【連載第3回】LGBTの子どもと生きる ーLGBTについて正しく知り、教えるためにできることー

この連載では、LGBTの子どもが学習支援・居場所づくり・子ども食堂などの支援現場にいることを念頭に置いた支援現場の作り方について考えていきます。第1回ではLGBTの子どもはどのような悩みを抱えているか、第2回ではLGBTの子どもはどのような環境が過ごしやすいかをReBitさんに伺いました。今回は、LGBTについて子どもや大人が理解を深めるためにできること、LGBTに関する相談先となりうる全国のLGBT関連団体について、引き続きReBitさんに伺います。

第1回、第2回はこちら

【連載第1回】LGBTの子どもと生きる ーLGBTの子どもが抱える悩みとは?ー
【連載第1回】LGBTの子どもと生きる ーLGBTの子どもが抱える悩みとは?ー

【連載第2回】LGBTの子どもと生きる ーLGBTの子どもにとってどんな環境が過ごしやすいか?ー
【連載第2回】LGBTの子どもと生きる ーLGBTの子どもにとってどんな環境が過ごしやすいか?ー

プロフィール:小川 奈津己
認定NPO法人ReBit教育事業部マネージャー。大学在学中よりReBitで活動。卒業後は私立中高一貫校にて勤務した後、2018年ReBitへ転職。現在は教育事業部マネージャーとして授業や研修、教材制作などを担当している。

 

LGBTについて正しく知るためにできること

子ども支援の現場で、子どもにLGBTについて教えるべき場面もあると思います。そのような場面で役に立つ教材にはどのようなものがありますか。

年齢によって様々ですが、幼児や小学生向けに使いやすいのは絵本かと思います。

例えば、「タンタンタンゴはパパふたり」という本があります。オス同士のペンギンのカップルが、二人で卵の世話をして、生まれた子どもを育てるという、実話をもとにした作品です。他にもLGBTを扱ったものや多様な家族の形を扱った本はたくさんあり、絵本だけでも20冊以上はあると思います。LGBTに関する本が子ども支援の拠点にあるだけでも、子どもたちが正しい知識を得るきっかけになると思います。

小学校高学年~中高生であれば教材の選択肢は広がります。子ども向けの新書や入門書、自叙伝のような本もあり種類は豊富なので色々と選ぶことはできると思います。

ReBitでも、「Ally Teacher’s Tool Kit (アライ先生キット)」という教材を小学校高学年向けと中学生向けに出しています。他にも映像教材を公開しているところはたくさんあり、YouTubeやDVDで見ることができます。

また、都道府県や市区町村、それに教育委員会でも、LGBTに関する資料や教材を作成していることがあります。

ReBitでは、このような教材の情報を詳しくまとめたサイト「Ally Teacher’s School」を運営しています。ぜひご活用ください。「子どもに教える」で検索すれば、子ども向けの教材がたくさん表示されますし、対象年齢層で検索すればぴったりの教材を見つけることができると思います。


画像引用:Ally Teacher’s School認定NPO法人ReBit

ー数ある教材の中で、特にお勧めのものはありますか。

「ふつう」ってなんだ? LGBTについて知る本」という本は学校図書館や地域の図書館に置いてもらえるように作った本ですが、フルカラーの漫画やイラストが豊富で読みやすい作りになっています。

ーありがとうございます。例えば支援現場のスタッフのような大人向けの教材もあるのでしょうか。

先ほどご紹介した「Ally Teacher’s Tool Kit (アライ先生キット)」の「教職員向け」があります。

また、教職員や保護者など、子どもに関わる大人向けの本としては、「LGBTってなんだろう?自認する性・からだの性・好きになる性・表現する性」や「先生と親のためのLGBTガイド: もしあなたがカミングアウトされたなら」などが参考になると思います。

 

LGBTの子ども対応を行っている全国の団体

ー教材を使ってどれだけ勉強しても当事者でなければ共感しきれない部分や理解しきれない部分があるのではないかと思います。そのような時にLGBTの子どもに関わる活動を行う団体が近くにあると心強いですが、ReBitさんの他にLGBTの子どもに関わる活動を行う団体をいくつかご紹介いただけないでしょうか。

遠藤まめたさんが代表を務めるにじーずさんは、LGBTに関わる団体の中でも子どもに対応している団体として有名です。札幌、埼玉、東京、京都、神戸、岡山の全国6拠点で活動していて、毎月交流会をされています。10代から23歳までのLGBTの人、LGBTかもしれない人を対象にして活動しています。

さらに年齢の低い子ども向けには、同団体のにじっこという活動もあります。15歳までの子どもと、その保護者を対象した交流会で、子どもは子ども同士で伸び伸びと遊べますし、保護者は子どもとは別の場所で相談ができるようになっています。保護者の方の相談先としてもご活用いただけると思います。

また、大阪ならQWRC(くぉーく)さん、愛媛なら虹力(にじから)スペースさんなど地域ごとに拠点を持って活動されている団体がいらっしゃいます。各地域における行政の電話相談先はこちらでご紹介しています。

LGBTの大人向けの団体は多くありますが、LGBTの子どもやその保護者の悩みに対応できる団体はまだまだ全国的に少なく課題だと感じています。

 

ReBit小川さんが今後目指す社会とは

ーここまで、LGBTの子どもが抱える悩みやその子どもの周りの大人ができることについて、色々とお伺いしました。最後に、小川さんは将来的にどのような社会を作りたいか、お聞かせいただけますか。

LGBTを含めた全ての子どもがありのままで大人になれる社会を引き続き目指したいです。「LGBTだから」「障害があるから」「日本以外の国にルーツがあるから」といった、人との違いによって、自分らしく生きることや働くこと・学ぶことをあきらめない社会にしたいですね。

さらには、LGBTという言葉をわざわざ使う必要もないくらい、性の多様性が当たり前になることが最終形態だと思いますが、それまではLGBTという言葉で可視化してマイノリティがいないものにされないようにすることが大事だと思っています。

 

まとめ

今回は、ReBitの小川さんにLGBTについて理解を深めるための教材や支援団体について伺いました。ポイントを下記にまとめます。

  • 子どもにLGBTについて理解を深めてもらうには、絵本や動画などの教材を活用するとよい。
  • 子ども向け・大人向けの教材を探したい時は「Ally Teacher’s School」で検索できる。
  • 実際にLGBTの子どもに関わる活動を行う団体や行政の相談窓口もあるので、必要に応じて相談したり、当事者に紹介したりしよう。

小川さん、貴重なお話をありがとうございました!

次回以降は、LGBTに関するサイト「やる気あり美」を運営されている太田尚樹さんにお話を伺います。
第4回はこちら。

【連載第4回】LGBTの子どもと生きる ーゲイである僕に付きまとった不安ー
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※本記事の内容は個人の見解であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません

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