子どもが抱える困難が複雑化・多様化する中で、自分たちの支援だけでは限界を感じることもあるのではないでしょうか?子どもの生活全体を支えようとする時に、「地域で子どもを育てる」という視点を持つことはますます重要になってきています。
今回は、地域で子どもを育てるための「地域連携のあり方や進め方」について、NPO法人Learning for All(以下、LFA)のソーシャルワーカーさん(以下、SWer)に伺いました。
※個人の特定を防ぐため、匿名で掲載させていただきます。
子ども支援における地域連携の目的
━━まずは子ども支援における「地域連携」の目的についてお伺いします。「地域連携」という言葉を聞く機会は多いですが、そもそもなぜ「地域連携」が必要なのでしょうか。
私たちが支援現場で子どもや保護者と関わる時間や空間というのは、その子ども・保護者の生活全体の一部でしかありません。子ども・保護者の生活は、学校や家庭、近所の公園といった支援現場の外で過ごす時間が大部分を占めています。
また、自分たちの力量や資源、立場を考えると、どうしても自分たちだけでは踏み込めない生活領域もあります。そのため、私たちが子どもの生活全体を支えようとする際には、自分たちの支援現場を超えて、子どもの生活に関わっている他の方たちと一緒に支援を考えることが不可欠だと思います。
地域で連携して子どもを支えた事例の紹介
━━子どもの生活全体を支えるための地域連携、ということですね。そのような地域連携が、子どもの困難の解決や生活の向上のために活きた事例はありますか。
子どもの生活はずっと続いていくものなので、現時点で上手くいったかどうかを判断することは容易ではありません。しかし、少し状況が前進したかなと思われる事例を紹介させていただきます。
子どもが不登校になっていることを把握し、地域全体で見守ることができた事例です。その子の家庭はひとり親できょうだいも多い世帯なのですが、お母さんの体調も良くなく、子どもたちを朝学校に送り出すこともしんどいという状態でした。その子はLFAの居場所拠点に繋がっており、拠点には度々足を運んでくれていました。
私を含むLFAの居場所拠点のスタッフは、学校開放日などの機会に学校を訪れ、普段から学校の先生と子どもの様子についてコミュニケーションを取る機会がありました。そのようなコミュニケーションの中で、子どもが学校に来ていないという情報を学校の先生から得ることができました。
━━普段から拠点と学校との間でコミュニケーションが取られていたのですね。
はい。そのように関係を構築できていたため、学校の先生からの相談を受け、養護の先生やスクールソーシャルワーカー、地域の民生委員を交えて、その子の様子や支援方針について話し合う場が設けられることになりました。各関係者からは例えば、以下のような情報が共有されました。
- 学校から:その子のきょうだいの学校での様子
- LFAから:その子が居場所拠点に足を運んでくれた際の様子
- 民生委員から:その子を地域で見かけた際の様子
その場で何か具体的なアクションが決まることはありませんでしたが、皆でその子を見守っていこうという認識を共有することができました。
地域のステークホルダーと関係を構築するための秘訣
━━様々な視点からその子に関わる情報が共有されることで、子どもの生活の様子を多面的に把握できたのですね。うまく連携できた秘訣はどこにあるのでしょうか?
日常的にコミュニケーションを取ることが鍵だと思います。居場所支援拠点が出来た当初、スタッフで様々な地域の方々に挨拶に行き、地域の方々に自分たちの拠点の存在を知ってもらいました。
また、先ほどの事例の子どもが通っている学校はLFAの学習支援の場所を提供していただいている学校だったので、先生たちはその学習支援拠点の様子からLFAを知ってくださっていました。そのような学習支援の現場から接点を持ち始め、学校開放日などに積極的に顔を出し、日常的に関わることで信頼を獲得することができたのだと思います。
また、自分たちの団体が得意な分野と苦手な分野を明確にし、苦手な分野や分からないところについては「教えてください」という姿勢でいたことも良かったのかなと感じています。
━━最後に、これから地域と連携していきたいと考えている子ども支援者の方々に向けてメッセージをお願いします。
困ってから相談するのではなく、困る前から繋がっておくことが大切だと思います。普段何もない時から顔見知りになっておくことや、子どもたちが抱える困難だけではなくポジティブな情報を共有し合える関係があることが重要です。
そうした関係性を作るためには、まずは相手を知ろうとすることが大切です。学校や他の支援現場に対しては、一度見学させてもらうのがよいと思います。地域の子ども食堂や他の居場所支援現場、民生委員が主催するイベント等に参加してみるのも1つの方法です。イベントなどの情報は、インターネットだけでなく区報のような媒体にも載っています。また、1つの現場を見学した際に、他の支援現場についての情報を聞くと、別の人を紹介してくれることもあります。
HP上のLFAの情報だけでは、誰に何を相談したらよいか具体的なイメージを持っていただきにくいですが、日常的な関わりを持つことで、「〇〇という団体の△△さん」という形で、個人レベルで繋がって相談しやすい関係を作ることができると考えています。
まとめ
今回は、LFAのSWerさんに地域との繋がり方について伺いました。ポイントを以下にまとめます。
- 地域連携は、自分たちの現場だけでは捉えきれない子どもの生活全体を支えるために必要なものである
- 困ってから相談や連携をするのではなく、困る前から日常的にコミュニケーションを取ることが大切である
- 地域との関係づくりの第一歩は、まず相手を知ることである。そのためには、現場見学などを通じて個人レベルで繋がるとよい
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※本記事の内容は専門家個人の見解であり、記事内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません。
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