものを引き出すエンパワメントもできると理想ですね。 

まとめ

様々な関係者と連携しているTEDICさんでは、

・関係者の立場や価値観を理解した上で、対象の子どもの課題だけではなく、背景まで理解をして支援を行う
・苦しい時には声をあげ、また自分自身が「個人」として様々な遊びに参加し、地域の人との関わりを作っていく

ことで、官民連携・地域連携・団体連携を強化されていました。

 常に子ども目線でいることを忘れずに、子どもにとっても支援者にとっても幸せになれる支援を模索されているTEDICさんの取り組みは、ぜひ真似していきたいですね。

鈴木さん、ありがとうございました!

 

 

 

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