2023年2月14日に、子どもに向き合う全国各地の支援者が学び/知見/意見をシェアするオンラインイベント「こども支援ナビMeetup」の第13回が開催されました。
本イベントでは、認定NPO法人Learning for All (以下、LFA)の「一人に寄り添う」事業として、主に居場所拠点の運営や、地域のネットワークづくりなどをご担当されている、子ども支援事業部の塩成さんと入澤さんにご登壇いただき、「地域の人々と共に作り上げる、子どもを支える地域づくりの事例」についてお話しいただきました。
イベントレポート第2回では、戸田市の居場所拠点Aでの具体的な活動内容や戸田市全体で行っている「子どもの居場所づくり交流会」について紹介していきます。
イベントレポート第1回はこちら
※登壇者のプロフィール・記事内容はイベント実施時(2023年2月14日時点)の内容です。
プロフィール:塩成 透
LFA子ども支援事業部。大学院では住民自治について研究を行い、前職では住民参加型の中心市街地の活性化、公共施設での市民活動支援、総合計画策定を行う。2021年にLFAへ入職。居場所拠点の拠点長や地域協働型子ども包括支援モデル構築に向けた地域団体のネットワークづくりを行う。
プロフィール:入澤 充
LFA子ども支援事業部。大学生当時、認定非営利活動法人Teach For Japanの1事業だったLearning for Allに参画し、非常勤職員としてLearning for Allのプログラム開発に従事。 大学卒業後、プレイワーカーとして子どもの遊び場の管理運営に携わった後、トロント大学オンタリオ教育研究所に2年間留学。留学先では社会正義教育について研究する。LFAの活動を通じて、不平等を再生産するこの社会の構造を少しでも変えていきたい。
居場所拠点Aでの地域住民との関わり事例
ここからは、居場所拠点Aで地域の方と子どもたちが実際に関わったケースについてご紹介します。
①心霊スポットツアー
1つ目は心霊スポットツアーです。
これは「地域の方と子どもたちが関われる夏のイベントがしたい」という思いから生まれました。当初はいつもの拠点で子どもたちとホラー映画を見る計画でしたが、偶然拠点にやってきた地域の方に近くの心霊スポット情報を教えてもらい、心霊スポット巡りを行うことになりました。また、この時来ていたお寺の住職さんから「寺にある閻魔様を観に来ない?」と声をかけていただき、心霊スポットを巡ったあとにお寺で閻魔様を見るツアーが決定しました。
住職さんに話を聞いたところ、以前は子ども向けにお寺に宿泊するイベントを開催していたそうです。しかしイベントはコロナをきっかけに中止しており、住職さんとしてはこの機会にお寺を地域に開くことを再開したいという願いがありました。この点で住職さんの考えと子どもたちの希望が一致したため、子ども・住職・LFA職員で一緒に企画を進めていきました。
このケースは、地域づくりで実現したい3つのことのうち、「支える」「繋ぐ」の2つを実現できたと考えています。
- 支える…近所のお寺が子どもの居場所になった
- 繋ぐ…地域に根付いている住職と子どもがつながるきっかけになった
ちなみに、この活動を通して、普段お寺でヨガを教えている講師の方が拠点に来て、子どもたちにヨガ指導をしてくれるという繋がりもできました。
②干し柿づくり
2つ目のケースは、干し柿づくりです。
これを行ったのはちょうど秋のイベントを開催したいなと考えていた時期でした。拠点に行くまでの道で柿の木のある民家を探していたら、いつも施設の鍵を借りる住宅に大きな柿の木を見つけ、柿の収穫を手伝いたいと話をしてみました。
画像:認定NPO法人Learning for All
この方は普段子ども支援について全く関心がない方でしたが、柿の収穫に苦労しているという住民の方の困りごとと秋のイベントをしたい拠点のニーズが合致したため、子どもたち参加型の柿収穫イベントを実施する流れになりました。収穫した生の柿を食べるだけでなく、干し柿づくりも行わせていただき、干し柿の様子を定期的に見に行くという繋がりもできました。
このケースで実現できたのは、「支える」「繋ぐ」の2つです。
- 支える…個人のお宅が子どもの居場所に。今回は住民の方の課題を解決したことで子どもたちが支える側に
- 繋ぐ…一定期間ではあるが子どもと住民の方が継続的に繋がる機会に
③おすそ分け会
3つ目のケースは、おすそ分け会です。
おすそ分け会は、子どもだけでなく地域の方のためのイベントとしても開催しています。おすそ分けする食材を集めて拠点に並べ、子どもたちが地域の方とコミュニケーションを取りながら食材を渡していきます。
