「一緒に解くことはできるけど、問題が少しでも難しくなったり、形が変わったりすると子どもが解けなくなってしまう…」、そんな悩みをお持ちの方はいませんか?
個別の問題をどのように解くのかを説明することはできても、子どもが自分で問題を理解して解くことができるようにサポートすることは簡単ではありません。限られた時間の中で、学習につまずきがある子ども達の学習をサポートするためには、どのようなことを意識するといいのでしょうか。
本記事では、認定NPO法人Learning for Allにおいて学習支援ボランティアに向けて行われている研修の内容をもとに、子どもの理解を段階的に深め、着実に子どもの「できた!」を増やしていくための指導の方法をまとめました。前編は「導入」「I do(解き方の説明)」の2つのステップについて、後編は「We do(一緒に問題を解く)」「You do(子どもが自分で解く)」「まとめ」の3つのステップについて取り扱います。
指導全体の流れ
教科指導において、指導は大きく「導入」「I do(アイ ドゥ)」「We do(ウィ ドゥ)」「You do(ユー ドゥ)」「まとめ」の5つのステップに分けられます。
ステップ |
内容 |
導入 |
(特に新規の分野において)前提知識や新規の学習内容を明確にし、子どもが勉強に取り組んでいくためのモチベートを行う。 |
I do(解き方の説明) |
公式や問題の解き方について「教師(I:私)が」説明を行う。学習内容を簡潔に伝達し、問題の解き方を理解してもらう。 |
We do(一緒に問題を解く) |
説明した解き方に沿って実際に問題を解いてもらい、理解を深める。子どもがつまずいた場合には教師が問いかけながら一緒に(We:私たち)取り組み、この段階で丁寧に解消する。 |
You do(子どもが自分で解く) |
問題演習の時間。「子ども(You:あなた)の力で」問題を解いてもらい、学習した内容の定着を図る。 |
まとめ |
指導内容が定着しているかを確認し、指導中に見つかった改善点を次に活かすための振り返りを行う。 |
画像:LFA作成
この5つのステップは、導入でその日の学習内容に取り組む準備を整えたのち、「まず説明を聴く」「実際に解いてみて、理解を深める」「自分の力で解いてみて、定着させる」という3つの段階を踏み、子どもが理解を段階的に着実に深められることを目的としています。「I do」「We do」「You do」はそれぞれ「1対4対5」くらいの目安で時間配分を行うと良いでしょう。「演習の時間を充分にとり、子どもが自力で解けるようになるためです。
場合によっては、この5つのステップを指導内に複数回繰り返します。その際、「I do」「We do」「You do」のステップにおける難易度が同じになるようにしましょう。説明されていない問題を子どもが演習するのでは、子どもの理解度を図ることが難しくなるためです。また指導全体の構造だけでなく、子どもがつまずいた際には適時一つ前の段階に戻って説明を行うことで、着実な理解につなげることができます。
画像:LFA作成
それでは、指導の各ステップについて詳しく取り扱います。
スタートとゴールを明確にする「導入」
まず、「導入」についてです。これまでの学習内容とのつながり、そして違いを確認し、「今自分が何を(何のために)学んでいるのか」という理解に基づいた定着に結び付けることが目的です。「導入」におけるポイントは3点です。
導入部分のポイント |
①既習事項の知識を確認すること |
②他の分野との区別を意識させること |
③目標の達成に向けて意欲を引き出すこと |
画像:LFA作成
①既習事項の知識を確認すること
新しい分野の前提となる既習範囲が理解できていないと、新しい知識を習得することは難しいでしょう。準備の段階で指導範囲の前提知識を洗い出し、指導開始時に既習範囲の知識を確認することが重要です。この確認によって、子どもが知識不足によって指導についていけなくなってしまうことを防ぐことができます。
②他の分野との区別を意識させること
似ている分野での知識の混同は、学習のつまずきにつながってしまいます。例えば、一見同じように見える数式や、英語の3人称など日常ではあまり馴染みのない概念などにおいて特に注意が必要です。複数の混同しやすい知識がどのように異なるのか、子どもが納得できる形で整理する必要があります。
③新しい知識の習得に向けて意欲を引き出すこと
子どもの「頑張ってみよう」という意欲を引き出すことも大切です。導入部分はその後の指導において重要なステップであるため、声に抑揚をつけて注意を引き付けたり、「今から扱う分野はよくテストに出るよ」と重要性を認識してもらったりすると効果的でしょう。
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「I do(解き方の説明)」は単純明快に!
