子ども支援とひとことで言っても、それに携わる方々の役割は様々です。今回ご紹介するソーシャルワーカーもその1つですが、ソーシャルワーカーのお仕事について具体的なイメージが湧かない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、ソーシャルワーカーの専門性や現場の支援員とどのように連携しているのかなどについて、認定NPO法人Learning for All(以下、LFA)のソーシャルワーカーにお伺いしました。
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プロフィール:ソーシャルワーカーAさん
LFA所属のソーシャルワーカー。
大学卒業後、精神科・児童精神科のクリニックでソーシャルワーカーとして勤務したのち、LFAへ入職。LFAが運営する拠点に通う子どもたちへのソーシャルワーク実践や、地域協働型子ども包括支援モデル構築に向けた働きかけを行う。
ソーシャルワーカーとは
ソーシャルワーカーとは、医療、教育、福祉・介護などの分野で、支援や援助が必要な方の相談を受け、必要に応じて介護施設や病院、学校などの関連機関への連絡・調整を行う相談援助職を指します。ソーシャルワーカーを名乗る、業務を行うのに資格は必要ありませんが、社会福祉士や精神保健福祉士などを取得しておくと、専門知識をもって業務にあたることができます。
子どもに関わるソーシャルワーカーとしては、スクールソーシャルワーカー(SSW)がよく知られています。スクールソーシャルワーカーは、小学校や中学校といった教育機関に所属もしくは訪問し、いじめや不登校、虐待、育児放棄など、学校や家庭で問題を抱える子どもやそのご家族の支援を行います。他にも、児童相談所に所属し、虐待対応や子育てに関する相談支援を行う児童ケースワーカーなどもあります。
そして最近では、LFAのようなNPOでもソーシャルワーカーが活躍しています。LFAに所属するソーシャルワーカーには大きく分けて2つの業務があります。
1つ目は、拠点を利用する子どもや世帯に対して個別に支援を行います。具体的には、居場所拠点で遊びや食事を通じて子どもを支援したり、子ども・保護者との面談を実施したりします。さらに、支援の中で得られた情報をもとに個別の支援計画を作成したりします。
2つ目は、地域の中で子どもを支えていくための関係機関との連携です。具体的には、自治体・他機関とのケース会議や地域の会合への参加などを通して、関係機関と定常的なコミュニケーションを図っていきます。また、通告などの非常時に関係機関と連携することもあります。
LFAのソーシャルワーカーの1日
—Aさんの1日のお仕事の流れを教えてください。
日によって異なるので一例ですが、LFAのソーシャルワーカー同士で朝礼を行い情報共有をします。同じエリアのソーシャルワーカーとは拠点巡回や保護者面談などを分担する形で仕事をしているので、情報共有や連携は重要です。また、定期的に拠点の職員とミーティングをして、気になる子どもの情報を共有し、今後の支援方針などについて話し合っています。
打ち合わせが終わると拠点に行き、子どもたちと過ごします。子どもたちと関わる際には、生活の様子に合わせて関わり方を変えています。最近は、ひとり暮らしをする可能性のある子に料理に興味を持ってもらえたらと思い、居場所で一緒に料理を作りました。
拠点外の支援では、子どもにとって大きな環境の1つである保護者に対してアプローチしていくこともあります。例えば、保護者が生活困窮の窓口に行く際や医療機関に行く際などに同行したりします。子どもへの支援ではないではないかと思われるかもしれませんが、子どもにとって家庭環境は大きな影響を及ぼすものなので、様々な関係機関と連携して保護者への支援も臨機応変に行っています。
また、地域の関係機関とは、普段から情報共有を行ったり、拠点を訪問させてもらったりと、コミュニケーションをとる機会をたくさんもつようにしています。LFAは18歳までを対象としているので、18歳以降も利用できるサービスを実施している団体と連携し、若者と一緒に相談に行ったり、その団体の居場所にLFAスタッフもいさせてもらったりすることもあります。それぞれの機関は人や使える時間など資源が限られているので、連携しながらこどもや若者、保護者を支援しています。
画像:LFA作成
—子どもと遊んだり、拠点の職員とも密に連携するなど、拠点との関わりが多いのですね。拠点の中でソーシャルワーカーはどのような存在ですか。
