保護者とのコミュニケーションを円滑にすることは、子どもへのサポートをスムーズに行う上でとても重要なポイントです。
そこでこの記事では、子ども支援拠点における保護者サポートをする際のマインドセットや役立つスキルをまとめて解説しています。保護者との関わり方に悩んでいる方や保護者支援についてもっと深く知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
なぜ保護者へのサポートが必要か
ここでは、子ども支援拠点における保護者支援を、「子どもと保護者の関係良化、保護者をエンパワーメントすることを目指し、保護者に対して、専門性を生かして相談や助言を行うこと」としてお話をしていきます。
子ども支援団体において保護者へのサポートが必要な理由は、子どもが子どもとして安心安全に育つ環境を整えるには、やはり支援拠点の中だけではなく、家庭での環境も大切であるからです。
現代は核家族化や地域のつながりの希薄化などが進んでおり、昔に比べて保護者だけで子育てをする家庭が増えてきています。さらに、子ども支援団体が関わる家庭はひとり親世帯も多く、経済的困窮や物理的・精神的孤立といった困難を抱えているケースも少なくありません。
このような環境で子どもが安心安全に育つためには、保護者自身が安心安全を感じながら子どもに向き合えるように第三者が支援できると良いでしょう。
保護者と関わる上での基本のマインド・スキル
次に、保護者支援をする際に重要なマインドセットと保護者と関わるスキルについて解説していきます。
保護者支援をする際に重要なマインドセット
マインドセットの要点は、この3つです。
- 信頼関係を大切にする
- 指導するのではなく、エンパワーメントする
- 保護者だけが子育てをするのではなく、一緒に子育てをする
保護者支援を行う上で必要不可欠なのは、保護者との信頼関係です。
信頼関係が築けていない状態だと、たとえ支援者がどんなにいいアドバイスをしても保護者に響きません。信頼関係を築くためには、常に誠意を持って丁寧に接すること、保護者自身の置かれている状況や背景、想いを考えることが重要です。
また、保護者支援では「エンパワーメント」、つまり保護者自身のできる力を引き出し、自己肯定感を高めることを基本とできると良いでしょう。
支援者は保護者の現状だけを見るのではなく、未来を見つめ、保護者の力を信じることが大切です。
保護者に対して何かアクションを提案する際には、「やってください」ではなく「一緒にやっていきましょう」と提案することを心がけ、保護者と支援者で一緒に子育てをする意識を持つことを心がけましょう。
保護者支援をする際に重要なスキル
実際に保護者支援を行う際に重要となるスキルは、大きく3つあります。
- 保護者への関わりのスキル
- 保護者への支援のスキル
- 保護者のコミュニティを作るスキル
それぞれ詳しく見ていきましょう。
①保護者への関わりのスキル
保護者と関わるスキルとしては、この5つが挙げられます。
①受容と共感 |
・意識的なうなずきや相槌 |
②子どもの成長を常に見つめ、保護者に伝える |
・日々の子どもの成長を言葉にして伝える |
③褒めるときは大切な人の前で |
・保護者の頑張りを褒める |
④コミュニケーションはYes, and |
・「そうですね、でも…」は避ける |
⑤行動の変化を促すならワンアクション |
・保護者への依頼はワンアクションでできるものにする |
この5つのスキルのうち、最も基本的で重要なスキルは、受容と共感です。
意識的にうなずいたり相槌を打ったりすることで、保護者に「受け入れてもらっている」「わかってもらえている」という安心感が生まれ、相談がしやすくなります。
また、「苦しかったですね…」など、相手の言葉にならない思いを表現し、共感することも大切です。アイコンタクトや声、表情、姿勢などの非言語コミュニケーションにも注意して、保護者が安心して話せる環境を整えましょう。
保護者支援では、保護者をエンパワーメントすること、つまり保護者の自己肯定感を高め、できるという自信を持ってもらうことが大切です。
保護者が一生懸命子育てしていることを認めて褒めたり、相手の考えを尊重してできそうな範囲でアクションを提案してみたりすることが、保護者との信頼関係を築き、保護者自身の力を伸ばすことに繋がります。
また、何か物事を決める上で、自分以外に決められたことと自分で決めたことでは、納得度や行動へのモチベーションに大きな差が出ます。支援者は、保護者自身が決断したことやこれから決断することを尊重し、力強く保護者の背中を押してあげましょう。
②保護者への支援のスキル
