2026年5月26日に、子どもに向き合う全国各地の支援者が学び/知見/意見をシェアするオンラインイベント「こども支援ナビMeetup」の第31回が開催されました。
今回は、今回は、あらかわ子ども応援ネットワーク(以下、AKON)代表であり、一般社団法人子ども村ホッとステーション(以下、子ども村ホッとステーション)代表理事でもある大村 みさ子氏をお迎えし、「子ども支援を“点”から“面”へ―あらかわ子ども応援ネットワークに学ぶ、居場所支援と地域連携の具体的実践 ―」というテーマで、一人ひとりの子どもへの支援から、地域全体で子どもを支えるネットワークづくりまで、実践を発展させてきた過程と思いをお話しいただきました。
イベントレポート第4回では、講演後の質疑応答の様子をお伝えします。
連載第1・2・3回はこちら:

プロフィール:大村 みさ子氏
元高校教師、区立小学校の支援員、区主催無料学習支援の会のスタッフを経験したことなどで、地域で子どもたちの支援をすることの必要性を強く感じ、地域の中の子どもたちの居場所として「子ども村ホッとステーション」を2014年に立ち上げた。
荒川区子育て支援課主催学習支援「学びサポート」コーディネイトスタッフ、荒川プレーパーク研究会代表を務める。
子ども村ホッとステーションの参加費用と運営体制
—参加者)助成金を活用しながら事業を続けてこられたとのことですが、各ステーションの参加費や食事代はどのようになっていますか。また、現在の運営体制について、有給スタッフは何名ほどいらっしゃるのでしょうか。あわせて、有給スタッフとボランティアのおおよその割合についても教えてください。
大村)参加費は、子どもが100円、大人(スタッフを含む)が200円としています。食事代の一部を利用者にもご負担いただく形ですが、経済的な事情から支払いが難しい家庭は、保護者や子ども本人と相談しながら柔軟に対応しています。
運営は一般社団法人として行っており、理事は3名、有給スタッフは約14名です。そのほか、活動ごとに謝金を支払う学生スタッフやボランティア、謝金のないボランティアなど、さまざまな立場の人がいます。
実際には、支援する側・される側という明確な線引きはなく、ボランティアとして参加している人の中にも支援を必要とする人がいます。そのため、誰もが地域の一員として参加することを大切にしていて、昼夜の活動を合わせると、1日に20〜30人ほどの大人が参加しています。
居場所づくりの原点
—参加者)現在、居場所の立ち上げを考えています。大村様が活動を立ち上げられた当初の思い出をお聞かせください。
大村)立ち上げ当初は、まず実行委員会を立ち上げ、地域のさまざまな人に声をかけながら仲間を集めました。当時、私は区の学習支援にも関わっていましたが、子どもや保護者に寄り添い、子どもの立場から考えなければ、本当に必要な支援にはならないと感じました。
また、一見すると何の問題もなく見える子どもの中にも、保護者の帰宅が夜遅く、毎日一人でお弁当を食べながら過ごしている子どもがいることを知りました。そうした子どもたちの暮らしに触れ、「進路や将来の方向性を考える大事な時期に、このままでいいのだろうか。」と強く感じたことが、活動の原点になっています。
活動にはさまざまな思いを持つ人が集まります。考え方や意見が違うことはあって当然で、それ自体は問題ではありません。大切なのは、皆が共有できる一つの軸を持つことです。私にとってその軸は、子どもの目線に立って考えることでした。
迷ったときは、子どものためにどちらがよいのかを基準に考えます。その視点を共有することで、立場や考え方が違っていても、お互いに納得しながら活動を進めることができるのではないでしょうか。
意見の違いを力に変えるネットワークづくり
—参加者)居場所スタッフとして働いています。市内の居場所がそれぞれ孤立をしており、代表の個性もそれぞれ強いため、なかなか団結が難しそうだと感じています。非営利団体の存続も難しいと思うのでそうなってしまうのも無理もないとは思いますが、どのように団結をされてネットワークを構築されたのでしょうか。
大村)実は、「団結している」という感覚はあまりありません。意見がぶつかることは日常的にありますし、些細なことでも大喧嘩になることがあります。それでも、意見が違うこと自体を悪いこととは思っていません。むしろ、そうした議論を重ねながら活動を続けています。
