【連載第2回】“支援する/される”を固定しないアウトリーチ――全国こども福祉センターが考える、当事者同士のつながりと関係づくり (こども支援ナビ Meetup vol.32)

投稿日:2026/10/28

2026年7月28日に、子どもに向き合う全国各地の支援者が学び/知見/意見をシェアするオンラインイベント「こども支援ナビMeetup」の第32回が開催されました。

今回は、特定非営利活動法人 全国こども福祉センター(以下、全国こども福祉センター)設立者であり、理事長の荒井 和樹氏をお迎えし、「“支援する/される”を固定しないアウトリーチ―全国こども福祉センターが考える、当事者同士のつながりと関係づくり―」というテーマで、公的な支援に繋がりにくい子ども・若者とどのようにつながり、本人の声を生かした支援をつくっていくのかについてお話しいただきました。

イベントレポート第2回では、支援を利用したくない子どもがいる理由とその背景、若者にとっての最善を選ぶ難しさ、そして子どもと一緒に実践する支援について教えていただきます。

連載第1回はこちら:

【連載第1回】“支援する/される”を固定しないアウトリーチ――全国こども福祉センターが考える、当事者同士のつながりと関係づくり (こども支援ナビ Meetup vol.32)
【連載第1回】“支援する/される”を固定しないアウトリーチ――全国こども福祉センターが考える、当事者同士のつながりと関係づくり (こども支援ナビ Meetup vol.32)

プロフィール:荒井 和樹 氏
全国こども福祉センター 設立者・理事長/愛知文教女子短期大学 准教授
北海道苫前郡出身。児童養護施設での実務経験を起点に、公的支援につながりにくい子ども・若者と、公共空間で出会い直す実践を継続してきた。相手を「要支援者」としてではなく、「仲間」として迎える非援助的アプローチを探究し、参加者自身が運営や意思決定に関わる〈共同体自治〉の実践を展開する。
2012年に全国こども福祉センターを設立。都市空間での直接接触型アウトリーチを15年以上継続し、延べ2万8千人に参加と交流の機会をひらく。
著書に『子ども・若者が創るアウトリーチ』(2019年)、『能力社会から共同体自治へ』(2025年、せせらぎ出版)。2023年に「未来をつくる こどもまんなかアワード」内閣総理大臣表彰、2026年に愛知県精神保健福祉協会長奨励賞を受賞。

子どもがいる場所から支援を考える

では、施設のルールに馴染めなかったり、施設での生活に違和感を抱いたりした子どもは、どこへ行くのでしょうか。実際にその行き先を辿ると、SNSや路上に集まっていることが分かりました。

そして、子どもたちが集まっている場所で活動できないだろうかと考えたことが、全国こども福祉センターを立ち上げるきっかけになりました。

路上で子どもや若者と話していると、公的な支援機関に繋がることができる人もいれば、ハードルを感じる人もいることが分かりました。国も児童相談所の職員を増やすなど、相談支援体制の充実に取り組んでいますが、それだけでは届かない人がいると感じます。

もちろん、児童相談所や児童福祉施設を否定したいわけではありません。ただ、児童相談所に権限を集中させるだけでなく、もう少し多様な選択肢があってもよいのではないかと考えています。地域のさまざまな人が一緒に子どもを支えることで、子どもをルールで縛ったり、管理したりする必要も少なくなると思うからです。

例えば、「家出」について考えてみましょう。子育てをしている方にとって、自分の子どもが家出をすることは、とても心配で不安なことだと思います。また、家出は少年警察活動(注1)上、「不良行為」として扱われています。しかし、「家出=問題」と捉えるだけではなく、その行動が本人にとってどのような意味を持っているのかを考えることも大切です。

本人の視点に立てば、家出は暴力などから逃れるための「避難」なのかもしれません。実際に、全国こども福祉センターに来る子どもの中には、「週末だけ事務所をシェルターとして使わせてほしい」と話す子もいます。休日に保護者と過ごす時間が長くなるため、少し距離を置きたいというのです。

というのも、家族で長い時間を過ごしていると、過干渉になったり、余裕がないときに感情をぶつけてしまったりすることもあります。だからこそ、家族だけで子育てを抱えるのではなく、周囲の人たちと一緒に支えていくことが大切だと思います。そして、家出も単に問題と捉えるのではなく、「なぜ家を離れたかったのか」を本人の視点から考えることで、違った見方ができるのではないでしょうか。

(注1)少年警察活動とは、少年の非行防止や保護、健全な育成のために警察が行う活動のこと。具体的には、補導や相談、規範意識の醸成や関係機関との連携など、幅広い活動を指す。(出典:少年警察活動規則 | e-Gov 法令検索)

