【連載第4回】LGBTの子どもと生きる ーゲイである僕に付きまとった不安ー

この連載では、LGBTの子どもが現場にいることを念頭においた支援現場の作り方について考えていきます。第1回~第3回ではLGBTの子どもに関わる活動を行っているReBitさんお話を伺いました。第4回と第5回では、LGBTに関するサイトやる気あり美」を運営されており、ご自身もゲイである太田尚樹さんにお話を伺います。

第4回の今回は、当事者の目線から、LGBTの子どもが抱える悩みやLGBTの話題の扱い方についてお話いただきました。

プロフィール:太田 尚樹
「やる気あり美-世の中とLGBTの グッとくる接点をもっと-」編集長。自身がゲイであることを公表しつつ、LGBTをテーマにエンタメコンテンツをつくる活動をしている。

 

太田さんの活動内容

ー太田さんはどのような活動をされていますか。

やる気あり美」というウェブサイトでLGBTに関連するコンテンツを発信しています。楽しく、時には感動的に、ネガティブではなくポジティブな気持ちでLGBTについて何か気づけるコンテンツを作っています。アニメ・記事・音楽など、コンテンツの種類は様々です。

ーご覧になった方からはどのような声がありますか。

「面白い」、「楽しい」と言っていただけることが多いです。とはいえ、単純な問題ではないので「楽しい」だけで終わらないようにするにはどうすればよいかなと考えることはあります。

 

LGBTの子どもが抱える悩み

ーLGBTの子どもはどのような悩みを抱えていると思いますか。当事者として、また、ウェブサイト運営にあたって様々なLGBTの方と接している中で思うことがあれば教えてください。

一口にLGBTといってもひとくくりにはできず、人それぞれに悩みがあると思います。まずは、「ひとくくりにして理解しようとしない」ことが大事だと思います。その子の属性に応じて対応するのではなく、その子の言葉を傾聴して、その子個人が何を求めているのかを聞くことがまずは重要だと思います。

とはいえ、それぞれのセクシュアリティよって悩みやすいポイントはあります。トランスジェンダーの子は見た目に関わる問題で悩むことが多いです。例えば、生まれた時は女性とされたけれど、性自認が男性である子が髪を短くした際、周りの子から「あの子ってオカマなの?」と言われはじめた、というケースがあります。自分はスカートを履くのがすごく気持ち悪いけれど、その姿を他の人は気持ち悪がっていないかなど、「人からどう見られているのか」について悩む機会は、より多いと思います。

また、トランスジェンダーでありながら、レズビアン、ゲイ、バイセクシャルである、という方もいます。セクシュアリティのあり方は千差万別ですが、そういった自分らしさを表現すると奇異な目でみられることはまだまだ多いです。人の目線が気になる、という子は多いです。

 

このように、総じて「人と違うことが不安で、それを自分がどう咀嚼すればいいかわからない」という悩みは多いと思います。

子どもの時はみんなと一緒・同じであることが嬉しい子が多いと思います。僕自身、みんなと違うことによって「自分って変なのかな」と感じてしまうこともありました。自分とみんなのセクシュアリティが違うことをどう扱ったらいいかわからないということは悩みの種として大きいです。

自分がゲイだと気が付いたのは高校1年生のときですが、自分のセクシュアリティをどう理解すればいいのかわかりませんでした。色々調べましたが当時はLGBTという言葉すら一般的ではなく、テレビに映るいわゆる「おねえタレント」の皆さんくらいしか身近な存在がいませんでした。彼ら彼女らをみて、「あ、自分はこの人と一緒ということか。」と感じていました。テレビに映るその人たちを僕自身も笑って見ていましたが、同時に「あ、自分は『笑われる側』の人間なんだ。」と思った記憶があります。

普通になりたいし、普通の幸せを手に入れたいと思いましたが、自分がゲイであることは「普通ではないこと」だと感じたため、その分特別な幸せを手に入れようと思いました。結果、「いい大学に入らなきゃ」、「他の人とは違う強みを持たなきゃ」と感じていました。

 

ー自分と他の人が違うことに対して葛藤を抱えられていたのですね。そのような悩みを抱える子どもに対して、周りの大人はどう関わるべきでしょうか。

まずは基本的な知識を身につけてほしいです。LGBTに関する本はたくさん出ているので、1冊でもいいのでインプットすることから始めていただきたいです。

そしてもしカミングアウト(自身が性的マイノリティであることを他人に伝えること)してくれた子どもでいれば、本人と丁寧に対話を続けてほしいと思います。なぜ自分に言おうと思ってくれたのか、自分ができるサポートはあるか等、とにかく傾聴することを大切にしてほしいです。

そして本人が希望する場合は、ジェンダークリニックなどの外部機関に頼ることも検討していただきたいと思います。

 

子どもがいる場でLGBTの話題はどう扱うべき?

ー子ども支援の現場では、LGBTの子どもも、そうではない子どもも一緒にいることが多いと思います。色々な子どもがいる現場で、LGBTの話題はどう扱うのがよいでしょうか。

大人であれ子どもであれ、LGBTに関するイシューをポジティブに取り上げるのが大事だと思います。それは当事者にとっても心強いと思います。

もし、子どもたちのいる場でLGBTの話題を取り上げた時に一部の子どもで「えっ…」というような反応があったら、「大切な話なんだよ」と伝えてもよいですし、自然なこととしてポジティブに取り上げられるといいのかなと思います。また、セクシュアリティに関する話を「子どもにするにはまだ早い」とする大人もいるのですが、男であることや女であることが性的な話ではないように、セクシュアリティの話もベッドの上の話ではなくて人生の話です。ですから、臆さずに、子どもたちに話してほしいと思います。

 

まとめ

  • 一口にLGBTといってもひとくくりにはできず、人それぞれに悩みがあり、ひとくくりにして理解しようとしないことが大事。
  • LGBTの子どもの中には、自分と人との違いに大きな不安をかかえていて、それを自分がどう咀嚼すればいいかわからないという悩みを抱えている子どもは多いと考えられる。
  • 子どもがいる場でも、LGBTの話題を避けるのではなく、ポジティブに取り上げることが大切。

次回は、子どもがカミングアウトをしてくれた時の対応やLGBTについて理解を深めるためのツールについてお話を伺います。

第5回はこちら。

【連載第5回】LGBTの子どもと生きる ーみんながありのままでいられる社会を目指してー
【連載第5回】LGBTの子どもと生きる ーみんながありのままでいられる社会を目指してー

前回までの記事はこちら。認定NPO法人 ReBitにお話しをお伺いしています。

【連載第1回】LGBTの子どもと生きる ーLGBTの子どもが抱える悩みとは?ー
【連載第1回】LGBTの子どもと生きる ーLGBTの子どもが抱える悩みとは?ー

【連載第2回】LGBTの子どもと生きる ーLGBTの子どもにとってどんな環境が過ごしやすいか?ー
【連載第2回】LGBTの子どもと生きる ーLGBTの子どもにとってどんな環境が過ごしやすいか?ー

【連載第3回】LGBTの子どもと生きる ーLGBTについて正しく知り、教えるためにできることー
【連載第3回】LGBTの子どもと生きる ーLGBTについて正しく知り、教えるためにできることー

 

※本記事の内容は個人の見解であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません

この記事は役に立ちましたか?