私が大切にしているのは、できるだけ参加団体の共通の意識、思いを広げ、定期的に話し合う場を設け、何か問題が起きたときだけではなく、普段から皆で話し合う機会をつくることです。その場で、現在決まっていることと、まだ決まっていないことを整理し、さまざまな意見をテーブルの上に出して、一緒に考えていきます。
また、新しいことを始めるときも、皆が同じ情報を共有できるよう心がけています。誰か一人だけが知っている状態をつくらず、考える過程そのものを皆で共有することが大切なのではないでしょうか。
もちろん、意見がまとまらず揉めることもあります。しかし、揉めることを恐れる必要はありません。特に、組織の中で役職や立場が固定化すると、意見が言いづらくなったり、特定の人の考えだけで進んでしまったりすることもあるかもしれません。だからこそ、違う意見を出し合う過程を大事にしながら、子どものために何が一番よいのかという視点で考え続けることが大切だと思います。
外から見えるのは、誰がどんな意見を言ったかではなく、団体としてどのような活動をしているかです。そのため、内部では十分に議論を重ね、多様な立場や世間の見方も取り入れながら、一番よい形をつくっていくことが重要ではないでしょうか。
誰でも来られる居場所と、一人ひとりへの支援
—参加者)子どもの居場所は誰でも来られる場であることが大事だと思う一方で、支援が必要なケースへの対応も増えていくと思うのですが、その両立の難しさを感じることはありますか。
大村)おっしゃる通り、支援が必要なケースは、活動を続けるほど増えていきます。最初は子どもへの支援から始まっても、その背景には兄弟や保護者、祖父母など家族全体の課題があり、支援の対象は自然と広がっていきますね。
その中で私が大事だと感じているのは、タイムリーに対応することです。困ったときに連絡が来たら、すぐに解決できなくても、まず「見たよ」と返事をしたり、一言でもやり取りをしたりすることが大切だと思っています。その積み重ねが、子どもや家族に安心感を与えるのではないでしょうか。
もちろん、実際には夜中に子どもから相談の連絡が来ることもあり、24時間対応に近い状態になることもあります。それは言い換えれば、私を必要としてくれている証でもあり、ありがたいことだと感じています。
ただし、支援を一人で抱え込むことはしません。子どもの状況は必ずスタッフ間で共有し、支援の進め方が適切かどうかを一緒に考えながら対応しています。そうした情報共有を積み重ねることで、スタッフ一人ひとりの認識や支援への温度感も少しずつ揃い、チームとして子どもを支えられるようになると感じています。
地域との繋がりを広げるためにできること
—参加者)地域連携についてどのように進めていけば良いかお伺いしたいです。現在は町会長さんなど、ごく限られた方との繋がりはあるのですが、そこから地域全体へと広げていくことに難しさを感じています。
大村)子ども食堂や居場所づくりは、地域の協力があって初めて成り立つものだと思っています。そのため、新しく活動を始める際には、地域全体が応援しているという雰囲気でスタートできるのが理想だと考えます。
地域によって、町会が活発なところもあれば、ボランティアや民生委員が中心となっているところもあり、状況はさまざまです。その中で、地域との繋がりを広げる第一歩として、町会長との連携はとても重要だと思います。
町会長は地域全体をよく把握しているだけでなく、学校や幼稚園とも繋がりを持っている場合もあります。そのため、まずは町会長を通じて学校や幼稚園と繋がり、さらにPTAへと関係を広げていくことが有効だと思います。地域の繋がりを一つひとつ広げていくことで、地域に根差した居場所づくりになるのではないでしょうか。
行政との連携は「知ってもらうこと」から始まる
—参加者)行政・地域との連携は長年課題として抱えており、少しずつ地域に浸透しつつある状況です。行政視点での民間事業との協働の取り組み例やポイントを教えてください。
行政との連携で最も大切にしてきたのは、まず活動を知ってもらうことです。活動を始めた頃は、行政の担当部署を訪ね、「こういう活動をしています」と直接話をしたり、活動報告を継続的に送ったりしていました。学校の校長会などにも足を運び、すぐに反応がなくても、活動を知ってもらうことを積み重ねてきました。そうした継続の中で、少しずつ活動への理解が深まり、信頼関係に繋がっていったと感じています。
また、行政との関係は、特定の部署だけではなく、一人ひとりの担当者との繋がりを大切にしています。行政職員は異動が多いため、部署ではなく人との関係を築いておくことで、新しい部署でも相談しやすい関係が続いていくからです。