子どもとの直接の関わりを大切にしながらも、拠点とは少し距離のある存在でありたいと思っています。居場所は安心・安全な場所だからこそ、子どもたちから困りごとが吐露されることもありますが、拠点の職員だけで全てに対応するのは大変です。ですから、拠点と分担して子どもたちをサポートしています。例えば、拠点の卒業が近く不安を感じている子に対しては、ソーシャルワーカーが子どもと一緒にLFAの拠点を卒業しても通える別団体の居場所に行ってみたりするなど、他の機関と子どもを繋ぐことはソーシャルワーカーが中心に担っています。
バランス感覚を求められるやりがいのある仕事
—ソーシャルワーカーとして働く上で大切にしていることはありますか。
3つあります。1つ目は、子どもの困りごとを大きな構造の中で捉えることです。子どもの困りごとに向き合う際に、本人に原因を見出し、働きかけるのでなく、生活全体に目を向け、困りごとの背景を根本的に解決することを目指しています。
例えば、不安になりがちなお子さんの言動の背景には、家の中で怒鳴られたり、学校で自分の特性が理解されずに苦しい思いをしているという環境があったりします。以前、病院でMHSW(メンタルヘルスソーシャルワーカー)(注1)として勤務していたことがあるのですが、医師や心理士と比べて、MHSWは生活に目を向けて、人と環境の間でうまく行っていない部分に介入することが特徴だと感じました。目の前の困りごとだけにずっと対峙していると煮詰まることもあるので、背景となる構造をきちんと捉え、生活全体にアプローチしていくことを大切にしています。
(注1)精神保健福祉士。精神に障害がある人を対象として、専門的知識を以て社会生活における指導、援助を行う。
画像:Loose Drawingから作成
2つ目は、誰とでも仲良くすることです。この考え方は、自分自身の性格から来ている部分もありますし、業務の中で関わる様々な関係機関と持ちつ持たれつで支え合う関係を築きたいと思っているということもあります。立場に関係なく、気持ちの良いコミュニケーションを心がけています。
3つ目は、どこまでも子ども中心に考えることです。これまでの自分の経験を通じて、支援をしているうちに主語がスタッフや保護者などへとずれてしまうこともあると感じています。例えば、子どもの環境のひとつとして保護者のサポートに力を入れるようになると、そちらに感情移入してしまい、保護者を中心に考えてしまうようになることがありました。もちろん保護者支援も大切ですが、保護者を中心に据えて支援する団体など様々な機関があるので、必要な際は連携しつつ、LFAとしては子どもを中心に考えることを大切にしていきたいです。
—最後に、Aさんにとってソーシャルワーカーとはどんなお仕事ですか。
ソーシャルワーカーはとてもやりがいのある仕事だと思います。LFAのソーシャルワーカーは、1つの拠点に所属するのではなく地域全体を見るので、LFAの拠点に通う多くの子どもと関わることができ、卒業などの印象深い出来事にたくさん立ち会える点に魅力を感じます。
しかし、バランス感覚が重要な仕事だとも思います。子どもと保護者、子どもと学校などの関係がうまく行かないこともよくあります。その際は子どもの気持ちや権利を大切する立場として、関係者と少し対立しないといけない部分もある一方で、保護者や関係機関とは協働関係を築いて子どもを一緒に応援する立場でもあります。伝えるべきことをきちんと主張しながらも、保護者や学校と協力して子どもを支える関係性を作っていくという、バランス感覚が求められる難しい仕事だと感じます。しかしだからこそ、更にやりがいを感じることもできます。
まとめ
今回は、LFAのソーシャルワーカーであるAさんに、ソーシャルワーカーのお仕事の内容や特徴について伺いました。ポイントを以下にまとめます。
- ソーシャルワーカーとは、医療、教育、福祉・介護などの分野で、支援や援助が必要な方の相談を受け、必要に応じて介護施設や病院、学校などの関連機関への連絡・調整を行う相談援助職のこと。
- 1日の仕事内容として、ソーシャルワーカーや拠点職員とのミーティング、訪問支援、拠点で子どもと一緒に過ごすなどしている。
- 拠点での子どもとの個別の関わりを大事にしつつ、外部機関との連携という広い視野を持ち、拠点職員と役割分担して子どもを支えている。
- ソーシャルワーカーとして働く上で、困りごとの背景をきちんと捉えること、関係者と良好な関係を築くこと、子どもを中心に考えることの3つを大切にしている。
※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません
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