導入の次は「I do」についてです。問題の解き方を伝え、理解してもらいます。ポイントは以下の3つです。
「I do」部分のポイント |
①説明時間はなるべく短くする |
②問いかけも活用して、説明・指示は簡潔に |
③印象に残る、インパクトのある説明を |
画像:LFA作成
①説明時間はなるべく短くする
「時間が短いこと」は理解しやすい説明を行うためにとても重要です。長い説明は理解しにくいうえ、新しく習う範囲や苦手な分野であればなおさら子どもが集中力を保つことも難しくなります。また実際に子どもが解いてみる時間を充分にとるためにも、説明の時間は短くしましょう。
②問いかけも活用して、説明・指示は簡潔に
そして「説明や指示が簡潔であること」も重要です。解く手順をいくつかのステップに段階化すると、覚えるべきことが明確になり、子どもにとっても覚えようという意欲がわきやすくなります。また学問用語を多用するのではなく、なるべく簡単な言葉で説明を行うことも、分かりやすい印象を与えます。
画像:LFA作成
また、教師が一人で説明をし続ける必要はありません。簡単な計算 1つ1つについては答えを問いかけながら進めても良いでしょう。生徒の集中を保つうえで効果的です。最後に、子どもへ指示を出す時は「一動作、一指示」を意識すると指導にメリハリをつけることができます。例えば、「ホワイトボードを見てね」「ペンで印をつけよう」などの指示は、子どもが積極的に指導に参加することにつながります。
③印象に残る、「インパクト」のある内容説明を
ここまで説明の「聴きやすさ」について述べましたが、「なるほど!」「面白い!」と子どもが「聴きたくなる」説明も重要です。例えば、面白い例えや具体例を出しながら子どもの経験に紐付けられるようにすると、子どもが興味を持ちやすくなります。また、あえて間違いを提示して子どもに間違っている部分を指摘してもらったり、日常にありそうな問題をどう解決するか問いかけたりすることも効果的でしょう。「分かった」という感覚を持つことが、より確実な学習の定着や、勉強に対する抵抗感の低下にもつながります。
画像:LFA作成
また、声の大きさや抑揚、ジェスチャーや教材の色などで、子どもの注意を引き付けることも有効です。
まとめ
今回は、子どもが自分で問題を理解して解けるようになるために、段階的に理解を深めていく指導の作り方について取り上げました。指導全体の流れや、学習内容の導入および子どもに解き方を説明する際のポイントを以下にまとめます。
- 「導入」「I do(解き方の説明)」「We do(一緒に問題を解く)」「You do(子どもが自分で解く)」「まとめ」の5つのステップを踏むことで、子どもが「自分で解ける」指導をつくることができる。
- 導入におけるポイント
- 前提となる既習事項の知識を確認する
- 似たような他の分野との区別を意識してもらう
- 重要性を理解してもらうなど、新しい知識の習得に向けて意欲を引き出す
- I doにおけるポイント
- 説明時間はなるべく短くし、聴きやすさを意識する
- 問いかけを活用して積極的な参加を促すと同時に、説明や指示を簡潔にする
- 具体例などを活用して、印象に残る説明を意識する
後編では、「We do(一緒に問題を解く)」「You do(子どもが自分で解く)」「まとめ」の3つのステップについて説明します。
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※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません
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