そして毎月1回おすそ分け会を実施していたところ、どこからともなく地域内で「おすそ分け返し」ブームが始まりました。おすそ分けの内容は物だけでなく、配布物を保管する場所の提供やイベント運営の手伝いなど多岐にわたります。おすそ分け会を開催したことで、地域の方と子どもたちの繋がりができ、居場所の担い手が増加する結果となりました。
地域づくりで重要なこと
ここで、ここまでお話してきた居場所拠点Aでの地域づくりの取り組みをまとめます。
画像:認定NPO法人Learning for All
地域づくりをして見えてきたのは、地域の方と自然に・日常的に出会うきっかけづくりが重要だということです。
この点については、拠点場所が地域の方も日常的に利用する町内会館だったことが大きなメリットとなりました。しかし、たとえ町内会館ではなくても、例えばコインランドリーやカフェなど、地域の方が日常的に使う場所づくりをすれば、自然とコミュニケーションを取る頻度は増やせると思っています。
また今後挑戦してみたいことは、この3つです。
- 地域の課題を子どもたちのアクティビティに
- 子どもに関わる人を増やすだけでなく、子どもへの関わり方について考えるきっかけづくり
- 地域活動に子どもたちだけで関わるしかけづくり
地域の課題解決に子どもたちが関わることで、地域の方の子どもに対する見方が変わったり、拠点以外での子どもの居場所が複数できたりするといいなと思っています。
戸田市全域での取り組み
この居場所拠点Aでの取り組みを戸田市全体に広げていきたい!という想いから、LFAでは市戸田市全域に対してもアクションを行っています。それが「子どもの居場所づくり交流会」です。
画像:認定NPO法人Learning for All
子どもの居場所づくり交流会は、子どもの居場所づくりに関心がある方が集まり、新たな活動を生み出すきっかけとなることを目的として、戸田市・社会福祉協議会・LFAで運営しています。
実施回数は年3回。参加した方が熱い想いを話したり、やってみたい活動や市の課題について話したりする場となっています。また交流会と同時に個別相談会や居場所づくりをしたい方の立ち上げ支援も行い、交流会で生まれた活動の芽を伸ばせるよう支援しています。
交流会の成果は、以下の4つです。
画像:認定NPO法人Learning for All
協働イベントでは、プレーパークやおすそ分け会でのキッチンカー(子ども食堂)出店などを行いました。イベントを開いたことで子どもたちの新たな居場所ができたり、学校・地域の方との繋がりができたりといった成果がありました。特にキッチンカー形式の子ども食堂は、拠点や学校と困難を抱える世帯との繋がりの場となったほか、子どもたちがLFA以外で運営側にまわって活動する機会にもなっています。
画像:認定NPO法人Learning for All
戸田市での居場所づくり交流会を実施して見えたことは、子どもたちのために活動したい人や企業は案外いるということです。しかし、意外と伴走してくれる人がいないため、立ち上げや活動の支援と丁寧なマッチングが重要になってきます。
また活動したい気持ちがある人のなかには、居場所づくりに対する固定観念から、高いハードルを感じている場合もあります。そのため、活動のハードルをなるべく下げることが重要だと気づきました。
画像:認定NPO法人Learning for All
今後は、事務局だけでなく団体側から発信できるネットワーク体制の構築や、複数団体だからこそできるアクションの実施などを進めていきたいと考えています。前回の交流会では、活動資金調達のための基金づくりなど、より具体的な話題も上がり、白熱した議論となりました。
まとめ
今回は、LFA職員の塩成さんに戸田市内にある居場所拠点Aでの取り組みで見えたことや戸田市全体で行っている交流会の様子について伺いました。ポイントを以下にまとめます。
- 居場所拠点Aでの地域づくりを通して、地域の方と自然に・日常的に出会うきっかけづくりが重要だとわかった。
- 年3回、戸田市・社会福祉協議会・LFAで、子どもの居場所づくりに関心がある方が集まり、新たな活動を生み出すきっかけをつくる「子どもの居場所づくり交流会」を実施している。
- 居場所づくり交流会を通して、活動したい人・企業は案外いるが伴走者が少ないこと、居場所づくりのハードルが高いと感じている人が多いことがわかった。
第3回では、LFA職員の入澤さんを交えた質疑応答の様子を紹介していきます。
※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません
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