次に保護者支援のスキルとして、ソーシャルワークについて解説していきます。
ソーシャルワークは、保護者の課題や問題について解決をサポートするための手法の一つです。子どもの最善の利益を目指し、家庭環境なども把握した上で、保護者・子ども・必要機関・サービスなどを繋ぐことで課題解決に導きます。
子ども支援団体につながる保護者は、複数の複雑な困難を抱えていることも多く、単純なアドバイスや相談対応では解決できない問題も出てきがちです。保護者の抱えるさまざまな課題を把握した上でそれに寄り添い、解決に向けて伴走するには、ソーシャルワークの知識・技法を活用できると良いでしょう。
ただし、子ども支援に関わるスタッフ全員がソーシャルワークに精通する必要はありません。大切なのは、行政のソーシャルワーカーや団体に所属するソーシャルワーカーとしっかり連携して、保護者の課題解決に向かうことです。
細かな知識を詰め込む必要はありませんが、保護者と関わりがあるならソーシャルワークの基本知識だけでも頭に入れておくといいでしょう。
③保護者のコミュニティを作るスキル
最後に、保護者のコミュニティを作るスキルについて解説します。
子ども支援団体に関わる保護者の中には、「ひとり親で異性の子どもの育て方がわからない」「子どもが特別支援学級に入ったほうがいいと言われて不安」など、共通した悩みを持っている方がたくさんいます。そういった保護者同士が対話し、支え合える環境を作っていけると良いでしょう。
こうした環境が作れると、保護者は安心し、励まされ、自分で課題を解決しようとする力が湧いてきます。同じ境遇にいる保護者から経験や思いを聞くことで、たくさんの気づきを得ることもできるのです。
特別なニーズを持つ子どもの保護者への支援
子ども支援団体に関わる子どもの中には、特別な支援を必要とする人もたくさんいます。
そうした子どもを持つ保護者への対応の参考として、保護者支援におけるマインドセットと専門機関へ繋げるときの注意点についてお伝えします。
特別なニーズを持つ子どもの保護者支援で重要なマインドセット
重要なポイントは、この4つです。
- 障がい等の専門機関でない場合、「障がいや発達課題を治療する」のではなく、「子どもにとって最善の方法を一緒に考える」
- 保護者と信頼関係を築き、一生懸命子育てをしていることを認める
- 保護者の不安がどこの時間軸にあるのか見極め、将来に見通しが持てる支援を意識する
- 保護者自身が決断すること、決断したことを尊重する
障がい等の専門機関でない子ども支援拠点の場合、「障がいや発達課題を治療する」のではなく、子どもが困っていることに対して、「子どもにとって最善の方法を保護者と一緒に考えること」を前提として考えるのが良いでしょう。
まずは保護者としっかり信頼関係という土台を作り、保護者が今一生懸命子育てをしていることを認め、言葉で丁寧に伝えてあげましょう。
専門機関へ繋げるときの注意点
特別な支援を必要とする子どもやその保護者の支援に当たるときには、専門性の高い他の機関へ繋げるケースも多々あります。その際に注意すべきは、はじめに他機関へ繋ぐ際の繋ぎ方です。
まずは保護者の許可を得た上で、専門機関と丁寧に情報共有をしましょう。繋げたあとは、専門機関とどのように話が進んでいるのか、それについて保護者が不安に思っていることはないか、など随時確認してフォローすることが非常に重要です。
はじめの繋ぎ方がスムーズにいかないと、保護者が不安を感じてしまったり、支援団体との信頼関係が崩れてしまったりします。子どもと保護者が安心して生活できる状態を保てるよう、他機関への繋ぎ方や繋いだあとのフォローは慎重に行いましょう。
まとめ
今回は、保護者支援における基本のマインドセットやスキルについて解説しました。ポイントを以下にまとめます。
- 保護者と関わる際に最も重要なことは、信頼関係を構築すること。
- 保護者に指導するのではなく、エンパワーメントして一緒に子育てをしていく意識を持つことが大切。
- 保護者とのコミュニケーションでは「受容と共感」を心がけ、関係機関やソーシャルワーカーと連携する。
- 特別な支援が必要な子どもやその保護者の支援では、子どもにとっての最善を意識し、将来まで見通した支援を心がける。
後編では、実際に拠点でできる保護者との関わり方やコミュニケーションの工夫やコツなどについて、より具体的にご紹介をしていきます。
※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません
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