不登校の子どもへの学習支援ーNPO法人Learning for Allの事例ー

不登校の子どもは年々増加しており、支援現場に繋がる不登校の子どもも多くなっています。様々な理由から不登校になった子どもたちと関わる際には、指導方法だけでなく、コミュニケーションを取る際にも配慮すべき事項があり、支援者の皆様の中にもお悩みの方は多いのではないでしょうか。

今回は、「不登校の子どもへの学習支援」について、関東近郊で学習支援を実施しているNPO法人Learning for All(以下、LFA)のスタッフに伺いました。
※個人の特定を防ぐため、匿名で掲載させていただきます。

 

不登校の子どもと信頼関係を築くための工夫

━━LFAの拠点には、どのような背景を持った不登校のお子さんがいますか?

様々なお子さんがいらっしゃいます。例えば、小学生の時に父親が事故で亡くなってしまい、母親もそのショックで体調を崩し家庭全体が不安定になってしまったご家庭の子どもは、私たちと出会った当時、兄弟3名が全員不登校でした。
その他にも、発達に特性のある子どもで、中学校に入ると小学校より学習内容も難しく、量も多くなってしまいついていけずに不登校になってしまった子どももいます。

このように、家庭の問題を抱えている子どもや発達に特性のある子どもなど、様々な背景を抱えた子どもが学校に行くことができなくなり、LFAの拠点にきています。

━━そのような子どもと信頼関係を築き、関わる上で大切にしていたことはありますか?

スタッフが子どもと関わる上で、下記2点を大切にしています。

  • 子どもがどんな生活環境で育ち、どんな理由で不登校になったのか、背景を把握・想像する
  • その子自身の気持ちを大切にする

不登校になった背景を知ると、そこにはその子なりの苦労やトラウマがあります。私たちにとっての「当たり前」がその子にとっては難しかったり、傷つく可能性があるこということを常に念頭に置いています。
背景を知るためには、子ども自身をよく見ることはもちろん、スクールソーシャルワーカーや保護者、学校の先生からも話を聞くようにしています。

2点目について、「大人が無理やり決めた」という状況が重なると周囲の大人への不信感が募ってしまうと考えているので、子どもの意見を聞くことを何より大切にしています。
「LFAの拠点には、自分の声を聞いてくれる、信頼できる大人がいる」ということを感じてもらえることが、結果的に信頼関係の構築に繋がると考えています。

━━不登校の子どもたちは、勇気を出してLFAの支援現場に来てくれていると思います。「また来たい」と思ってもらえるために、最初の授業の段階で意識・工夫していることはありますか?

子どもたちのやる気を掴むことと、トラウマへの配慮をすることを心掛けています。

不登校の子どもの中には、自分自身に自信を無くしてしまっている子どもも多くいます。その子が得意なこと、気持ちよく取り組めることを見つけて、指導時間中に成功体験を積んでもらうことを意識しています。例えば絵を書く事が得意な女の子に対しては、英単語の意味をイラストで表現する時間を作り、子どもが楽しみながら学べるような工夫をしました。

また、トラウマを想起しないよう環境への配慮も意識しています。
大きな音や声が苦手な子どもの場合は、静かな環境で勉強できるよう別室を用意したり、男性に苦手意識のある子どもには女性のボランティアが勉強を教えるなど、過去に経験した嫌な思いを繰り返さないように環境を整えることも大切にしています。

前提として、新しい環境は子どもにとって負担になることも多いと思っています。そのため、時間がかかることが多いです。子どもに「来たい時にいつでも来て良いよ」と伝え、本人のペース・気持ちを尊重して関わることは意識しています。

学習遅滞解消のために行っている工夫

━━実際の勉強に関しては、どのように学習遅滞を解消していましたか?

不登校の子どもでも勉強が得意な子もいるので、一概には言えず、一人ひとりに対して指導カリキュラムを立てています。一番は、その子の学力の現状分析をしっかりと行うことです。子どものケースごとに異なりますが、不登校の時期が長い場合、未学習分野を全てサポートするのは難しいと思っています。
そのため、その子どもの現状をしっかりと把握し分析することを大切にしています。

具体的には、学習していない単元や苦手な単元を把握し、現在の学年やこれからの学習に対してその単元を理解しておくことがどれくらい必要かを確認します。

苦手な単元を把握する方法として、LFAでは学年・学期に合わせた小テストを実施しています。その結果から苦手な単元をLFAが理解し、子どもがどこを学習していくと良いか学習計画を考えて指導をしています。
限られた時間の中で最大限の結果を出し、本人の成功体験となるように心がけています。

不登校の子どもの進路相談

━━不登校の子どもの進路相談について、意識してきたことはありますか?

冒頭にもお伝えした「その子自身の気持ちを大切にする」というところは大切にしています。
そのため、「その子自身が納得して進路を選ぶ」ことができるよう意識しています。

例えば、中学生のご家庭に向けて、高校の情報をまとめた資料をお送りしたり、時には高校見学に同行することもあります。
不登校の子どもは学校に通っていない分、進学の情報をあまり入手できていないことが多いと感じているため、その差を補うようなサポートをしています。

また、やりたいことを上手く言葉で表せない子どももいるので、一緒に言語化することもあります。
その際に、子どもが力を発揮できること、強みを見つけることも意識しています。子どもが自分で気付いていない得意なことや、向いていることをこちらからもお伝えすることで、子どもが自信を持って物事に取り組める・やりたいことを見つけられる一助になるのではと思っています。

━━子ども本人と保護者の方で進路希望が分かれる場合、どのような対応を意識していましたか?

子どもと保護者の意見が分かれることはよくあることですし、悪いことではないと思っています。そのため、親子で話し合ったり意見を交換する時間を奪うことにならないよう、スタッフは介入しすぎないように心がけています。

その中でも、お互い(子ども・保護者)の真意が伝わるようにサポートすることはあります。
例えば、子どもがやりたいことを見つけ、そのやりたいことができる高校を選んだとしても、保護者の方は「自分の子どもは、勉強をしたくないからあまり勉強しなくてもいい学校を選んだのだ」と思っていることがあります。

そのような場合は、保護者の方に「お子さんはこういう風に言っていましたよ」と子どもの真意をお伝えする橋渡しの役割を担います。子ども・保護者どちらかの味方につくのではなく、あくまで真意をお伝えするのみです。

基本的には、親子で話し合う場を奪わないよう、スタッフは見守りに徹しつつ、時には真意が伝わるサポートも大切にしています。

まとめ

今回は、不登校の子どもへの関わり方について様々なお話を伺いました。
LFAでの実践ポイントを以下にまとめます。

・子どもの背景(不登校理由や生活環境)を把握・想像し、その子自身の気持ちを大切にしながら信頼関係を築いていく
・子どものやる気を掴む授業設計と、トラウマを排除する環境設計を意識する
・学習遅滞解消のために、現状の学力の分析を行ったのち、子どもに合わせた指導計画を立てる
・進路相談対応時は、「子どもが納得して選ぶこと」を大切に、高校情報の提供ややりたいことの言語化サポートなどを行う。

※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません

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