学習支援の現場では、子どもが宿題をやってこない、子どもが授業に遅刻してくるため指導時間が短くなってしまうなど、どのように解決すればいいか困る場面があるのではないでしょうか。そのようなときにこそ落ち着いて、まずは解決のための糸口を探すことが大切です。
この記事では、「子どもが宿題をやってこない」というテーマを例に、リフレクションを行って問題を解決する方法を紹介します。問題を解決する方法は、大きく分けると、①問題の要因を分析する、②解決のためのアクションを考え実行する、という2つのステップに分かれますが、今回はまず、①問題の要因分析の方法を紹介します。
リフレクションとは
授業で何か問題が起きたときには、自分自身や授業を振り返ることが大切です。この、自分自身や授業の内容などを振り返る行為を「リフレクション」と呼びます。リフレクションの目的は、大人が考える理想と子どもの現状との間に差があるときに、その差を把握し、現状を理想に近づけることです。
リフレクションの手順は大きく4つです。
(1)子ども主語の目標を立てる
(2)現状を整理する
(3)目標と現状の差が生まれる要因を考える
(4)次回の授業で得たい情報を整理する
リフレクションの手順
子ども主語の目標を立てる
まず最初に、理想状態は何か、を考えます。この時、子ども主語の目標を決めることが大切です。子ども主語の目標とは、子どもにどのようになってほしいかを考えた、「子どもが~」や「子どもは~」で始まる目標です。
「子どもが宿題をやってこない」というテーマについて子ども主語の目標を立てるとすると、例えば、「子どもが毎日30分宿題に取り組んでいる」という目標を立てられるかもしれません。
子ども主語の目標を立てる際のポイントは、目標を具体的にすることです。「毎日」「2日に1回」「1日30分」など、数字や頻度を表す言葉を入れることで目標がより具体的になります。
現状を整理する
子ども主語の目標を立てた後は、現状を整理します。
例えば、子どもが宿題をやってこないことについて、分かっている情報を整理すると次のようになるかもしれません。
・5枚の計算プリントを宿題として出している
・宿題の期限は、1週間後の次回の授業であると子どもに伝えている
・子どもは、次回の授業に宿題のプリントを持って来ている
・子どもが持ってきた宿題は5枚とも終わっていない状態である
現状を整理する際のポイントは、事実と大人の評価を分けて整理することです。例えば、「子どもが宿題のプリントを終わらせずに持ってくる」ことは事実ですが、「宿題に取り組むやる気がなく、終わらせずに持ってくる」とすると、「やる気がない」という子どもに対する大人の評価が入っています。事実と大人の評価が混ざってしまうと、現状を誤って認識してしまうことがあるので、事実だけを整理することを心掛けましょう。
問題が起きている要因を考える
子ども主語の目標を立て、現状を整理し終わったら、目標と現状の差がなぜ生まれているのか、要因を考えます。要因を考える際には、下の図のように要素を分解して整理すると考えやすいです。
要因を考える際に注意することは2つあります。
(1)子ども側の要因と大人側の要因を分けて考える
要因を考える際には、子ども側の要因が浮かびやすいですが、大人側にも要因がないかを振り返ることが大切です。例えば、宿題の量が多すぎることや、授業内で子どもが理解できる説明をできなかったことなどは、大人側の要因だと言えるでしょう。
(2)子どもの家庭・学校での様子も想像する
子どもは支援現場以外の場所でも生活をしているので、支援現場以外での様子を想像して要因を出すことが大切です。家庭と学校は子どもが多くの時間を過ごす場所である可能性が高いので、まずは家庭と学校での様子を想像できるとよいかもしれません。
一人で要因を整理することは難しい場合もあります。そのため最初は、どのような要因があるのか、他の人と意見を交わしながら考えると整理がしやすいかもしれません。
子どもから得たい情報を整理する
上記で洗い出した要因はあくまでも仮説であり、全てが正しいとは限りません。そのため、洗い出した要因の中で特に考えられる要因はどれかを見極める必要があります。適切な要因を見極めるためには、子どもの情報が必要です。子どもの情報を多く取得するために、次回授業で取得したい情報を整理しておきましょう。
子どもから得たい情報の中には、子どもの様子をよく観察すれば分かる情報もありますが、実際に子どもに聞かなければ分からない情報もあります。子どもの状態に配慮しながら、子どもに質問することもできるでしょう。
まとめ
- 問題を解決するために、自分自身や授業の内容などを振り返る行為を「リフレクション」と呼ぶ。リフレクションの手順は大きく4つ。
(1)子ども主語の目標を立てる
(2)現状を整理する
(3)目標と現状の差が生まれる要因を考える
(4)次回の授業で得たい情報を整理する - 子ども主語の目標を立てる際には、子どもにどのようになってほしいかを考え、「子どもが~」や「子どもは~」で始まる目標を立てる。また、数字や頻度を表す言葉を入れて目標を具体的にする。
- 現状を整理する際には、事実と大人の評価を分けて整理する。
- 要因を考える際のポイントは2つ。
(1)子ども側の要因と大人側の要因を分けて考える
(2)子どもの家庭・学校での様子も想像する - 子どもの様子を観察することや実際に子どもに質問することで子どもの情報を得る
次回は、問題の解決方法の探し方をご紹介します。
アクション編はこちら
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