【後編】学校・教育事務所等と密に連携した子どもの居場所づくり 〜社会福祉法人 玉医会の事例〜

【後編】学校・教育事務所等と密に連携した子どもの居場所づくり 〜社会福祉法人 玉医会の事例〜

 

社会福祉法人 玉医会が運営するFinding Rでは、困りごとを抱えている地域の子どもたちをサポートする、子ども第3の居場所 でぃんぐるを運営しています。

後編では、でぃんぐるが地域の学校や教育事務所などと連携してどのように居場所を作ったのか、地域とどのような連携を実施しているのかを伺います。

関連記事はこちら:

早期から切れ目のない支援を子どもに届けるために~地域ネットワークづくりの始め方~
早期から切れ目のない支援を子どもに届けるために~地域ネットワークづくりの始め方~
地域と協働した包括的な子ども支援のために 〜社会資源との繋がり方編①〜
地域と協働した包括的な子ども支援のために 〜社会資源との繋がり方編①〜
地域と協働した包括的な子ども支援のために 〜社会資源との繋がり方編②〜
地域と協働した包括的な子ども支援のために 〜社会資源との繋がり方編②〜
子どものニーズを拾い、地域に繋げる ーNPO法人Learning for Allの事例ー
子どものニーズを拾い、地域に繋げる ーNPO法人Learning for Allの事例ー

金和 史岐子 氏
熊本県職員として、児童福祉・障害福祉・生活保護・地域福祉等を担当した後、1999年4月に社会福祉法人玉医会に転職。身体障害者療護施設(当時)たまきな荘施設長となる。現在、法人の統括施設長として、障害児者事業・公益事業・児童事業に関わる。スクールソーシャルワーカーのスーパーバイザーや熊本県いじめ対策審議会委員等の経験あり。

 

 

 

秋澤 徹 氏 
熊本県職員として地域福祉・NPO・教職人事・土木行政等を担当した後、2017年4月に社会福祉法人玉医会に地域福祉交流館FindingR建設のため転職。社会福祉法人玉医会総務部長となる。現在、法人の総務部長兼保育園長として、障害児事業・公益事業・児童事業に関わる。

 

 

 

 奥薗 俊輔 氏
熊本県教育委員会スクールソーシャルワーカーとして、県北地域を担当した後、2018年4月に社会福祉法人玉医会に子どもの第3の場でぃんぐる立ち上げのため転職。現在、社会福祉法人玉医会総務部において子どもの第3の場でぃんぐるの相談員として、公益事業・児童事業に関わる。

 

でぃんぐるの現状と始まり

—ここからは、子どもの居場所であるでぃんぐるについて詳しく教えていただければと思います。「でぃんぐる(DingЯ)」という名前にはどういう意味があるのでしょうか。

奥薗さん:先ほど、Finding Rの「R」は私たちが求めていきたいRespect、leading Roleなどの頭文字であることをお伝えしました。しかし、同時に子どもたちには「何かを見つけたりしなくてもいいよ」「そのままおいで」という想いを持っています。そこで、Finding R(ファインディング アー)の一部をとって、さらにRをひっくり返した形で「でぃんぐる(DingЯ)」という名前にしています。

延べ登録者数は80名程度・1日の来所人数は10名程度で、多くは不登校の子どもです。毎日来る子もいれば、学校に通いながらちょっと疲れたらでぃんぐる利用をする子もいます。完全に学校に戻っている子もいますが、必要な時はいつでも戻ってきて良い場所としています。

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/833593&title=一つの机で勉強する小学生18

—不登校の子どもたちの支援をする中で、行政・学校との連携も必要になると思います。連携のためのつながりはどう作られたのでしょうか。

金和さん:拠点の開設計画の段階から県の教育事務所に相談に行っていました。教育事務所の方から市町村教育長の方々の会議に呼んでいただいたり、学校が開催する保護者講演会に行ったり、開設前に何度かお話をする機会がありました。私たちの持っている課題意識を共有し、教育庁や学校側の困りごとやニーズも把握することで、どういう場所が求められているのか確認しながら開設を進めることができたと思います。

