【連載第3回】“支援する/される”を固定しないアウトリーチ――全国こども福祉センターが考える、当事者同士のつながりと関係づくり (こども支援ナビ Meetup vol.32)

投稿日:2026/11/04

2026年7月28日に、子どもに向き合う全国各地の支援者が学び/知見/意見をシェアするオンラインイベント「こども支援ナビMeetup」の第32回が開催されました。

今回は、特定非営利活動法人 全国こども福祉センター(以下、全国こども福祉センター)設立者であり、理事長の荒井 和樹氏をお迎えし、「“支援する/される”を固定しないアウトリーチ―全国こども福祉センターが考える、当事者同士のつながりと関係づくり―」というテーマで、公的な支援に繋がりにくい子ども・若者とどのようにつながり、本人の声を生かした支援をつくっていくのかについてお話しいただきました。

イベントレポート第3回では、全国こども福祉センターの活動と、人とのつながりを再構築するために活動で大事にしていることをお聞きします。

連載第1・2回はこちら:

【連載第1回】“支援する/される”を固定しないアウトリーチ――全国こども福祉センターが考える、当事者同士のつながりと関係づくり (こども支援ナビ Meetup vol.32)
【連載第1回】“支援する/される”を固定しないアウトリーチ――全国こども福祉センターが考える、当事者同士のつながりと関係づくり (こども支援ナビ Meetup vol.32)
【連載第2回】“支援する/される”を固定しないアウトリーチ――全国こども福祉センターが考える、当事者同士のつながりと関係づくり (こども支援ナビ Meetup vol.32)
【連載第2回】“支援する/される”を固定しないアウトリーチ――全国こども福祉センターが考える、当事者同士のつながりと関係づくり (こども支援ナビ Meetup vol.32)

プロフィール:荒井 和樹 氏
全国こども福祉センター 設立者・理事長/愛知文教女子短期大学 准教授
北海道苫前郡出身。児童養護施設での実務経験を起点に、公的支援につながりにくい子ども・若者と、公共空間で出会い直す実践を継続してきた。相手を「要支援者」としてではなく、「仲間」として迎える非援助的アプローチを探究し、参加者自身が運営や意思決定に関わる〈共同体自治〉の実践を展開する。
2012年に全国こども福祉センターを設立。都市空間での直接接触型アウトリーチを15年以上継続し、延べ2万8千人に参加と交流の機会をひらく。
著書に『子ども・若者が創るアウトリーチ』(2019年)、『能力社会から共同体自治へ』(2025年、せせらぎ出版)。2023年に「未来をつくる こどもまんなかアワード」内閣総理大臣表彰、2026年に愛知県精神保健福祉協会長奨励賞を受賞。

子どもが運営に参加する、全国こども福祉センターの活動

ここからは、全国こども福祉センターの活動について、もう少し具体的にご紹介します。

活動には10〜70代までの人が参加しています。もともと路上で出会うため、最初はその人がどのような背景を持っているのか、ほとんどわかりません。半年・1年と関わり続ける中で、少しずつその人のことがわかってきます。

参加している子どもや若者の中には、さまざまな困難を抱えている人もいます。しかし、最初から「困難を抱えている子ども」として見て、関わっているわけではなく、年齢や家庭環境などの属性から相手を見ることも基本的にはしていません。なので、長く関わっていても、何歳なのか忘れてしまうこともあります。

また、活動に参加する若者は、「支援を受ける側」にとどまりません。研修の講師を務めたり、活動の運営を担ったりしています。私の方が助けてもらうことも多く、若者たちの方が活躍している場面も少なくありません。

このように「支援する側」と「支援される側」が入れ替わることを、「主客転換」と呼びます。例えば学校でいえば、普段は授業を受ける学生が講師を務めるイメージです。講師になれば、自分で調べたり勉強したりしながら、その役割を果たそうとします。

夜間の声かけでも同じです。一般的には、専門職やコミュニケーションが得意な人が声をかける側になることが多いと思います。一方、全国こども福祉センターでは、活動に参加している若者自身が自然に声をかけることもあれば、そこに立っていることで、反対に通りかかった人から声をかけられることもあります。

中学生が声かけを行う場合もあるので、子どもがこうした役割を担うことにはさまざまな意見があると思います。それでも私は、子どもたちが「やってみたい」と思ったことを最初から止めるのではなく、どうすれば実現できるのかを一緒に考えることを大切にしています。


画像:
全国こども福祉センター

ちなみに、「全国こども福祉センター」という名前にした理由は、地域や行政区画にとらわれず、誰でも参加できる場所にしたいと思ったからです。実際、活動の拠点は名古屋ですが、市外・県外からの参加が9割を占めています。

この考え方には、活動する場所にも関係しています。最初にお話ししたように、私は北海道の羽幌町で育ち、人と交流する機会が少ないことに寂しさを感じていました。逆に、名古屋に来て驚いたのは、街にこれだけ多くの人がいるにもかかわらず、人と人との交流が少ないことでした。

特に、名古屋駅はたくさんの人が行き交っていますが、多くの人にとっては、仕事や学校へ向かうための、ただの通過点です。そこで、広場が本来持っていた「交流の場」としての機能を取り戻したいと考え、駅西広場で活動しています。

家庭や地域とのつながりを再構築するには

ある児童相談所での出来事

ここで、名古屋市内の児童相談所で起きた出来事をご紹介します。2022年に保護されていた少女がトイレの窓から飛び降り、亡くなってしまったことです。

報道では転落した窓に格子がなかったことや、窓が大きく開く構造になっていたことが取り上げられ、転落を防ぐために管理体制を強化する必要性が議論されていました。

もちろん、安全を守るための対策は必要ですが、私はそれだけで議論が終結したことを残念に思いました。というのも本来であれば、「施設が嫌だった」「一時保護所が嫌だった」という子どもたちの声をどう受け止め、支援のあり方に反映していくのかを考えることも、支援者の役割だと考えるからです。

