【連載第1回】子ども支援を“点”から“面”へ―あらかわ子ども応援ネットワークに学ぶ、居場所支援と地域連携の具体的実践 ― (こども支援ナビ Meetup vol.31)

投稿日:2026/09/09

2026年5月26日に、子どもに向き合う全国各地の支援者が学び/知見/意見をシェアするオンラインイベント「こども支援ナビMeetup」の第31回が開催されました。

今回は、今回は、あらかわ子ども応援ネットワーク(以下、AKON)代表であり、一般社団法人子ども村ホッとステーション(以下、子ども村ホッとステーション)代表理事でもある大村 みさ子氏をお迎えし、「子ども支援を“点”から“面”へ―あらかわ子ども応援ネットワークに学ぶ、居場所支援と地域連携の具体的実践 ―」というテーマで、一人ひとりの子どもへの支援から、地域全体で子どもを支えるネットワークづくりまで、実践を発展させてきた過程と思いをお話しいただきました。

イベントレポート第1回では、子どもたちの人生における重要な節目である思春期について、そして大村氏が提唱する「ソーシャルファミリー」という考え方や、子ども村ホッとステーションの概要を教えていただきます。

プロフィール:大村 みさ子氏
元高校教師、区立小学校の支援員、区主催無料学習支援の会のスタッフを経験したことなどで、地域で子どもたちの支援をすることの必要性を強く感じ、地域の中の子どもたちの居場所として「子ども村ホッとステーション」を2014年に立ち上げた。

荒川区子育て支援課主催学習支援「学びサポート」コーディネイトスタッフ、荒川プレーパーク研究会代表を務める。

 

思春期は、自立への大切な節目

こんにちは。本日はお仕事終わりのお忙しい時間にもかかわらず、お集まりいただきありがとうございます。私たちの取り組みについてお話しできる機会をいただき、大変嬉しく思います。

私は東京都荒川区で子どもの居場所づくりに取り組んでいて、本日は「子ども支援を“点”から“面”へ」というテーマについてお話ししたいと思います。

私たちの活動には、小学校低学年から高校生、そして大学生まで、幅広い年代の子どもたちが参加しています。あえて年齢で区切りを設けておらず、高校卒業後も定時制高校を経て社会人になった子や、大学へ進学した子が顔を見せてくれることもあります。その中でも、多くの子どもたちが思春期という大きな節目を私たちと一緒に過ごしています。

子どもたちは思春期を迎える中で、高校受験という大きな節目を経験します。荒川区では、都立高校へ進学する子どもが多く、都立高校への進学を前提とした進路を考える家庭も少なくありません。そのため、思春期に高校受験を経験することは子どもたちにとって大きな出来事であり、私たちの支援においても重要な節目の一つとなっています。

思春期は、子どもたちが心身ともに大きく成長する時期です。それまで素直に表現していた喜びや悲しみ、怒りといった感情に加え、「自分はどのような人間なのか」と自分自身について考える機会が増えていきます。また、人との関わりの中で、自分の気持ちと向き合い、それらを少しずつコントロールする力も育まれます。こうした力は、周囲との関係を築き、社会の中で生活していくための大切な土台になると考えられます。

さらに、今までは深く考えずに通り過ぎてきたさまざまな出来事について、自分で考え、選択し、決定する場面が増えていきます。進路や友人関係、将来のことなど、一つひとつについて自分なりに情報を集め、悩みながら決断していくことになります。

自分で決めたことがうまくいくこともありますが、実際には思いどおりにいかないことも多いと思います。恋愛からテストまで、いろいろな場面で失敗する経験もあるでしょう。しかし、その経験を通して、「失敗しても人生は終わりではない」「もう一度やり直すことができる」という感覚を持てることがとても大切だと感じています。

子どもたちに身につけてほしいと願っているのは、失敗をしない力ではありません。困難に直面したときに自分で考え、もう一度人生を立て直す力を育んでほしいと考えています。困難のない人生を送ることは不可能だと思うので、困難が起きた際にそのたび立て直していく経験を重ねることが、将来の自立に繋がるのではないでしょうか。

また、子どもが困ったときに「助けて」と言える人や環境を持っているかどうかは、その後の生活に大きく影響すると感じています。「すべて自分で何とかしなければならない」という思いを抱えたまま社会に出ると、誰にも頼ることができず、困難を抱え込んで人生を立て直せなくなる子どももいます。だからこそ、思春期に人や環境を頼る経験をすることが、その後の自立にも重要だと考えています。


画像:一般社団法人子ども村ホッとステーション

「ソーシャルファミリー」という血縁を超えた家族のかたち

私たちは、「ソーシャルファミリー」という考えを大事にしています。それは、子どもたちと長い時間をともに過ごしていることで、結果として関係性が家族のようなものになることを意味しています。

