【後編】多様な意見・価値観を歓迎しながら、共に活動していくための「共有ビジョン」のつくり方ー「認知の4点セット」と「対話」によるチームづくり

多様な年齢、経歴、バックグラウンドを持つ人材が集まり、それぞれのスタッフが多様な価値観を持ちうる子ども支援の現場。前編では、「認知の4点セット」と「対話」によるチームづくりについて見てきました。

後編では、そのような多様な価値観を持つ人々が、同じ方向を向き、より良い子ども支援拠点づくりに主体的に取り組んでいくための「共有ビジョン(共通の目的・目標)」のつくり方についてまとめていきます。

よりチーム一丸となって取り組む拠点づくりについてご興味のある方は、ぜひご一読ください!

前編はこちら:

【前編】スタッフ同士の意見のすれ違いにどう対応する?「認知の4点セット」と「対話」によるチームづくり
【前編】スタッフ同士の意見のすれ違いにどう対応する?「認知の4点セット」と「対話」によるチームづくり

※この記事は一般社団法人21世紀学び研究所(https://learning-21.org/)のOS21メソッドを基に作成されています。

共有ビジョンは、「チームのビジョン」であり「個人のビジョン」でもある

共有ビジョンの説明に入る前に、ミッション・ビジョン・バリューについて簡単に説明をします。組織運営におけるミッションとは、「私たちはなんのために存在するのか」、ビジョンは「私たちは何を実現したいのか」、そしてバリューは「私たちは何を大切にしたいのか」を言語化したものです。ミッション・ビジョン・バリューを明確にすることは、自分たちが何を目指して活動するのかを明確にすることであり、これは組織内で話し合いを行ったり、プロジェクトを遂行するときの指針にもなります。

このような組織の方針は、ともすれば「上から降りてくるもの」と捉えられがちですが、それでは全員がその方針に納得感を持ち、行動していくことは難しいでしょう。誰か一人が決めたビジョンにチームが従うのではなく、各個人の持つビジョンを反映させ、全員が心からそれを果たしたいと思うビジョンを作り上げることが、チーム内での建設的な意見交換や、個人の主体的な行動を促すことに繋がります。

このような、チーム全体のビジョン(=チームが何を実現したいか)であり、かつ各自が主体的に行動するための個人のビジョン(=個人が何を実現したいか)にも繋がるビジョンのことを、「共有ビジョン」と呼びます。共有ビジョンでは、チームのビジョンと個人のビジョンが繋がっている状態を目指します。


画像:OS21参考・LFA作成

それではここから、共有ビジョン策定のために必要なプロセスを見ていきましょう。

共有ビジョンの策定

共有ビジョンの策定のためには、大きく分けて2つのプロセスが必要となります。ひとつめは、個人の価値観を振り返り、個人のビジョン(何を実現したいのか)を明確にすること、ふたつ目は、その個人のビジョンを持ち寄り、対話を通してチーム全員が納得のできるビジョンを形成することです。

個人ビジョンの形成

自分の大切にしている価値観=動機の源を知る

まず初めに、個人のビジョンを明確にするためには、日頃から自分が大切にしている価値観に目を向ける必要があります。なぜなら、あなたの大切にしている価値観は、あなたの「動機の源」、つまりあなたがやりがいを感じる理由に繋がるからです。

ここで、自分の価値観を振り返るためのワークをご紹介します。


画像:OS21参考・LFA作成

上のスライドのリストから、自分にとって大切なキーワードを5つ選んでみてください。選び終わったら、それぞれのキーワード(=あなたの意見)について、以下の3点を考えてみましょう。

  • 経験:なぜそのキーワードがあなたにとって大切と感じるのか、過去の経験から思い出してみてください。
  • 感情:その経験には、どのような感情が紐づいているでしょうか?
  • 価値観:そこから見えてくる、あなたが大切にしている価値観はなんでしょうか?

例をとって見てみましょう。


画像:OS21参考・LFA作成

こちらの例では、「変化と多様性」というキーワード(意見)を選択しています。

このキーワードを選択した背景には、この人が子どもの学習支援に従事していた際に、自分の悩みに対して周囲から多様な意見を得ることで、解決の糸口を見いだすことができた経験があります。そして、この人はこの経験に「喜び」「驚き」を感じ、「多様な経験から学ぶ」「自分の行動を変える挑戦をし続ける」という価値観を大切にするようになったことが見えてきます。

ここで、「価値観」の欄に自分が書いたことに注目をしてみましょう。前出の通り、あなたの大切にしている「価値観」は、あなたがやりがいを感じ、あなたの行動を促す動機の源になります。例えば、同じ「仲間と一緒にプロジェクトを成功させて、嬉しい」という状況でも、なぜ嬉しいと感じているかは個人の価値観によって異なります。動機の源は人によって様々です。


画像:OS21参考・LFA作成

自分の意見に対して、経験・感情・価値観を振り返ることは、「なぜ、自分はそう感じるのか」を突き詰めていくことです。日々の仕事や生活の中で自分が満たされていると感じる時、またはその逆にネガティブな感情を感じる時、「なぜそう感じるのか」を、ぜひ自分自身に尋ねてみてください。

