2026年5月26日に、子どもに向き合う全国各地の支援者が学び/知見/意見をシェアするオンラインイベント「こども支援ナビMeetup」の第31回が開催されました。
今回は、今回は、あらかわ子ども応援ネットワーク(以下、AKON)代表であり、一般社団法人子ども村ホッとステーション(以下、子ども村ホッとステーション)代表理事でもある大村 みさ子氏をお迎えし、「子ども支援を“点”から“面”へ―あらかわ子ども応援ネットワークに学ぶ、居場所支援と地域連携の具体的実践 ―」というテーマで一人ひとりの子どもへの支援から、地域全体で子どもを支えるネットワークづくりまで、実践を発展させてきた過程と思いをお話しいただきました。
イベントレポート第3回では、AKON設立の経緯や、ネットワークだからこそ実現できる支援についてお届けします。
連載第1・2回はこちら:

プロフィール:大村 みさ子氏
元高校教師、区立小学校の支援員、区主催無料学習支援の会のスタッフを経験したことなどで、地域で子どもたちの支援をすることの必要性を強く感じ、地域の中の子どもたちの居場所として「子ども村ホッとステーション」を2014年に立ち上げた。
荒川区子育て支援課主催学習支援「学びサポート」コーディネイトスタッフ、荒川プレーパーク研究会代表を務める。
AKON設立の経緯と地域ネットワークづくり
AKON設立のきっかけは、2015年度に荒川区が子どもの居場所づくりへの助成を開始したことです。
区主催の助成団体同士が繋がる連絡会がきっかけでしたが、「その後、民間主体で子ども食堂や、様々な子ども支援の団体に声をかけ再スタートし、現在では3ヶ月に1回の定例会を行っています。
また、背景には荒川区自治総合研究所による子どもの貧困や社会的排除に関する調査があります。研究を通して、「どの子どもも貧困状態になり得る」という視点が区全体で共有されたことで、子ども食堂だけでなく、「子どもの居場所づくり」そのものを支援する土壌が築かれました。
そして、2017年頃には子ども食堂が急速に増えたことで、子どもを支える地域の活動はどうあるべきかを、改めて考えるようになりました。
そこで私たちが大切にしたのが、「隣の子どもの手をつなぐ」という考え方です。一つの団体だけで子どもを支えるのではなく、地域全体で子どもを見守るため、参加団体同士で協力し、活動日を調整しました。その結果、現在では月曜日から日曜日まで毎日、区内のどこかで子ども食堂や居場所が開かれ、子どもたちは毎日どこかに通える環境が整っています。
現在、AKONには約50団体が参加しています。小規模な子ども食堂や居場所づくり団体、民生委員による活動、食の支援に限らず子どもを支える団体、そしてそれらを応援する団体など、多様な主体が連携しています。立場や活動内容は異なりますが、「一人の子どもを地域全体で見守る」という共通の目的のもと、それぞれの強みを生かしながら活動しています。
行政と民間が支え合う地域ネットワーク
現在、AKONには子ども食堂や居場所づくり団体だけでなく、荒川区役所のさまざまな部署や児童相談所、教育委員会も参加しています。例えば、活動を続ける中で、フードパントリーや環境・リサイクルなど、関係する部署へと連携が広がっていきました。また、社会福祉協議会が事務局を担い、大学や中学校のPTA連合会、仏教会など、多様な団体も加わっています。
このネットワークでは、行政や学校などの関係機関から「支援が必要な子どもがいる」という情報を受け、子ども食堂や居場所に繋ぐ仕組みがあります。一方で、居場所で子どもや家庭の困りごとに気づいた際には、行政や専門機関へ繋ぎ、必要な制度や支援を紹介しています。つまり、民間だけでは対応できない部分を行政が支え、行政だけでは届きにくい子どもを民間が支えるという、双方向の連携が実現しています。
また、ネットワークを通じてさまざまな連携も生まれています。例えば、地域施設の利用協力や、不登校の子どもが居場所で過ごす時間を一定の条件のもとで学校の出席として認める仕組みなど、行政との連携だからこそ実現した支援もあります。
ネットワークだからこそ実現できる支援
AKONでは、3か月に1回の定例会だけでなく、より実践的な連携を進めるためにテーマごとの部会も設けています。これまで、不登校になったときの相談先や支援の流れをまとめた冊子の作成や、イベントへの共同参加、不登校の保護者が支援者と交流する「つなカフェ」、ボランティア説明会などもネットワーク全体で実施してきました。部会を通じて立場や世代を超えた「縦横斜め」の繋がりが生まれ、風通しが良くなったと実感しています。
