【後編】NPO人事担当が語る!NPOならではの採用の悩みにどう向き合うか ~Learning for All の事例~

子どもたちに質の高い支援を届けるためには、その支援を支える人たちがいることが重要です。そのため、NPOの人事担当は組織の基盤に関わる重要な役割を担っていると言えますが、「なかなか良い候補者とつながらない」「採用をする際の観点にいまいち自信が持てない」という方も多いのではないでしょうか。

今回は認定特定非営利活動法人Learning for All (以下、LFA)で人事を務める三友さんに、採用においてどのような悩みを抱え、対策を打っているのかを伺いました。各団体によって、どのような人を採用したいかは異なるかと思いますが、採用フローを見直す際の参考にして頂ければ幸いです。

前編では三友さんの前職のご経験とも比較しながら、NPOであるLFAの採用活動の特徴や面接での観点を伺いました。後編では、実際に三友さんが行った「採用フローの見直し」についての具体的なお話や、採用活動において大切にしていること等について、お話を伺います。

【前編】NPO人事担当が語る!NPOならではの採用の悩みにどう向き合うか ~Learning for All の事例~
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子ども支援ボランティアの募集方法ーNPO法人Learning for Allの事例ー
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プロフィール:三友 志織
大学在学時、LFAの学習支援事業・学生ボランティア採用に携わる。
卒業後、総合系人材企業での企画・マーケティング・コンサルティング領域専任のキャリアアドバイザー職を経て、LFA入職。
人事として、採用・労務管理・人材育成・評価制度運用等を担当。国家資格キャリアコンサルタント/米国CCE, Inc.認定 GCDF-Japanキャリアカウンセラー。
King & Princeとペンギンが好き。

 

「応募者目線」で整備した採用フロー

—採用活動に関わってきて、これまで悩んだこととその対応策について、印象的なものを教えていただきたいです。

最も悩んだのは、応募者との最初の接点作りから、面接を経て内定に至るまでのフローの整備です。一年間かけて、フローの中の抑えるべきポイントを整理したり、選考の中で応募者の皆さんの志望度を上げるための工夫を実施しました。

まず「採用の入口」の改善として、「LFAの採用説明会」を企画しました。もともとは採用プラットフォームを経由してご連絡いただいた方に対して、一人ひとりカジュアル面談をしていたのですが、この方法は母集団形成をするには効果が弱いと感じていました。そこで、1回に多くの人を確保するのが大事であると考えて、LFAに興味を持ってくれた方々が気軽に参加できる「採用説明会」を始めました。この説明会は、今も定期的に開催しています。

また、選考から内定までのフローの改善については、現在LFAで働いている職員数名にインタビューを実施しました。その結果、様々な意見をもらい、その意見に対して対応策を打つことができました。その一部を以下の表にまとめます。


画像:LFA作成

以上に加え、内定者と職員のランチ会も企画しました。受け入れる側のチームとの交流の場を事前に作ることで、入職後の離脱リスク、早期退職を防ぐことにもつながると考えています。

また、選考の度に、必ず本人にフィードバックを実施することも始めました。

—選考の度にフィードバックするのは何故ですか?

前提として、転職活動は多くの不安と孤独を伴います転職活動をしていることは、今働いている職場の人には話さない人も多いですし、家族にも相談せずに転職活動を行っている場合もあります。そうすると、その人にとって不安な気持ちを相談できるコミュニティはかなり少なくなりますよね。そして何より「行きたいところが見つかるだろうか」という不安があるでしょうし、現職と並行しながら転職活動を進めること自体が大きなストレスになります。

そんな不安と孤独の中、たとえ面接に受かり、選考が進んだ場合でさえ「なんで受かったのかわからないのに、次の選考に行くのは怖い」と不安になる人たちを、前職で多く見てきました。転職活動がうまくいっているときでさえも不安になる人たちを目の当たりにしてきた経験から、フィードバックを返すことは、とても大事だと考えています。

採用人事の立場になった現在では、来てほしい人には「何を良いと思ったか」を伝えることを意識しています。また、良かったことのフィードバックに加え、「次にこういう面接官が来るのでこのような準備をしたほうが良い」など、期待を伝えるフィードバックも行い、志望度を上げる工夫を行っています。

