【これって支援疲れ?】子どもと向き合うことに疲れたときにできること

「支援疲れ」という言葉をご存知ですか?「子どもと頑張って向き合っているけれど、辛い」といった気持ちを抱えている方も中にはいるかと思います。今回は、心理士の久保田さんに、「支援疲れ」とはどのような状態なのか、「支援疲れ」に陥ったときに本人と周囲ができることとはどのようなことなのかについて伺いました。

プロフィール:久保田 健司
臨床心理士。アライアント国際大学カリフォルニア臨床心理大学院日本プログラム修了。医療と福祉支援が必要な生活困難者を支援する仕組みづくり・地域づくりをめざすハウジングファースト東京プロジェクトに参画。精神科クリニック、精神科訪問看護、大学の学生相談、不登校支援NPOでの保護者相談などに従事。個人オフィスにて開業カウンセラーとして活動中。著作は「マンガでやさしくわかるオープンダイアローグ」(日本能率協会マネジメントセンター)。
最近ハマっていること:自転車で様々な場所へ出かけること

「支援疲れ」とは?

━━子どもと関わることに疲れた状況、いわゆる「支援疲れ」とはどんな様子を指すのでしょうか?

ここ最近出てきた言葉だと思います。
多面的な人間の顔の、ある一つの側面が強くなってしまうことで疲れてしまう。それに伴って、支援をする仕事を休みたいけれど、休むことができない状態とさせてください。

学校の先生を例にあげてご説明させていただきます。学校の先生の役割は「教える」ことですが、その他にも「子どもの様子を伺う・声かけをする」などの関わりを持つ先生が多いと思います。
これは「教えるという先生としての役割」だけではなく、「個人としても子どもと向き合っている」のであって、職場での自分は必ず「職業の役割」としての一面以外に「自分個人としての側面」も持っています。
支援者も同様に、「支援者としての役割」の他に「自分個人としての側面」もあり、多面的なはずなのですが、「支援者としての役割」が強くなりすぎると、「何かを与えよう、子どもたちを良くしよう」と強く思いすぎて、疲れてしまう要因になるでしょう。

支援疲れを感じたらできること

━━私たちが支援に疲れたときにできることとはありますか?

まずは、「眠れない」、「仕事のことばかり考えてしまう」、「仕事に行きたくないと感じる」など、疲れの自覚をすることが大切です。この疲れの自覚をするためにも、何よりも眠ることが大切だと考えています。食べる・寝る・遊ぶという基本的なことをしているか思い返してください。
疲れている自覚が持てた場合は、個々人に合ったストレス解消をすることです。自分が休むために何が必要かは、人それぞれです。過去を振り返ると、自分のストレス解消方法は自分自身が一番知っているものです。ストレスをためていないか自分の状態を定期的に振り返りながら、疲れを慢性的なものにしないことが大切です。
きちんと睡眠時間を確保しつつ、おいしいものを食べる、自然に触れる、友達と他愛無いお喋りをするなど、各自に合った自分のストレス解消法を実行することを意識してください。

━━支援疲れを感じている人に対して、周囲ができることはありますか?

「弱さの情報開示」と言うのですが、自分自身の弱みや辛さを開示できる環境を作ることが大切だと思います。雑談などを通して、「この人になら弱い気持ちを伝えても大丈夫」と、受け入れ合う雰囲気を組織の中で持っているかどうかで、スタッフの安心感も変わると考えています。

例えば、雑談の中で「疲れすぎて、休日はずっとゲームをしていた」「えー!それどんなゲームなの?」など、疲れを面白がりながら聞き合う雰囲気ができていると、それぞれが弱さの情報開示をしやすくなるかもしれません。また、「大丈夫?疲れているのなら、帰ってもいいからね!」などの配慮の声かけをすることも大切です。

常に振り返り、本当に必要な支援を考えること

━━なるほど。弱さの情報開示ができる空間を作ること、そのための声かけなどは周囲が意識しなければならないですね。

そうですね。ここまで「支援疲れ」についてお話させていただきましたが、前提として、支援量自体が持続可能なものになっているかという確認は必要です。「疲れ」というのは、提供できる量(リソース)より提供しなければならない量(負荷)が多くなったときにも発生します。
この前提を考慮せずに話をすると「自分の努力が足りないのだ」となってしまうので、疲れたときにはまず「支援量として適正なのか?」という観点も忘れないでいただきたいと思っています。

「支援」と言うと、「与える、与えられる」の関係になりがちです。そのため、支援者には、真面目に頑張る支援者でいなければならないプレッシャーもあると思います。
個人的には、時には怠惰な、人間らしい支援者がいても良いと思っています。

本当に辛い時には、ただ側にいて寄り添うだけで救われることもあります。「この子の良い人生のためにもっと勉強ができるようにしてあげたい」など、相手のためになる支援も必要ですが、寄り添うことだけでも人は救われるのだから、いつも一生懸命にならなくて良いよ、とお伝えしたいです。

まとめ

「支援疲れ」について、久保田さんに心理士の観点からご意見をいただきました。ポイントを下記にまとめます。

・支援疲れとは、多面的な人間の顔の、ある一つの側面が強くなってしまうことに起因することが多い
・支援疲れに自ら気づくことが大切。そのうえで自分なりのストレス解消方法を実行すること
・周囲のスタッフにできることは弱さの情報開示をし合う関係性や職場環境を作ること
・自分の努力不足と思わずに、「支援量として適切なのか?」を考えることも大切。時には頑張りすぎず、寄り添う支援だけで救われることも念頭に置く

久保田さんからは、「今回お話したことは正解があるものではなく、個々の支援現場によって様々なため、あくまで概念的な内容として、何かヒントがあれば活用してください」とお話いただきました。

久保田さん、ありがとうございました!

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※本記事の内容は専門家個人の見解であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません

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