また、毎月第3日曜日にはフードパントリーを開催し、多くのボランティアや企業、大学生、地域団体が協力しています。食材の運搬や段ボールの回収なども地域の企業や団体が担っており、それぞれの強みを生かしながら支援の輪が広がっています。
さらに、ネットワークでは団体同士の情報共有も積極的に行っています。同じ子どもが複数の居場所を利用している場合には、関係する団体が定期的に集まり、子どもや家庭の状況を共有しながら支援の方向性を話し合っています。子どもの支援を担う団体と保護者支援を担う団体が役割を分担するなど、一つの団体だけでは難しい支援も、ネットワークだからこそ実現しています。
こうした連携を積み重ねることで、ネットワーク全体の信頼も高まり、教育委員会から新しく活動を始める団体にAKONへの参加が勧められるようになりました。
何より、子どもにとって居心地のよい場所は一人ひとり異なります。だからこそ、小規模な居場所も大規模な居場所も、それぞれが地域の中で活動を続け、多様な選択肢があることが子どもたちにとって大切だと考えています。
子どもを中心に繋がる「ソーシャルファミリー」
AKONの中でも、私たちは「ソーシャルファミリー」という感覚を大切にしています。それぞれの活動の違いを評価したり比べたりするのではなく、「自分たちにはない強みを持っている」と認め合うことを大切にしています。「子どものために何ができるか」という視点を大きな軸にしているからこそ、多様な居場所があることの重要性を共有できているのだと思います。
この考え方は、行政との関係にも通じています。行政職員や学校の先生は異動が多いものの、子どもの支援に携わっている限り、また別の立場で一緒に取り組む機会があります。だからこそ、お互いのできること・できないことを理解し合いながら、関係を築いていくことが大切です。特に、行政の皆さんが私たちの活動を理解しようとし、現場の状況を知ろうとしてくださることは、何よりありがたいと思います。
AKONのこれからと次世代への継承
AKONの今後の課題は、活動を支える財源の確保です。行政も参加するネットワークであることから、あえて法人格を持たずに運営しており、そのため活用できる助成金が限られ、現在は寄付に支えられている部分も少なくありません。今後は、こうしたネットワークを持続的に運営するための仕組みづくりが必要だと感じています。
一方で、さまざまな活動を通じて多くの若い世代が地域の子ども支援に関わり、その経験を生かして新たな活動へと羽ばたいています。こうした人のつながりが次の世代へと受け継がれていくことも、ネットワークの大きな力だと感じています。
AKONが目指しているのは、現在の活動の「形」をそのまま残すことではなく、子どもを地域で支えるという「流れ」を次の世代へ繋いでいくことです。コロナ禍のように、これまで当たり前だった活動が大きく制限される状況は、今後も起こるかもしれません。その際に、大きな流れを作っておくことで、その時々の状況に適した具体的な支援が生まれると思います。
また、現在活動に参加している高校生たちにも、「今後この活動を行うのはあなたたちよ」と伝えています。活動そのものを受け継ぐだけではなく、「自分たちで作っていくことを考えてね」と伝えています。
まとめ
今回は、大村さんに、行政と民間が連携したネットワークや、ネットワークで行われている連携について伺いました。ポイントを以下にまとめます。
- AKONでは地域の居場所が開催される日程を調整するなど、一人の子どもを地域全体で支えられるよう、それぞれの強みを生かしながら活動している。
- AKONには、居場所づくり団体だけでなく、荒川区役所のさまざまな部署や児童相談所、教育委員会なども参加している。行政と民間が双方に連携することで、より多くの子どもたちに適切な支援を届けている。
- 行政と連携する際も、「ソーシャルファミリー」の考えを念頭に、互いの強みを認め合うことを重視している。
- AKONの今後の展望として、子どもを地域で支えるという理念を大事に、時代に応じた支援を行うことを目指している。
次回は、講演後の質疑応答の様子をお伝えします。
※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません
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