【連載第3回】対話を重ねて、子どもを共に支える地域をつくる~認定NPO法人Learning for All の実践事例~(こども支援ナビ Meetup vol.13)

2023年2月14日に、子どもに向き合う全国各地の支援者が学び/知見/意見をシェアするオンラインイベント「こども支援ナビMeetup」の第13回が開催されました。

本イベントでは、認定NPO法人Learning for All (以下、LFA)の「一人に寄り添う」事業として、主に居場所拠点の運営や、地域のネットワークづくりなどをご担当されている、子ども支援事業部の塩成さんと入澤さんにご登壇いただき、「地域の人々と共に作り上げる、子どもを支える地域づくりの事例」についてお話しいただきました。

イベントレポート第3回では、LFA職員の入澤さんを交えた質疑応答の様子を紹介していきます。

第1回・第2回はこちら

【連載第1回】対話を重ねて、子どもを共に支える地域をつくる~認定NPO法人Learning for All の実践事例~(こども支援ナビ Meetup vol.13)
【連載第1回】対話を重ねて、子どもを共に支える地域をつくる~認定NPO法人Learning for All の実践事例~(こども支援ナビ Meetup vol.13)
【連載第2回】対話を重ねて、子どもを共に支える地域をつくる~認定NPO法人Learning for All の実践事例~(こども支援ナビ Meetup vol.13)
【連載第2回】対話を重ねて、子どもを共に支える地域をつくる~認定NPO法人Learning for All の実践事例~(こども支援ナビ Meetup vol.13)

※登壇者のプロフィール・記事内容はイベント実施時(2023年2月14日時点)の内容です。

プロフィール: 塩成 透
LFA子ども支援事業部。大学院では住民自治について研究を行い、前職では住民参加型の中心市街地の活性化、公共施設での市民活動支援、総合計画策定を行う。2021年にLFAへ入職。居場所拠点の拠点長や地域協働型子ども包括支援モデル構築に向けた地域団体のネットワークづくりを行う。

プロフィール:入澤 充 
LFA子ども支援事業部。大学生当時、認定非営利活動法人Teach For Japanの1事業だったLearning for Allに参画し、非常勤職員としてLearning for Allのプログラム開発に従事。 大学卒業後、プレイワーカーとして子どもの遊び場の管理運営に携わった後、トロント大学オンタリオ教育研究所に2年間留学。留学先では社会正義教育について研究する。LFAの活動を通じて、不平等を再生産するこの社会の構造を少しでも変えていきたい。

地域のキーマンと繋がり、地域の場所をお借りする

ー参加者)地域施設を会場として使っていることが地域に根差した子ども支援や地域づくりに繋がっていると思いました。地域施設を借りられるようになったきっかけは何ですか?

塩成:地域の会長さんが以前スクールソーシャルワーカーをやられていたこともあり、もともと地域のことについて熱心な方でした。その方に「地域の施設を借りて居場所支援をしたい」とご相談したところ、いろいろな地域の方を説得してくださって、場所をお借りすることができました。また、会長さんが地域のハブとなって様々な情報を持っているので、会長さん繋がりで地域の方を紹介していただいたり、親身にサポートしていただいたりして大変助かっています。

入澤:戸田市での活動は子どもたちの居場所をつくることを目的で始めました。しかしそのとき、「やはりこうした活動は地域の理解がないと継続するのが難しい」ということになり、こちらから説明会を開いたり、積極的に地域の運動会や夏祭りといったイベントに参加したりして、交流する機会を設けることを大切にしていました。そういった中で地域の方々と仲良くなり、会長さんと知り合えたという経緯があります。

地域づくりをするなかで会長さんは本当にキーマンで、もともと「子どものために何かしたい」という熱い想いをお持ちでした。その熱意があったおかげで、私たちが地域施設をお借りできるようになったと思っています。

専門家ではなく地域の人がつくる居場所だからできること

ー参加者)NPOの方が中心で動く居場所は素晴らしいなと思いました。ただ、素人がやる場合は子ども食堂が精一杯(人材・時間など)という現実があります。このような広がりを素人がどのようにできるのか方法を教えていただけますでしょうか?

塩成:これはおっしゃる通りで、戸田市で実施している交流会の中でも「活動だけで精一杯」「補助金の申請だけで精一杯」という方にたくさんお会いします。

地域での広がりという意味では、地域の方々が自然に繋がるようなきっかけを整備することで、いろいろな方が関わる余地ができてくるのではないかなと思います。そういった仕掛けを地域の様々なところに散りばめてみる、ということが地域の広がりに繋がっていく気がします。

また市全体での活動という話になると、なかなか余力がないと難しいかもしれません。その場合は、近隣で活動している団体さんと話してみて、こういった場を設けたいという賛同者を増やして一緒に企画してみるのも一つの手だと思います。

入澤:私は、子ども支援をする上で、ある種の素人っぽさというのは重要だと思っています

子どもは様々な困難を抱えていて、抱えている困難のレベルも子どもによってバラバラです。私たちは子どもが結構重度の困難を抱えてから出会うケースが多いのですが、できるならそれ以前の少し困難が見えてきた状態の子どもに出会えるのが一番いい。そして、そうした子どもに出会えるのは、子どもがふらっと行ける地域の場所や機会があるからこそ、という側面も大きいと思います。

こうした子どもが気軽に行ける場所や機会は、専門家が作り上げるのはなかなか難しいです。地域の人たちや子どもたちでわいわいガヤガヤやっているところに来てくれるものなんですよね。私は地域の人がそういう場所を作ってくれることにこそ意味があると思っています

