セルフケアはなぜ大切?ー支援者自身が余裕を持つための考え方と行動ー

子ども支援の現場は対人支援の現場だからこそ、様々な出来事から喜びや悲しさ、悔しさを感じることが多いと思います。同時に、感情が揺れ動くことが多いからこそ、何となく心が疲れてしまうことも少なくないのではないでしょうか。

今回は、インクルージョン研究者の野口 晃菜氏は、「子ども支援の現場に携わる人自身が余裕を持つことが大切である」と話してくださいました。是非ご覧ください!

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【これって支援疲れ?】子どもと向き合うことに疲れたときにできること
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プロフィール:野口 晃菜
インクルージョン研究者/博士(障害科学)
小学校6年生の時にアメリカへ渡り、障害児教育に関心を持つ。高校卒業時に日本へ帰国、筑波大学にて多様な子どもが共に学ぶインクルーシブ教育について研究。その後小学校講師を経て、現在障害のある方の教育と就労支援に取り組む株式会社LITALICOにてLITALICO研究所所長として、一人ひとりに合わせた支援・教育の実現のための仕組みづくり、自治体・学校との共同研究、少年院・刑務所との連携などに取り組む。国士舘大学非常勤講師。経済産業省産業構造審議会「教育イノベーション委員会」委員、元文部科学省「新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議」委員、東京都生涯学習審議会委員、日本ポジティブ行動支援ネットワーク理事、日本LD学会国際委員など。著書・共著に「発達障害のある子どもと周囲の関係性を支援する」「インクルーシブ教育ってどんな教育?」などがある。

子ども支援の現場に携わる人に大切にしてほしいこと

━━支援現場で子どもと向き合う大人に大切にしてほしいことはありますか。

大人自身が幸せに働けていること、気持ちよく働けていることを大切にしてほしいです。子ども支援は心が揺れ動く大変な仕事だからこそ、セルフケアを大事にしてほしいと思っています。

自分らしく働けていなかったり、大事にしたいことが大事にできていない状態のまま働いていたりすると、子どもを抑圧し我慢させることに繋がってしまうと思います。子どもを追い詰めてしまう環境は、子どもにとってもよくないですよね。だからこそ、仕事のことを考えないでしっかり休む時間を作ったり、「No」と意思表明できる環境を用意したりしてほしいです。

また、スタッフの労働環境を改善できる役職にある方には、必要であれば労働環境の改善に取り組んでいただきたいとも思います。

そうして支援者の方には、幸せに生きている人として、子どものロールモデルになってほしいです。

 

気持ちよく働くために実践していること

━━野口さん自身が、気持ちよく働くために実際にしていることがあれば教えてください。

まずは、しっかりと休むことです。以前はあまり上手に休めないときもありましたが、今は夜になればきちんと寝て、3食ご飯を食べるようにしています。

とはいっても、支援現場で大変な出来事があると、休みのときでも仕事のことを考えてしまうこともあると思います。そのようなときには、考えながらではできないことをするようにしています。具体的に何であるかは人によって違うので、掃除という人もいれば料理という人もいると思います。私の場合は最近ピラティスをし始めましたね。

また、職場で自分が受けている抑圧があるのであれば、同じ組織の人や組織の外の人と話して連帯することが大事です。労働環境や社内の文化についておかしいと感じることがある場合も、近くの人と話したほうがいいと思います。私の場合、何かおかしいと思うことがあればチャットグループですぐに言うようにしています。

このように自分や職場の人が気持ちよく働けるようにすることは、よりよい支援のためにも必要なことです。子ども支援の分野に携わっている人には我慢しようとする人が少なくないように感じるので、自分をもっと甘やかしてほしいと思っています。

 

子ども支援に携わる人にオススメの書籍

━━子ども支援に携わっている人にオススメの書籍があれば教えてください。

野口:自分自身が支援者として余裕を持つという視点を得るためにオススメの本を紹介します。

こここ文庫『脱「いい子」のソーシャルワーク――反抑圧的な実践と理論


画像引用:こここ文庫『脱「いい子」のソーシャルワーク――反抑圧的な実践と理論

この本は、他者と自分の権利を大切にするために必要な視点を得られるとして紹介したことがある本です。人が抱える生きづらさを構造的に捉えるためのヒントになる1冊です。

まとめ

  • よりよい支援のためにも、大人自身が幸せに働けていること、気持ちよく働けていることを大切にする
  • 自分らしく働けていなかったり、大事にしたいことが大事にできていない状態のまま働いていたりすると、子どもを抑圧し我慢させることに繋がってしまう
  • 気持ちよく働くために野口さんが実践していること
    • しっかりと休む
    • 考えながらではできないことをする
    • 職場で自分が受けている抑圧があるのであれば、同じ組織の人や組織の外の人と話して連帯する

野口さんには、発達障害の子どもの支援についてもお伺いしています。具体の実践事例もわかりやすく教えていただいたので、気になる方はこちらからご覧ください。

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