なぜ子どもたちは支援を利用しないのか

社会に「居場所がない」と感じている子どもほど、支援機関についても「利用したいと思わない」と回答する割合が高いという調査結果があります。大人や人に対して不信感を持っている状態では、支援機関も結局は「人」が相手なので、頼ることに良いイメージを持てないのかもしれません。


画像:全国こども福祉センター

特定非営利活動法人OVAが行った調査によると、支援団体が考える「子ども・若者が助けを求められない理由」として最も多かったのは、「恥ずかしい」です。(トヨタ財団 2017年度 国内助成プログラム『「声なき声」に支援を届ける―新たなアウトリーチ展開のための調査―』調査報告書より)

支援現場では、相談窓口を知ってもらうための情報発信に力を入れることも多いと思います。芸能人を起用して相談先を周知したり、チラシやパンフレットをつくったり、SNSを通じて支援情報を届けたりと、さまざまな工夫がされています。

ただ、ここで考えたいのが、「恥ずかしい」という気持ちです。支援を必要とする子どもの写真や困難な状況を強調して情報を発信することで、「支援を受けるのは、困った人たちだ」というイメージをつくってしまう可能性があります。その結果、支援を受けることへの「恥ずかしさ」やスティグマを、かえって強めてしまうこともあるのではないでしょうか。

特に地方では、支援を利用していることを周囲に知られることが、切実な問題になることがあります。例えば、小学生の頃に子ども食堂やフードバンクを利用していたことを周囲に知られた場合、固定された人間関係の中で高校生になってもそのことを言われ続けてしまうかもしれません。

社会福祉の歴史から紐解く「恥」の背景

そもそも、なぜ子どもや若者は支援を受けることを「恥ずかしい」と感じるのでしょうか。その背景を考えるために、少し歴史を振り返ってみたいと思います。

かなり大まかな説明になりますが、社会福祉は、困窮している人や障害のある人などを一か所に集め、施設の中で支援する「施設収容」という方法が長くとられてきました。一人ひとりのもとを訪ねて支援するよりも、1か所に集まってもらい、そこに専門職を配置する方が効率的に支援できるという考え方です。

また、施設は街中ではなく、郊外や山間部などにつくられることも少なくありませんでした。少し強い言い方をすれば、地域から「隔離」されるような形です。施設に入ると、それまで暮らしていた地域から離れ、社会との交流が絶たれてしまいました。

交流する機会がなければ、そこで暮らす人がどのような生活をしているのか、想像することも難しくなります。例えば、障害のある人と日常生活の中で接する機会がなければ、教科書やインターネットなどを通してイメージするしかありません。もし友人として日頃から関わっていれば、一面的に捉えることは少なくなるのではないでしょうか。

日常的な接点がなくなることで、相手の生活や置かれている状況を想像しにくくなり、偏見にもつながっていきます。例えば、生活保護を利用している人に対して、「贅沢をするべきではない」と批判が向けられることがいい例だと思います。

困窮者支援が始まった際の原則の一つに「劣等処遇」という考え方があります。これは、福祉を利用する人の生活水準を、福祉を利用せずに生活する人よりも低く抑えるという考え方です。こうした考えが、福祉を利用する人に贅沢を認めない見方につながり、施設の窮屈なルールや、そこで暮らす子どもの声を見えにくくしている可能性もあります。

そして、このような理由から、「支援を受ける側」に置かれることに、否定的なイメージや抵抗感が生まれるのかもしれません。

社会的に「丸裸」にされる苦痛

では、実際に支援を必要としている人は、なぜ福祉を利用しないのでしょうか。

例えば、大久保公園周辺で売買春が行われていることが報道されると、なぜ福祉を利用しないのか、疑問に感じる方もいるかもしれません。しかし、風俗業界で働く人へのフィールドワークでは、「社会的に丸裸にされるよりも、仕事で裸になる方がマシ」という声も紹介されています。


画像:
全国こども福祉センター

生活保護を申請する場合、自分の収入や資産だけでなく、家族関係や周囲から受けている援助など、さまざまな情報を伝えることが求められます。支援する側には必要な手続きであっても、利用する本人にとっては、自分の生活や個人情報をすべてさらけ出しているように感じ、それ自体が苦痛や屈辱になることもあります。

私が関わった大学生にも、保護者からの暴力によって家を離れ、車中泊をしていた人がいました。手持ちのお金が少なくなり、食料を受け取るためにフードパントリーを利用したのですが、そこで詳しい面談やアセスメントを受け、さまざまな質問に答えることを求められました。