交流会でお話している中でも、「子ども食堂やらなきゃいけない」「助成金申請しなきゃいけない」など、皆さん自分でハードルを上げているなと思うことがあります。でも、始めるきっかけは「試しにイベント1回やってみる」でも全然いいんですよ。そこから「面白いから続けてみよう!」とやってみるのもいいと思っているので、ぜひ皆さんハードルを下げて、まずはやってみてほしいですね。

他団体との協働のコツ

ー参加者)地域の団体が複数ある中で一つの団体が事務局機能を担うと、他の団体さんから「上から偉そうに」など見られ方を気にすることはないですか?そう思われないように気をつけていることがあれば教えてください。

塩成:たしかにそういう風に思われていても全然おかしくないですね。でも、いろいろな団体さんとかなり対話を重ねて、協働イベントなども一緒に運営しているので、そういう意味ではすごく理解をしてくれていると思っています。例えば、他の団体さんから「うちでは難しいけど、LFAさんならできそうだから任せた!」と言ってもらえることもありますね。そういった形で関係性を少しずつ作っています。

入澤:あとは、事務局機能を私たちだけで完璧に担うということをやっていないのもあると思いますね。交流会でも、市と社協さんと一緒に役割分担して、それぞれの得意を活かしながらみんなで一緒にやっていくことを大切にしています。

地域に開いたことで子どもが地域に対して積極的になった

ー参加者)地域の方との繋がりを通じて、子どもたち自身に起きた変化など感じることはありましたか?

塩成:子どもたちを見ていて、「人と接するハードルが下がった」というのは何となく感じています

以前は、拠点内で仲良くなった人とは深い関係性を築けても、地域の方と会った時は緊張してあまり話せない子どもがいました。でも、子どもと関係性ができている私が地域の方と楽しそうに話しているのを見ると、子どもが「この人なら話せそう」と思ってどんどんコミュニケーションを取っていくようになりました。そしてそれが重なっていって、いろいろな人に子どもから声をかけることも増えたと思います。

入澤:あとこれは私の感じ方の変化ですが、子どもたちを安心して見られるようになったなと思っています。

LFAだけで子どもを見ていたときは、子どもに対して「これからどうやって接していこうか」と悩むことも多かったですが、地域の方と子どもたちが関わる機会・関わる人数が増えれば増えるほど、「この子をこの地域が支えているんだ」という感覚が得られるようになりました子どももきっとこういう感覚を得ているんじゃないかなと思います。

塩成:拠点内ではやんちゃな様子を見せる子どもも、地域の方に出会うとすごく礼儀正しくなったりするんですよね。地域との関わりを通して子どものいろいろな場での姿が見られるので、その後の子どもとの関わり方の参考にもなります。

地域全体で「継続」できる居場所をつくる

ー参加者)小学校のPTA会長を経験したのをきっかけにフードパントリーや居場所づくりの活動をしています。今の課題は、拡大や継続よりも活動の継続です。継続していくためのヒントをお伺いしたいです。

塩成:自分たちがやりすぎないことがすごく大事かなと思います人員や資金などが限られている中で、自分たちで全部やるのはなかなか難しいです。

居場所の運営は必ずしも私一人がやらなくちゃいけないとは思っていないので、最初は理解を得たり仲間を増やしたりというところに骨が折れると思うんですけど、「一緒にたのしいことやろう!」や「困ってるからちょっと助けて〜」と協力してくれる仲間をどんどん増やして地域みんなで居場所を作っていくようにしていけたらいいなと思っています。

入澤:塩成さんを見ていていつも思うのは、楽しくやるのが大事なんだなということです。

一つひとつ小さなアクションを積み重ねていって、それを地域の方と喜びを分かち合うような、そういうところに継続のヒントがあるのかなと思っています。

それと同時に、もうひとつ上の視点で見たときに重要なのは「その地域で」子どもの居場所が継続していることだと思うんですよね。一つの団体が継続していくのが重要ではなく、地域で子どもが利用できる居場所が継続し続けていることを「継続」と捉えるのも、重要な視点かなと思います。

そういう意味では、多くの人に門を開いて子ども支援を知ってもらう」「気軽に参加できる機会を設けてアクションする人を増やしていく」という取り組みに、真の意味で継続性があるのではないかなと思っています。

登壇者からのご挨拶

入澤:今日塩成から居場所づくり・地域づくりについてお話しさせていただきましたが、その中で特別なことというのは特になかったのではないかなと思います。

本当に一つひとつの縁を大切にして、出会いを力に変えて、一歩一歩面白いと思うことをやっていくといった感じで、地域を豊かにすることはそんなにハードルが高くないものだと思っています。ぜひ今日の話を聞いて、何かできそうだなと思ったら、積極的に挑戦してみてほしいです。

塩成:私たちも、実践としてもまだまだ途上ですし、これから地域をつくっていくにはさらに長い時間が必要だと思っています。引き続き私たちも試行錯誤して、皆さんに何かお伝えできることがあればお伝えしたいですし、皆さんの実践があればぜひお聞きしたいです。地域づくりはみんなで一緒に学んでいけるテーマだと思っているので、引き続きどうぞよろしくお願いします。

まとめ

今回は、LFA職員の塩成さんと入澤さんに地域と一緒に居場所づくりをするポイントなどについて伺いました。ポイントを以下にまとめます。

  • 子どもの居場所を地域に開いたことで、子どもたちが地域の方と積極的にコミュニケーションを取るようになり、支援者側としても「地域が子どもを支えてくれる安心感」を感じることができた。
  • 自分で子ども支援のハードルを上げすぎず、試しにやってみる精神が大事。自分だけで完結せず、地域全体で居場所をつくる・継続する意識を持つ。

※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません

この記事は役に立ちましたか?