秋澤さん:初期段階から教育事務所と連携していたことで、目標を共有できていると思います。学校は学びや他者とのつながりを育める場なので、戻れるなら学校に戻れると良いよね、という前提はありつつも、無理にそれを求めるのではなく「子どもが自分で決める」ことを大切するという共通認識があります。学校に戻る子やフリースクールに通い始める子、Finding R内の施設内で新たな取り組みを始める子もいますが、子ども自身が決めて一歩を踏み出すことが自立に繋がっていくと考えています。教育行政とでぃんぐるとで考え方の方向性が基本的に同じなので、それぞれの学校との連携も進みやすくなっていると思います。

金和さん:また開設前から地域のスクールソーシャルワーカーにも意見を求めたり、アンケートを取ったりしていました。みなさん初めから「この子を繋げたい」という子どもがいたので、その子に合った居場所のあり方について意見をくれ、実際に子どもを繋げてくれました。そこから保護者の方同士でも情報が伝わったりして、でぃんぐるが地域に知られるようになりました。

地域のニーズに合わせた居場所づくり

—開設前から教育事務所やスクールソーシャルワーカーに意見を求めることで、需要に合った子どもの居場所づくりを進めることができたのですね。

金和さん:そうですね。私自身、「こんなものが欲しいだろうな」と感じていたものがありました。他にも、法人の中の発達障害に関わっている職員や子育て中の職員からもどんな居場所であれば子どもたちが安心できるか、来たいと思えるかなどについて意見をもらい、それらを反映しながらでぃんぐるを作っていきました。

子どもたちが安心できる・来たいと思えるための工夫として、でぃんぐるでは、来る時間も頻度も子どもたちの自由であることがあります。事前連絡などは必要なく、朝からでぃんぐるに来る子もいれば、数時間だけ顔を出す子も、夏休み期間だけ来る子もいます。来所時間を決めないことで子どもたちがプレッシャーを感じず、自分の気持ちで好きな時に来てリラックスできるような場にしたいと考えています拠点内でも、「こうしなければならない」というようなルールは必要最低限にしています。

一方で、でぃんぐるは「誰でも来られる場所」ではなくあくまで登録制の居場所としています。これは、何かしらの困難を抱えていたり、気持ちが弱っていたりする子どもにとっての安心・安全の場であることを確保するためです。そのため、登録希望者の面談・アセスメントは丁寧に行い、登録が適切かを決めるようにしています。

また、空間づくりも工夫しました。子どもが1人になりたい時に逃げ込めたり、隠れ家のように遊んだりできる空間としてキューブを設置しています。大学の先生にご協力をいただき、職員とのワークショップを10回程度実施して程よいサイズ感などを検討しながら作ったものです。「人がぴったり入れるくらいの幅の隙間が欲しい」などの意見を取り入れ、隠れることができつつ周りの人の気配を感じることもできるなど、人との距離感を自分で選べるものにしました。

実際にでぃんぐるに置かれているキューブ。子どもの頃に楽しさを感じていた空間を作ることを目指した。

学校との連携

—実際に運営される中での関係機関との連携についても教えてください。

奥薗さん:まず、学校との連携があります。義務教育課程のお子さんに関しては、初回登録の時に保護者の方から学校との基本情報の共有に関して了承をいただいています。学校とは現在週に1回、主にメールで情報の共有を行なっています。子どもの状況を共有したり、学習の進捗を報告し、助言等をいただいています

学校との関わり方は、学校に合わせて変わります。情報共有はベースとして行い、その先は子どもの状況や学校側の状況・要望を踏まえつつ、模索しながら進めています。スクールソーシャルワーカーと情報共有をしたり、保護者からの要望で学校内でのケース会議にでぃんぐるの職員が出席することもあります。

また、オンラインで学校の授業をつなぎ、子どもがでぃんぐるにいながら学校の授業を受けることができたり、でぃんぐるで学校からもらった教材を使ったりする形で連携できている例もあります。日によってその子が学校の授業を受けられる気持ちでないこともありますが、子どもの状況に配慮しつつ、学校との接点を持ち続けられるようにしています。学校ともその子の最近の興味関心を共有し、学校での学びのきっかけになりそうな点などを相談したりしています。

