現在、日本では7人に1人の子どもが貧困の状態にあると言われています。「子どもの貧困」という言葉は知っていても、「子どもの貧困」を身近な問題には感じられないかもしれません。今回は、「子どもの貧困」の基本的な概念と子どもたちを支援する団体の役割について説明します。
子どもの貧困とは?
貧困の定義には「絶対的貧困」と「相対的貧困」があります。絶対的貧困とは、食べるものがない、住む家がないなどの最低限度の生存条件を欠く状態を指します。一方で、相対的貧困は、その国の生活水準や文化水準から比べた際に「貧困」だと捉えられる状態を指します。日本における貧困とは相対的貧困を指すことが通常です。
日本で相対的貧困世帯の18歳未満の子どもの数は260万人いると言われています。子どもの貧困率は13.5%、つまり7人に1人の子どもが相対的貧困の状態にあります(2018年、厚生労働省調べ)。
また、ひとり親家庭の相対的貧困率は48.1%(2018年、厚生労働省調べ)であり、日本の貧困世帯のうち半数以上がひとり親世帯だと言われています。母子世帯では、非正規雇用を余儀なくされる女性の労働問題とも絡み合い、貧困率は6割を超えています。
また、日本には就学援助・生活保護の対象となる子どもが134万人いると言われています(2019年、文部科学省調べ)。就学援助とは、経済的な理由から就学に困難を抱える家庭に対して、就学に必要なお金を国や地方自治体が援助することです。就学援助対象者は必ずしも相対的貧困の状態にあるとは言えませんが、生活保護受給世帯を中心として、学校に通うために支援を必要としている子どもたちが多くいます。
子どもたちは経済的な困難以外にも様々な困難を抱えています。大きな学力遅滞を抱え進学が危ぶまれる子、過去のDVやネグレクトなどにより、精神的な困難を抱えている子、外国籍で日本語が不自由であったり、発達障害を抱えているにも関わらず適切なサポートを受けられていない子など、問題は様々です。
様々な課題を抱える子どもにとっての支援現場の役割
支援現場にくる子どもたちの中には、他人とのコミュニケーションをうまく取れなかったり、相手の話を遮ってしまったり、攻撃的な言葉を使ったり、あるいは全く受け答えをしない子どもがいます。このような行動の背景には様々な要因があると考えられます。
その要因の一つとして子どもの家庭環境です。例えば、母子家庭で母親が遅くまで働き、家族とコミュニケーションを取る機会が少なかったり、家での兄弟や保護者の言葉遣いを子どもが真似しているのかもしれません。
他には子どもの学校生活も影響しているかもしれません。集団授業についていけなくなり、ずっとわからないまま席に座っていたり、休み時間も一人で過ごしたり、クラスでの自分の立ち位置が思うようにいかないかもしれません。
また、子どもの生活環境以外にも発達的な要因も考えられるでしょう。小学校高学年から中学校入学時にかけて、子どもは児童期を過ぎ思春期を迎えます。体の変化とともに、第二次性徴を迎え心理的にも社会的にも大きな変化が生じます。自分自身の変化を受け入れて適応する必要性から、心が不安定になりやすい時期です。
このように様々な背景を持つ子どもたちがくる支援現場は、子どもたちにとってどのような役割を果たすことができるでしょうか?
まずは、支援現場が子どもたちにとって安心・安全を感じられる空間であることです。支援現場にいる大人は無理に子どもを変えようとするのではなく、子どもたちに寄り添うことで、子どもたちは自ら前に進む力を取り戻していくでしょう。
また、子どもたちが学習習慣を身につけることや生活習慣を整えることに加えて、社交性・他者への思いやり・物事をやり抜く力などの非認知能力を身に着ける場所としての役割も果たすことができるでしょう。
子どもと接するときに大切にすること
子どもに寄り添いながら支援をする上で、参考となる姿勢を2つ紹介します。
一つ目は全ての子どもが「よりよく生きたい」と思っていると、私たちが信じることです。先ほど説明したような背景から、否定的・攻撃的なコミュニケーションをとってしまう子どももいるかもしれませんが、その瞬間の行動だけにとらわれずに、子どもの行動や言動の裏には肯定的な思いがあると信じることが大切です。
二つ目は「子ども目線」でのコミュニケーションです。子ども目線でのコミュニケーションとは、「〇〇さん/〇〇君はどうしたいんだろう」「〇〇さん/〇〇君はどう感じているんだろう」と常に子どもを主語にして考えながら、子どもと接することです。その際には、自分の行動や仕草・声かけ一つ一つが子どもにどのような影響を与えるのかを常に意識することも大切です。
まとめ
・相対的貧困は、その国の生活水準や文化水準から比べた際に「貧困」だと捉えられる状態
・日本では7人に1人の子どもが相対的貧困の状態にある
・子どもの困りごとの背景には、家庭環境や学校生活、発達上の要因など様々な要因がある
・支援現場は子どもたちが安心・安全を感じられる空間であり、学習習慣や生活習慣に加えて非認知能力を身につける役割を果たす
・子どもの「よりよく生きたい」という肯定的な思いを信じ、「子ども目線」でのコミュニケーションを意識することが大切
※資料出所
厚生労働省「2019年 国民生活基礎調査」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/index.html
文部科学省「2019年 就学援助実施状況等調査結果」
https://www.mext.go.jp/content/20210323-mxt_shuugaku-000013453_1.pdf
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