その際に意識しているのは、何かしてほしいとお願いするのではなく、まずは活動を知ってもらうことです。まずは活動を知り、関心を持っていただくことで、その後に相談し合える関係や協働に繋がると思います。
さらに、行政との関係は一方的に支援を受けるものではなく、ギブアンドテイクの関係であることも意識しています。行政が困っていることに対して民間だからこそできることを担い、お互いにできることを持ち寄ることで、よりよい協働につながるのではないでしょうか。
どこまでも、子どもと向き合いたい
—参加者)子どもたち、特に高校生と関わる中で、どこまで子どもの言動を許容し、どこから注意していますか。何を基準に線引きをされているのか教えていただきたいです。
大村)子どもとの関わりに、明確な線引きはありません。同じ子どもでも、泣いたり怒ったり甘えてきたりと、毎日様子は変わります。特に高校生は悩みの多い時期だからこそ、その感情を受け止め、ぶつかる相手になることも必要だと感じています。
その中で大切にしているのは、「裏切らない大人」でいることです。そのため、どんな子どもでも大事に思っていることを伝え続けたいと思っています。やはり人と人との関係なので、合う日もあれば合わない日もあります。子どもから強い言葉を向けられることもありますが、それは本音をぶつけられる関係になった証でもあると考えています。
なので、子どもとぶつかることは日常的にありますが、重要なのは関係を途切れさせずに関わり続けることだと考えています。もちろん、子どもに依存させるのではなく、子ども達が自分で考え、選択する力を育むことも大事です。
子ども達が自分で決めて失敗したときに、「大丈夫だよ」と言える環境があれば、その経験は次の挑戦や成長に繋がることでしょう。
したがって、「どこまで付き合うのか」と聞かれたら、私は「どこまでも」と答えます。長く関わり続ける中で、子どもたちはやがて「荷物を持ちましょうか」「大丈夫ですか」と周囲を気遣うようになります。そうした成長を見届けられることが、この活動の大きな喜びです。
登壇者よりご挨拶
今日は夜遅くまでお話を聞いていただき、ありがとうございました。
最後にお伝えしたいのは、この活動を通して、私自身が子どもたちに支えられてきたということです。家で活動の出来事を話すと、「たくさんの人に遊んでもらえていいね」とよく言われます。本当にその通りだなと思っています。
赤の他人でありながら子どもの成長を見守り、一緒に年を重ねられること、そして子どもたちに必要とされることが、私にとって生きる意味になっています。いつか私がいなくなったとしても、私との関わりが子どもたちの中に少しでも残り、生き続けてくれたら、それほど嬉しいことはありません。
子どもたちと一緒に歩めるこの場所にいられること自体が、私にとって大きな幸せです。子どもたちからさまざまな課題を投げかけられることもありますが、それを一緒に少しずつ乗り越え、生きている実感を得ることが生きる力になっています。
子どもの支援には、大変なことや悩むことも数多くあると思います。それでも、子どもたちと時間を重ね、ともに成長していく実感を持てることは、この活動だからこそ得られる喜びです。人と関わりながら生きることは、とても幸せなことであり、その中で自分が生きる意味も見えてくるのだと感じています。
だからこそ、子どもたちとともに歩み、一緒に成長していく実感を、ぜひ多くの方にも味わっていただけたら嬉しく思います。苦労することもたくさんあると思いますが、ときにはそんな視点を思い出していただけたら幸いです。
ありがとうございました。
まとめ
今回は、大村さんに、活動を始めた当初の思い出から、行政との連携のコツまで、幅広く伺いました。ポイントを以下にまとめます。
- 子ども村ホッとステーションは、支援する側・される側という明確な線引きはなく、全員が地域の一員として参加することを重視している。
- 意見が異なることを恐れずに、しっかりと話し合うことでより良い支援となる。そのために、一部の人だけで話を進めるのではなく、全員に共有することが重要である。
- 行政と連携する際は、まず活動内容を知ってもらうことが大事。また、要求するだけではなく、民間ができることを提供することも協働する中で大切である。
- どこまでも子どもたちと向き合い、その成長を追うのが子どもの支援の醍醐味だと感じる。
※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません
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