支援する側としては、限られた資源を必要な人へ公平に届けるために、状況を確認する必要があったのだと思います。しかし本人は、「自分が悪いわけではないのに、なぜこれほど詳しく事情を聞かれ、個人情報を伝えなければ食べ物を受け取れないのか」と感じ、二度と利用しませんでした。

支援の現場では、このような出来事が多いと感じますが、仕方がないと流してはいけないと思います。やはり、本人の声からどうしたら良いのかを一緒に考えていく必要があると思い、全国こども福祉センターを立ち上げました。

若者にとって最善の選択とは何か

もう一つ考えたいのが、若者が置かれている現実の中で、何が最善の選択なのかということです。

私は保育士養成の現場で働いていますが、保育士をはじめとするケア労働の賃金は、決して高いとはいえません。一方で、風俗などの仕事では、それを大きく上回る収入を得られる場合もあります。


画像:全国こども福祉センター

経済的に追い詰められ、「一日でも早く今の生活から抜け出したい」と考えている若者にとって、収入の高い仕事を選ぶことは、その人なりの合理的な選択になることもあるでしょう。支援者としては別の選択肢を選んでほしいと思うかもしれませんが、本人が置かれている状況から考えれば、必ずしも簡単に「その選択は間違っている」とは言えません。

むしろ、保育をはじめとするケア労働の賃金が低いこと自体にも目を向ける必要があります。人を支える仕事が十分に評価されていないことや、そこで働く人の多くを占める女性の労働が大切にされてこなかったことの表れとも考えられます。

こうした現実を見ていくと、「これが正しい支援だ」「この選択をするべきだ」と、支援者が一方的に答えを決めることの難しさが見えてきます。医療・福祉・教育の専門職であっても、何が本人にとって最善なのかを最初から決めることはできません。

子ども・若者と一緒に支援を考え実践する

だからこそ、何が本人にとって良いのかを、支援者が一方的に決めるのではなく、本人と一緒に考えていくことが大切だと思っています。なので、路上での活動も私一人ではなく、子どもや若者と一緒に行っています。

ちなみに、全国こども福祉センターでは、路上で活動するときに着ぐるみを着ています。活動を始めた当初は私一人だったので、自分がトラブルに巻き込まれるだけでしたが、若者と一緒に活動するようになると、服装によっては身体を触られたり、個人を特定されたりするリスクがあることがわかったからです。

着ぐるみを着ることで匿名性が高まり、個人を特定されにくくなります。また、ナンパなどと間違われにくくなるほか、街中で認知してもらいやすい、こちらから声をかけるのが苦手でも相手から声をかけてもらいやすいなど、コミュニケーションを円滑にする役割もあります。


画像:全国こども福祉センター

冒頭でもお話ししたように、日本ではアウトリーチを「訪問支援」という意味で捉えることが多くあります。その場合、専門職が支援を必要とする人のもとへ出向くという、専門家を中心としたアプローチになりやすい側面があります。

一方で、専門家が主導するアウトリーチはリスクが高い場合も知られています。支援する側の目的が優先されると、本人の希望よりも、専門家が所属する医療機関や支援機関に繋ぐことが目的になってしまう可能性があるからです。その結果、本人の意思に反した入院や施設入所につながることもあります。

だからこそ、専門家だけでアウトリーチや支援のあり方を決めるのではなく、支援を受ける側から支援そのものを捉え直すことが必要だと考えています。そのために、子どもや若者と一緒に実践することが大事ではないでしょうか。

そして、実践で得られた経験やノウハウを自分たちだけのものにするのではなく、社会に還元していきたいと思い、これまでの実践をまとめた『子ども・若者が創るアウトリーチ』という書籍も出版しました。さらに詳しく知りたい方は、ぜひご覧いただければと思います。

まとめ

今回は、荒井さんに、子どもが支援機関を利用したくないと感じる理由や、個人情報を聞かれることの苦痛、子どもの視点からつくる支援について伺いました。ポイントを以下にまとめます。

  • 子どもが支援を利用したくないと感じる大きな理由の一つに、「恥ずかしさ」がある。社会福祉の歴史を振り返ると、施設収容や劣等処遇といった背景から、支援を受けることへの抵抗感が生まれるのも無理はない。
  • 支援を受けるために、個人情報や自身の生活状況を開示すること自体を、屈辱的だと感じる場合もある。
  • ケア労働に従事する女性の賃金の低さなども踏まえると、若者にとっての正しい選択は難しく、風俗を選ぶことが必ずしも不合理とはいえない。
  • 専門家によるアウトリーチだけでなく、当事者同士のアウトリーチなども通じて、本人にとって何が最善なのかを一緒に考えていくことが大事だ。

次回は、具体的な活動内容と、活動する中で大事にしている理念をご紹介します。

※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません

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