先ほどもお話した通り、必ず学校に戻るべきと考えているわけではないのですが、学校と繋がり続けることで子どもたちの不安が軽減されることもあります。でぃんぐるに通いながら学校に通いたいという気持ちが芽生えてくる子も、いざ学校に戻る時には色々と不安を感じます。オンラインで学校の授業を受けていると、子ども自身が学校の様子を少し把握でき、私たちも「学校とやりとりしているけど、先生もいろいろ理解してくれているし、楽しくなると思うよ」と伝えられるので、子どもの不安の軽減に繋がると考えています。でぃんぐるの子どもたちは徐々に学校に戻っていくことが多く、でぃんぐると一時的に密に関わっていた時期を経て、少しずつでぃんぐるの存在が薄くなっていく経験をします。そのスムーズな接続のためにも学校との連携は大切にしていますね。

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/92364&title=小学生の男の子と女の子28

—学校との連携によってでぃんぐるでの活動が出席扱いになる場合もあるのでしょうか。

奥薗さん:出席扱いに関しては基本的に学校長判断で、でぃんぐるの場合、学校側にメールで情報を共有することで、出席扱いになっている学校もあります。ただこの辺りは、学校長や行政によって考え方が異なるため、でぃんぐるの例が他の地域にも当てはまるとは限りません。

その他の行政との連携

—学校や教育以外の行政機関との連携もあるのでしょうか。

金和さん:はい。行政の子育て支援課や生活困窮者支援の担当課にも、開設当初に作成したハンドブックを使って拠点について説明をしています。まず地域の人たち同士でケアできるコミュニティを作りたいとの思いがあり、「困っているけど、どうしたらいいのかな」と思った人がどこからでも自然につながるようにしているので、結果的にいろいろなルートからいろいろな話が来ます。

また行政に限らず地域の中で多くのつながりを作るようにしていて、それが子どもたちが将来を考えるときにも活きると思っています。例えば障害を抱える方が受給者証をもらう際には、役場とのやりとりが必要になります。でぃんぐるの子どもたちで地元の工場見学に行くと、それは子どもの将来の職業選択に影響を与えるかもしれません。そのような形で地域とのつながりはゆるく広く保ち、関わってくださっている周りの方々の信頼を裏切らないことを大切にしています。

出典:https://www.ac-illust.com/main/detail.php?id=2396670&word=地域社会との繋がり&searchId=#goog_rewarded

次への一歩をふみ出す

—でぃんぐるが地域の中の様々な場所とつながっていることが、子どもが地域と関わりを持つことにも繋がりますね。最後に、でぃんぐるで大切にされていることを教えてください。

金和さん:「次への一歩を自分でふみ出す」ことは、個人としても法人としても大切にしています。私たち自身、「制度があるからこうする」ではなく、「地域で必要とされているからやる」と考え、地域に対して責任をもって判断できる法人でありたいです。

子どもたちにも、誰かに言われて動くのではなく、自分の興味関心を探してもらいたいと思っています。子どもが「やりたいことを叶えるために、午後だけ学校に行ってみようかな」など、自分の意思で次の一歩をふみ出せることが大事。それが子どもにとっての力になると思っています。

秋澤さん:次への一歩の在り方は、子どもによって様々です。先ほどもお話した通り、でぃんぐるとの関わりがだんだん少なくなって学校に戻っていく子もいれば、フリースクールに行く子も、でぃんぐるに通い続けながら新たな挑戦をする子もいます。次への一歩を自分でどう出すか、それを自分で決める「自立」を子どもたちと一緒に目指していければと思います。

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/2215621&title=第一歩を踏み出す男性の足元

まとめ

今回は、社会福祉法人 玉医会の金和さん、秋澤さん、奥薗さんにでぃんぐるで実施している地域連携について伺いました。ポイントを以下にまとめます。

  • でぃんぐるでは、開設前の段階から教育事務所などと連携し、目標を共有しながら居場所設計を行った
  • 学校に行ってない状態の子どもも、学校とゆるやかに接点を持ち続けることで不安の軽減につながっている
  • 子どもの居場所が地域のいろいろな場所とつながることで、子どもたち自身が次への一歩を踏み出すことを後押しする

※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません

この記事は役に立ちましたか?