子どもたちの学習の場は、居場所拠点や学習拠点に加えて、家庭、学校など多岐にわたり、子どもが自分自身で学習を進めなければならない場面も多くあります。本記事では、子どもの自主的な学習のためできると良いサポートについて取り上げます。
前編では、学習の計画作成に着目して、子どもたちが自分で計画を立てて学習を進める際のポイントをまとめます。また後編では、暗記や丸付けなどの具体的な計画実行場面で子どもが自主的に学習を進めるためのサポートの工夫をご紹介します。
関連記事:
なぜ子どもの自主学習が必要か
そもそも、なぜ子どもたちが自分自身で学習を進めていくためのサポートが必要なのでしょうか。その理由として、次の3つが挙げられます。
1つ目は、支援者が子どもの学習を手伝える場面は限られるためです。子どもが居場所拠点や学習拠点にいる時には、周りの大人がサポートできますが、それ以外の場面で子どもの周りにサポートできる誰かが常にいるとは限りません。したがって、支援者は拠点外での子どもたちの学習も想定し、自主的に学習を進める方法を身に着けるサポートをしていく必要があります。
2つ目は、特に小学校高学年以上の子どもの場合、学校の勉強についていくためには日常的な学習習慣を身に着けることが重要になるためです。多くの学校では宿題が出され、子どもが家庭で復習をしていることを前提に授業が進められます。したがって、ある程度の学習は子ども自身で進めることができるようになることが求められます。
出典:pixabay
3つ目は、受験勉強をはじめとして、子ども自身が計画を立てて学習を進めることが必要になる機会があるためです。多くの子どもは、高校に入る時に受験を経験します。進学希望校への入学に必要な学力と、現状の学力のギャップはs人それぞれ異なるため、子どもたちは学習の到達度を考慮しながら、それぞれの目標に合わせた試験対策を行わなければなりません。自分で学習内容を計画する力や計画を遂行する力を短期間で身につけるのは難しいため、早い段階から少しずつ子どもが自分で学習を進めることを経験しておくことが重要です。
学習計画を立てる
自分で学習する時には、闇雲に勉強するよりも、計画を立てて見通しを持つ方が効率よく進めることができます。子どもが支援拠点での勉強に慣れてきたら、一緒に学習の計画を立ててから勉強を進めるなど、子どもが「学習計画を立てる」ことを習慣化できるようサポートすると良いでしょう。
学習計画は、主に以下の三つの要素で構成されます。
- 学習のゴールを決める
- 学習内容を決める
- 学習を振り返る
それぞれ順番に見ていきましょう。
1.学習のゴールを決める
子どもに合ったゴールをあらかじめ決めておくことで、効率よく学習を進めることができます。適切な学習のゴールを設定するためのポイントは以下の3つです。
- 「具体的」かつ「達成できたかどうかが測定できる」こと
- 学習内容の「習得」が目的になっていること
- 「挑戦的」かつ「実現可能」であること
まず、ゴールは具体的、かつ達成できたかどうか測定できる必要があります。たとえば、「一次方程式を理解する」というゴールでは、何をもって理解できたと言えるのかが曖昧です。一方、「教科書の一次方程式の章末問題1を解けるようにする」のように具体的なゴールを設定すると、そのために何をすべきなのかを考えやすく、達成できたかどうかが分かりやすくなります。
また、学習内容の習得が目的であることも忘れないように注意しましょう。学習を頑張ろうと思うと、学習内容を「習得する」ことではなく、ただ勉強を「こなす」ことが目的になってしまいがちです。学習内容の習得のためには、「このページを2回やる」のように学習の量に注目するよりも、「このページの最後の問題を解けるようになる」など、到達度に焦点を当てると効果的です。勉強を頑張ろうとする子どもの意思は尊重しつつも、頑張るあまり目的と手段が入れ替わってしまわないように注意が必要です。
さらに、挑戦的でありつつも、実現可能なゴールであることが大切です。もしゴールの達成があまりに難しければ、途中で挫折してしまう可能性があります。子どもの現状の到達度を踏まえ、子どもが実現できるゴールを設定することが大切です。目標を細かく分けて一つずつ達成することを目指すと無理のないゴール設定ができるでしょう。
2. 学習内容を決める
使用する教材を選ぶ
子どもが自分で学習を進めるときには、教材も自分で決めなければなりません。ゴールに到達するためには適切な教材選びが重要であるため、子どもが慣れないうちは適切な教材選びをサポートできると良いでしょう。教材を選ぶ際は、教材が子どものレベルにあっているか、そして教材の用途を理解して適切な用途の教材を選べているかの2点に注意をしましょう。
出典:pixabay
教材のレベルが子どもの理解度に合っていないと、勉強しているのにできるようにならない、ということが起こり得ます。子どもが自分の理解度を把握することが難しい場合、学校の先生などに助言を求めてみるよう促してみることも効果的です。他人を適切に頼ることも、学習をする上で大切な能力の一つです。