そして、これは児童相談所だけの問題ではないと思います。私たち社会の側が児童相談所や施設に「子どもをきちんと管理すること」を求めるからこそ、施設のルールや管理も厳しくなっているのではないでしょうか。

私たちはいつから「評価」されるのか

私自身、大学で授業をしていると、落ち着いて座っている学生と、立ち歩いたり授業に集中していなかったりする学生を、無意識に評価してしまうことがあります。保育や教育の現場でも、「座っていられる子は良い子」「途中で立ち歩く子は良くない」という見方をしてしまうこともあるのではないでしょうか。

そこで考えたいのが、私たちはいつから評価され、比較されるのかということです。振り返ってみると、私たちは非常に早い段階から「標準か、標準ではないか」という尺度で見られています。就学前であれば「この年齢ならこれができるはず」と評価され、遅れが見られる場合は「発達支援や療育につなげなければ」と考えると思います。

これを別の視点から考えると、保護者や社会が子どもを「投資」の対象のように捉え、与えた分だけ、成長や成果を期待しているところもあるのではないでしょうか。

教育や福祉の場でも、本人の能力を伸ばしたり、社会に適応できるように支援したりすることが重視されています。もちろん、成長したいと思っている子どもを応援することは大切です。

ただし、成長や変化を求めすぎることで、「今のままではいけない」というメッセージを伝えてしまうこともあるのではないでしょうか。そしてそれは、その人の「あるがまま」を受け止めることとは、反対の方向に向かってしまうと考えています。

そのため、成長することや自立することを求めるだけではなく、何ができるかといった条件で人を分けず、「生きているだけでもいい」と無条件に受け止めてもらえる場所も必要だと思います。

人とのつながりをつくり直す

かつては、家族や地域がそうした役割の一部を担っていたのかもしれません。しかし、従来の家族や地域のあり方に窮屈さを感じる人もいます。そのため、血縁関係や住んでいる行政区画だけで人との関係を決めるのではなく、一人ひとりが望む家族や地域のあり方を尊重し、その人なりのつながりをつくり直していくことを応援する姿勢が大事だと思います。

このために重要だと考えているのは、

  • 出会い直す
  • 無条件の受容

です。一つずつ詳しくご紹介します。


画像:全国こども福祉センター

1. 出会い直す

路上で出会ったときには、その人の年齢や性別、どのような背景を持っているのかはほとんどわかりません。関わりを重ね、仲良くなっていく中で、少しずつわかってくることがありますが、それを知ったからといって、それまで築いてきた関係が大きく変わるわけではありません。

一方、福祉制度を利用するときには、障害の有無や住所、通院歴など、さまざまな情報によって利用できる制度や関わる支援者が決まることがあります。制度を利用するためには必要なことですが、最初からそうした属性によって関係性が決められてしまうと、本人が主導権を持って、自分で関係を築いていくことが難しくなる場合もあります。

だからこそ、属性や制度に囚われず、公共空間で一人の人として「出会い直す」ことが、新しい関係をつくるきっかけになると考えています。

2. 無条件の受容

無条件の受容とは、「条件を設けない」「評価しない」「就学・就職・自立は促さない」ことです。言い換えれば「弱いままでもいられる」ということだと思います。

これは、支援を受ける側だけの話ではありません。支援の現場では、支援者にもアセスメント、制度の知識、他機関との連携など、多くの能力が求められます。もちろん、専門職として必要な力ではありますが、あまりにも多くのことを求めていて、支援する側も「自分にはできない」と感じてしまいます。

そのため、支援を受ける人にも、支援する人にも、常に成長することや何でもできることを求めなくてもよいのではないでしょうか。実際、全国こども福祉センターで、自立や成長を一方的に促さずに関わり続けていると、「相談できる人が増えた」と話してくれる若者もいます。支援する人とされる人という関係を固定しないことが、結果として新しいつながりを生み出しているのだと思います。

その考えを象徴しているのが、事務所の「鍵」です。全国こども福祉センターでは、参加者自身が鍵を持ち、事務所を自由に利用できます。避難場所として利用したり、宿泊したりすることも可能です。

また、活動を実施するかどうかも参加者自身が決めています。そのため、活動が行われない日もありそうですが、実際には毎週誰かが開催し、名古屋駅での活動が続いています。

 
画像:全国こども福祉センター

私は、人と人との違いや隔たりをなくすのではなく、それぞれの違いを持ったまま共に生きていくことを大切にしています。そして、子どもや障害のある人、路上生活者、患者など、「支援される側」とされてきた人たちを、従属的な役割から解放することを何より重視しています。

こうした「出会い直し」や「共に生きる」ための実践については、『能力社会から共同体自治へ』という書籍にもまとめています。より詳しく学びたい方は、そちらをお読みいただけると嬉しいです。

本日はご清聴いただき、ありがとうございました。

まとめ

今回は、荒井さんに、全国こども福祉センターの活動と、活動の中で大事にしていることについて伺いました。ポイントを以下にまとめます。

  • 活動では、子どもや若者自身が路上での活動や研修の講師を担っている。子どもたちが「支援する側」にもなることで、一人ひとりのやりたいことを実現している。
  • 社会が人々に成長を求めすぎるあまり、ありのままの自分を受け止めてもらえる場所が少なくなっていると考えている。
  • そうしたつながりをつくり直すため、属性や制度の枠に囚われずに人と「出会い直す」こと、そして弱いままでも受け入れられる「無条件の受容」を大切にしている。

次回は、講演後の質疑応答の模様をお伝えします。

※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません

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