特にネガティブな感情は、自分の動機の源を知る絶好の機会です。現状に対して負の感情を抱くからこそ、「何かを変えたい」「より良くしたい」というビジョンが生まれるのです。ぜひ、小さなものでも日常にある引っかかりを深掘りしてみることを意識してみてください。

個人のビジョンを明確にする

次に、個人のビジョンを明確にしていくプロセスです。自分自身が現在取り組んでいることに対して、以下の問いを埋めることで、ビジョンを語る準備をしてみましょう。

  • あなたは何を実現したいですか(ビジョン=ありたい姿に対する「意見」)
  • あなたにとってなぜそれが大切なのですか(価値観)
  • それに関連する過去の経験は何ですか。その時に味わった感情を合わせて語ってください。(経験・感情)
  • ビジョンの実現のために、あなたは同じチームのメンバーに何を期待しますか。

自分自身の価値観、つまり動機の源と繋がるビジョンを持っているからこそ、人は現状とビジョンの差を埋めるために自ら学んだり、主体的に行動をすることができるようになります。ぜひ、あなたが今取り組んでいることが、あなたが大切にしている価値観とどのように繋がっているのかを考えてみてください。

どんな小さなことでもビジョンにできる

なかなか自分のビジョン(=実現したいこと)を見つけることが難しいと考える方もいるかもしれません。しかし、ビジョンは壮大なものである必要はありません。

例えば、チームミーティングで意見を言いづらい雰囲気がある、みんなが本音で話せていないと感じるのであれば、「チーム全員が安心して本音で話せるチームになる」というビジョンを掲げ、現状を変えるために行動をすることができます。大きなビジョンも、このような小さなビジョンの積み重ねで達成されていきます。ぜひ、日頃自分が感じる小さな違和感やネガティブな感情を見逃さず、自分のビジョン・ありたい姿について考えてみてください。


画像:OS21参考・LFA作成

個人のビジョンを持ち寄って、みんなが納得できる「共有ビジョン」をつくる

個人のビジョンを明確にすることができたら、次はチーム全体での共有ビジョンの形成です。以下のような問いに対する答えを、チーム全員で形成していきます。

  • このチームは、何を実現したいのか(ビジョン)
  • このチームにとって、なぜそれを実現することが大切なのか(価値観)
  • それを実現していくために、このチームは何を大切にして行動していくのか

冒頭で説明した通り、共有ビジョンは「チームのビジョン」であり、個人が主体的に行動するための「個人のビジョン」です。一人一人がやりがいを持ち、主体的に行動していくためには、チームのビジョンと、個人のビジョンが繋がっている状態が必要です。チーム全体のビジョンや価値観に、チームの一人一人の動機の源が結びつけられている状態を目指しながら進められると良いでしょう。

共有ビジョンは、「対話」に基づいて形成される

そのためにも、共有ビジョンは「対話」に基づいて形成される必要があります。前編で説明した、「認知の4点セットで伝えて、共感を生む」「他者の意見を、自分の経験に当てはめて聴かない」などの対話のポイントを大切にしながら、お互いの持つ価値観を尊重した対話を進められると良いでしょう。

対話を通じて、個人のビジョンを更新する

こうした対話の過程の中で、自分の持っている価値観が、チームのビジョンへの障壁となると感じることもあるかも知れません。

その場合、一度「いやだ」というようなネガティブな感情を保留し、障壁となっている自分の価値観を手放した先にはどのような世界があるのかを想像してみると良いでしょう。そうすることで、これまで見えていなかった新たな視点やポジティブな側面を発見することもあるはずです。場合によっては、自分がこれまで持っていた価値観を更新してみる経験に繋がるかもしれません。

ビジョンは、更新され続けるもの

最後に、ビジョンは一度作ったら終わりではなく、状況や価値観の変化によって更新されていくものです。

ぜひ、自分の中で何か引っかかることがあれば、その都度認知の4点セットで振り返ることを習慣にしてみてください。また、人との対話を通して自分の価値観を見直したり、更新していくという姿勢も大切です。そうすることで、あなたのビジョンは、よりあなたが真に実現したいことに近づいていくはずです。

そして、チームにおいても、定期的な対話を通して、それぞれのビジョンや価値観の変化を共有してみてください。それが今のチームの状況や、今いるチームメンバーにとって最適なビジョンの更新へと繋がり、対話と更新を重ねることで、全員が心から実現したいと思えるビジョンの策定に繋がっていくはずです。


画像:OS21参考・LFA作成

まとめ

今回は、多様な意見・価値観を歓迎しながら、共にチームとして活動していくための「共有ビジョン」のつくり方について見てきました。ポイントを以下にまとめます。

  • 共有ビジョンでは、チームのビジョンと個人のビジョンが繋がっている状態を目指す。
  • 共有ビジョンの策定においては、個人のビジョンを形成していくことと、その個人のビジョンを持ち寄り、対話を通して共有ビジョンを策定していくというプロセスが必要になる。
  • 個人のビジョンも、共有ビジョンも、一度作ったら終わりではなく対話と更新を重ねていくことで、より全員が実現したいビジョンに近づくことができる。

※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません

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