もちろん、親ではありませんし、血縁関係もありません。しかし、だからこそ適度な距離を保ちながら、子どもを追い詰めることなく、長く寄り添い続けることができると考えています。私たちはよく「子どもの体温が伝わる距離」と表現しますが、子どもの怒りや悲しみ、喜びを感じ取れるくらい近くで長く関係を続けていくことがソーシャルファミリーだと思います。

長く関わっていると、子どもともスタッフとも意見がぶつかることがあります。特に思春期の子どもは大人の話に耳を傾けず、「うるさい」「あっちへ行って」と距離を置こうとすることがあります。実際、私も子どもから「大村さんのことは一度は嫌いになるんだよ」と言われます。

しかし、そのような時期を経ても、お互いのことを考えたり、少し距離を置いたりすることで、結局また同じ場所に集まる仲間になります。つまり、衝突はお互いをより深く理解し、信頼関係を育んでいくための大切な過程だと感じます。

そうした時期をともに乗り越えながら、「子どもの体温が伝わる距離」で長く関わり続けることで、少しずつ家族のような関係が育まれていくと考えます。この考え方は、子どもだけでなく、スタッフや地域の関係機関、行政など、子どもを支える人や組織にも共通すると思っています。長く関わり、喜びや悲しみを分かち合うことで、世代を超えて支え合う家族のような関係が築かれていくのではないでしょうか。


画像:一般社団法人子ども村ホッとステーション

荒川区の「子どもの居場所づくり事業」について

荒川区の子どもの居場所支援には、他の自治体とは少し異なる特徴があります。

その背景には、2009年に荒川区自治総合研究所が設立されたことがあります。この研究所は、「区民の幸せのために行政は何ができるのか」という視点から研究を行う機関で、最初の研究テーマとして子どもの貧困や社会的排除が取り上げられました。

当時は、「日本に子どもの貧困はない」という認識も少なくありませんでした。しかし、2011年に公表された報告書では、「さまざまな要因が重なることで、どの子どもも貧困や社会的排除の状態に陥る可能性がある」ことが示されました。この考え方が区役所内に共有され、子どもの貧困への理解が広がったことで、民間団体による居場所づくりや支援活動に取り組みやすい土壌ができたと感じています。

また、荒川区では「子どもの居場所づくり事業」とは、学習支援・食支援・生活支援(交流の場の提供)など、子どもに関わる支援を包括的に行っている場と位置付けています。そのため、体験やアウトリーチなど、生活も含めた支援が「居場所」では重視されています(注1)。

(注1)ちなみに、「子ども食堂」は食支援と交流の場の提供として位置付けられている(子ども食堂事業)。

子ども村ホッとステーションについて

「子ども村ホッとステーション」は、2014年に立ち上げました。それ以前は高校教員や学校支援員、自宅での学習支援などを通して子どもたちと関わってきましたが、地域の中で民間の立場から子どもを継続的に支える場が必要ではないかと考え、活動を始めました。

その後、助成金に合わせて拠点を移し、支援内容も少しずつ広げてきました。その過程で、活動の方向性の違いからスタッフが離れるという出来事もありました。けれども、改めて「子どもの目線に立てる人」を大切にスタッフを募ったことで、現在の活動を支えるメンバーが集まり、活動の基盤を築くことができました。

「子どもの目線に立つ」という理念が最も表れたのが、新型コロナウイルス感染症の流行時です。一時的に活動を休止した期間はあったものの、それ以外は感染対策を徹底しながら活動を続けました。スタッフは誰一人として活動の中止を求めず、常に子どもたちの置かれた状況や居場所の必要性を第一に考え続けてくれたことを、とても心強く感じています。

というのも、私たちが関わる子どもの中には、家庭が安心できる居場所とは限らない子どももいるからです。保護者は仕事で家を空け、子どもは一人で留守番したり、狭い住環境の中で家族が長い時間を過ごしたりすることで、家庭内のストレスが高まるケースもありました。だからこそ、感染への配慮は欠かせない一方で、子どもたちが安心して過ごせる居場所をなくさないことも同じくらい重要だと考えました。

スタッフ全員が「子どもの目線で考える」という姿勢は、現在の活動の大きな軸になっていると思います。

まとめ

今回は、大村さんに、思春期やソーシャルファミリー、そして荒川区と子ども村ホッとステーションの居場所づくりについて伺いました。ポイントを以下にまとめます。

  • 思春期は、自分がどのような人間なのか、そしてどのような人間になりたいのかを考え、選択していく大切な時期である。
  • 子どもたちには、失敗しない人生ではなく、失敗しても人生を立て直せる力を身につけてほしいと考えている。そのためには、子どもが「助けて」と言える環境があることが重要である。
  • 子ども村ホッとステーションは、地域の中で民間の立場から子どもを継続的に支える場が必要だという考えから始まった。「子どもの目線に立てる人」という理念を大切にしながら活動している。

第2回では、子ども村ホッとステーションの活動内容と、支援で重視している「生活者の目線」についてお伝えします。

※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません

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