また、教材選びの際にはその教材の用途を理解する必要があります。学習の過程は、知識を覚える段階と知識を使って演習する段階に分けられます。参考書や問題集も2つの段階に対応するものに分かれていることが多いため、それぞれの段階で使う教材の対応関係を把握することが重要です。子どもが使っている教材を把握し、どの教材をどの段階でどのように使うのかを一緒に考えられると良いでしょう。
学習内容を決める
教材が決まったら、具体的な学習内容を決め、やるべきことを明確にします。学習内容を決める際のポイントを順番に見ていきましょう。
まずは、5W1Hを明確にする、すなわち、何をするのか(What)、どの教科をするのか(Which)、いつするのか(When)、どこでするのか(Where)、誰とするのか・1人でするのか(Who)、どうやってするのか(How)をあらかじめ決めておくことです。これらを具体的に決めておくことで、子どもが学習に取り掛かる目安ができ、振り返りやすくなります。
次に、学習内容を日割りにすることです。学習のゴールと照らし合わせ、どの程度の学習が必要なのかを確認し、それぞれの日にどこまで進めるのかを割り振っておくことで見通しを持って学習できます。割り振りを考える時には、それぞれの日の予定を確認して、どの程度学習時間が取れそうかを検討すると、計画倒れを防ぎやすくなります。
画像:LFA作成
最後に、計画を立てる際に1問試しに解いてみることです。計画を立てようと思っても、問題を解くのに実際どのくらいの時間がかかるのかを想定するのは難しい場合があります。計画を立てる際に1問だけ解いてみて時間を測り、それを踏まえて計画を作ると、より実現可能なものにすることができます。
3. 学習を振り返る
実際に学習計画を実行したら、よかった点と改善点を定期的に振り返るよう促してみることがおすすめです。計画を立てたままにせず振り返ることで、改善点を見つけることができ、その後の学習計画をより良いものに変えることができます。主に以下のような観点で振り返りを行うと良いでしょう。
まず、学習のゴールに対する達成度を振り返ります。この時、学習の質と量の2つの側面から振り返ることがポイントです。質については、たとえば、できるようになったことやまだ理解できていないことは何か、どうやって学習すると理解しやすかったかを振り返ります。量については、勉強時間が確保できたかを振り返ります。質の振り返りが難しい子どもの場合は、まずは量の振り返りから始めてみるのも、振り返りに慣れるための一つの手です。
そして、ゴールを達成できなかったときは、その原因を考えることも大切です。例えば、学習量が足りなかった原因は、テレビをなんとなく長時間見てしまったことかもしれません。原因が分かれば、見る番組はあらかじめ決めておくなど、ゴール達成のための対策を立てることができるようになります。
学習のモチベーションを管理する
ここまでは学習計画についてお伝えしましたが、計画を決めた通りに実行することは、多くの子どもにとって簡単なことではありません。そんな時、子どもが自分自身のモチベーションを管理する方法を知っていると、学習を進めるための一助となります。モチベーションの管理方法にはさまざまなものがありますが、今回は4つを取り上げます。これらを参考に、何がその子のモチベーションに影響するのかを子どもと一緒にぜひ考えてみてください。
モチベーション管理方法の1つは、学習する環境を整えることです。例としては、机の上や部屋全体を片付けたり、色ペンやイラストでノートをきれいにしたり、新しい文房具を使ったりすることが挙げられます。
また、勉強のハードルを下げることも有効です。こまめに休憩を入れたり、飽きたら別の教科に変えたりすることは、学習への抵抗を減らすことにつながります。得意な分野から学習を始めたり、楽な姿勢でもできる暗記から取り組んだりすることで、開始時の負担感を減らせることもあります。
画像:LFA作成
さらに、他人との関係性を用いる方法もあります。友人と一緒に勉強したり、学習時間を競ったりすることでモチベーションを保つことが得意な子どももいます。
最後に、報酬を用いる方法が挙げられます。たとえば、決めた箇所まで終えたらお菓子を食べたりテレビを見たりすると決めることで学習の意欲を高めることができることがあります。勉強時間を記録して達成感につなげることで、モチベーションを保つことが得意な子どももいるでしょう。
まとめ
今回は、子どもの自主的な学習について、準備・計画の面からまとめました。ポイントを以下にまとめます。
- 子どもの自主的な学習のためには、学習計画を立てることからサポートしていく
- 学習計画は、1. 学習のゴールを決める、2. 学習の内容を決める、3. 学習を振り返るの3つの要素で構成される
- 学習計画通りに学習を進めるための一助として、何が子どものモチベーションに影響するのかを子どもと一緒に見極める
後編では、暗記や丸付けなど、実際に子どもが自分で学習を進める場面で押さえておけると良いポイントについて、ご紹介します。
この記事は役に立ちましたか?
記事をシェアしてみんなで学ぼう