加えて、これは結果的に功を奏した側面でもあるのですが、LFAでは「学習する力」を大切にしています。そのためこういったフィードバックをポジティブに受け止め、次回選考に向けて改善を試みてくださる方がLFAにフィットするという、双方にとっての「見極め」にもつながったように思います。

また、フィードバックを踏まえて取り組んだ結果、応募者本人が「今の自分の転職先は、LFAではないかもしれないな」と考え直すこともあります。結果(採用・不採用)に関わらず、転職活動を通して、本人がキャリアにきちんと向き合えることが重要だと考えるため、選考の度に本人にフィードバックを行っています

これはNPOに限らない、採用全体において大事な姿勢だと私は考えています。組織側が人を「採る」という言い方をすることが多いですが、組織と人は「採る/採られる」の関係ではないと思います。マーケットの状況だけでいうとむしろ企業が選ばれる側ですし、採用活動は「その人がやりたいこと」と「組織のやりたいこと」の確認の場だと思っています。転職は人生で10回も20回もすることではなく、1つの職場で働く時間は、人生のなかで占める割合としては長い営みです。そのため組織が「採ってあげるよ」というスタンスをとるのではなく、対等な関係でいたいと思って、できるだけ応募者側の目線に立つことを大事にしています


画像:Photo AC

採用において大事にしている「違和感」

—三友さんがLFAの採用において大事にしていることを教えて下さい。

評価で迷ったとき、基本的には直感的な違和感を信じますLFAでは最終面接までに複数回面接を行うのですが、最終面接までは「落とす」面接、最終面接は「受からせる」面接だと考えています。最終面接までのふるいが緩いと、最終面接で受かることができないため、最終面接までのふるいをしっかりと機能させることが重要になります。そのため、言語化されている採用基準と自分の中の違和感をよりどころにしながら、応募してくださった方々に向き合っています。

一方で「迷ったら次の面接に進める」ということも大事にしています。自分の中の違和感が決定的ではない場合は、他の人からの評価も含めた方が組織の判断として適切であると考えています。

直観的な違和感というのは言語化がなかなか難しいのですが、「その人が自分以外の職員や子どもたちと喋っているイメージが湧くかどうか」が鍵であると考えています。いわゆる「カルチャーフィット」に近いでしょう。例えば、面接の受け答えは上手だったけど、どこか台本を読んでいるような印象を受けて、子どもとどう話すかのイメージがつかないという人は、組織全体の文化や現場への適応がうまくいかない可能性が高いと考えています。

この感覚を常に持つために、月に1回は必ずLFAの支援現場に行くようにしています普段は支援現場から離れたオフィスで働いているので、現場で子どもと職員の中で起きている日常的な会話ややりとりの様子をきちんと理解していたいと思っています。もちろん現場で起きていること全てを理解するのは難しいですが、「理解したい」という気持ちを忘れないことを大事にしています。現場にいる子どもの名前と顔を一致できるくらい理解しようとしていると、採用時にも「この人は拠点の雰囲気に合うだろうか?」「あの子とどんな話をするのだろうか?」等、具体的にイメージしやすくなります。

これから強化していきたい取り組み

—今後採用について強化したいと思っていることがあれば、教えてください。

これから強化したいことはたくさんあるのですが、特に採用候補になる人との接点の増加について取り組みたいと思っています。そのために、リファーラル(団体内での紹介・推薦)制度も強化して、採用の可能性を広げていきたいと考えています。また、ソーシャルセクターの方々との横のつながりを作ることや、ビジネスセクターにいながらも社会貢献をしたい人たちにいかに出会うかも考えています。たとえ今すぐ転職は難しくとも、将来その人が転職を考えた時に、ふとLFAの存在を思い出してもらえるような組織にしていきたいです。

まとめ

今回は、認定特定非営利活動法人Learning for All で人事を務める三友さんに、採用における悩みと、その対応策について伺いました。ポイントを以下にまとめます。

  • LFAでは、より多くの人に出会うための採用説明会や、応募者目線での採用フローの整備を実施した。
  • 候補者との対等な関係を意識し、相手がキャリアに向き合いながら安心して転職活動に臨めるように、選考ごとにフィードバックを行っている。
  • 定期的に支援現場を訪れて、子どもたちや現場職員に接することで、採用の際に「その人(応募者)が拠点でどう働くか」「子どもたちとどう接するか」等のイメージを持ちながら採用活動を進めることができる

※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません

 

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