【後編】進路選択を控える中学生に対して、支援者はどう向き合うか ~NPO法人Learning for All の事例~

前回はLearning for All(以降、LFA)の学習支援拠点で拠点責任者を務める職員に、高校受験を控えた中学生に対する進路選択サポートの種類や困りごとについてお話を伺いました。今回は前回に引き続き、中学生の進路選択サポートの際の大切な考え方や団体として意識していることなどについてご紹介します。

【前編】進路選択を控える中学生に対して、支援者はどう向き合うか ~NPO法人Learning for All の事例~
【前編】進路選択を控える中学生に対して、支援者はどう向き合うか ~NPO法人Learning for All の事例~

団体として意識していること

━━日々の困りごとや子どもからの相談対応について、団体として意識していることはありますか。

まず、「子どもが主体的に決めることを尊重する」など、チーム全体で共有したい価値観は共有されています。そのうえで、現場スタッフ間で、それぞれの子どもについての対応方針を共有し、報連相をしっかり行っています。また、「現場のスタッフから子どもへの対応についての相談があがってきたときに、ソーシャルワーカーとミーティングで「このケースにはこういう選択肢があるよね」「こういう調べ方もできる」などのソーシャルワーク観点の意見をもらうことも多いです。

つまり、団体として共通の価値観は全員が認識し、都度判断できることは判断しつつ、判断するのが難しいことは団体全体で共有し判断するということを大事にしています。

━━日々の子どもとのやり取りの中で、判断が難しい場面もあると思います。スタッフの皆さんは、子どもと接する際の対応方針をどうやって身に着けているのでしょうか。

団体として行うべき対応方針は、スタッフ一人ひとりが日々のケースからも学習しているのかなと思います。「こういうケースがあってこのように対応した」「子どもがこう考えていたが、スタッフはどう考えるのか」など、子どもに関わる話は、常にチーム全体内で共有しているので、そこから団体としての方針を学んでいるのだと思います。

また、現場スタッフだけでは判断できない話は、その場ですぐに子どもに返答するのではなく、「他の先生に相談するから待っててね」と伝えて、スタッフから現場責任者に相談してもらうようにしています。つまり、学習支援拠点の現場で、「ここまでは自分で判断できるが、これ以上は責任者やマネージャーが対応をする」という役割分担が決まっているのだと思います。

進路選択サポートを行う際の大切な考え方

━━進路選択サポートを行う際の大切な考え方について教えてください。

大きく2つあります。

1つ目は、子どもに介入しすぎないことです。

進路は、あくまでも子どもが決めることだと考えています。もちろん、進路の選択肢や情報を子どもに伝えて、本人が「やりたい」と決めたことに対してのサポートはしますが、最終的な判断は子どもとご家庭が決めるものだと思っています。そのため、例えば学校で三者面談が行われた後に、「三者面談はどうでしたか?」と、三者面談の様子は聞きますが、「三者面談を受けて、これからどうしますか?」までは介入しないようにしています。

2つ目は、子どもが保護者に対して「親より学習支援拠点スタッフの方が頼れる」という感覚をもたないように、保護者と子どものコミュニケーションを大事にしています。

例えば保護者が忙しいという理由から、子どもと一緒に学校説明会に行けないことがあります。そんな時に子どもから「学校説明会に一緒に行ってほしい」と頼まれることもありますが、まずは「それは親御さんに頼めないの?」と伝えるようにしています。また、受験や入学手続きの際に書類を書かなければならない場面で、外国籍の保護者だけだと対応が難しい場合もあります。この時も、私たちが代わりに書類を書くのではなく、保護者の休みの日に面談を設定し、私たちから書類の内容を説明しながら、保護者ご自身で書類を書いてもらうようにしています。

あくまでも子ども自身の人生なので、進路選択サポートにおいて、私たちが必要以上に家庭の中に入って親代わりのような存在になるのは、やるべきではないと考えています。あくまでも家庭内のコミュニケーションを大事にしながら、サポートしています。

画像:photoAC 

より良い進路サポートのために、これからやっていきたいこと

━━より良いサポートを行うにあたって、これからやっていきたいことなどがあれば教えてください。

これからやっていきたいことはたくさんありますが、子どもの体験活動の機会をもっと増やしていきたいと考えています。例えば、中学校にはあまり通っておらず、中学卒業後の進路も決まっていない子が、私たちの拠点で行っているフードパントリーのお手伝いを沢山してくれていました。その取組の中で、その子が「自分は人と関わることが苦手だと思っていたけど、フードパントリーで関わったおじいちゃんに『ありがとう』と言われたときに、とても嬉しかった。私は、高齢の方たちとならコミュニケーションがとりやすいのかもしれない。そういうアルバイトとかやってみようかな」と話してくれたことが印象的でした。勉強して高校に行くという進路だけでなく、「自分はこれが得意なのかも」「これなら努力してできるようになりたい」と思えるものを見つけ、それに向かって進むことができると、その子本人にとって良いことなんだろうなと思います。より多くの体験をすることで、それが進路選択に直結する可能性もあるので、本人がやりたいことを見つけられるきっかけを作りたいなと思います。

まとめ

今回は前回に引き続き、LFAで拠点責任者を務める職員に中学生の進路選択サポートについてお話を伺いました。ポイントを下記にまとめます。

  • 共通の価値観を団体全体が認識し、判断することが難しいケースは報連相を通して解決する。
  • 団体として進路選択サポートを充実させるために、子どもの話について適宜団体内で報連相を遵守し、団体内で役割分担を明確にする。
  • 進路選択サポートを行う際は、子どもに介入しすぎないことと、保護者と子どものコミュニケーションを大事にすることが大切である。
  • より良い進路選択サポートを行うために、体験活動の機会をもっと増やしていきたい。

※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません

この記事は役に立ちましたか?