子ども同士が長時間一緒に過ごし、関係性を作っていく子どもの居場所。子ども同士の関係に、大人がどれくらい関わり、どのような声かけをすればいいのか難しさを感じる方もいるのではないでしょうか？
今回は、認定NPO法人Learning for Allで居場所づくりに関わる吉原聡子さんにお話を伺いました。
後編では、子ども同士が遊んでいる場面や喧嘩が起きてしまった場面で、大人はどのように関わっているのかについてお話しいただきます。
前編はこちら：
関連記事はこちら：
プロフィール：吉原聡子
LFA職員。大学卒業後、鉄道会社で商業施設の広報販売促進、中学校英語科教諭を経て、LFAに入職。居場所拠点にて拠点長として勤務している。趣味はライブや演劇鑑賞、植物を育てること、犬を観察すること。
子ども同士の遊びへの関わり
—子どもたちへの介入の仕方に特に悩む場面の一つとして、子ども同士が遊んでいる時があると思います。遊んでいる場面ではどのような意識で子どもと関わっていますか。
子どもの遊びでは、必ずしも大人が子どもたちの関係に関わらなければいけないわけではなく、子どもたちを積極的に巻き込んで遊びを進める場面がありつつ、子ども同士で関わることが出来ていたら自然に様子を見る側に回る遊び仲間でいることを意識しています。
私は大人が入らないと関係を築くことが出来ないのは少し不自然なことで、初対面の子ども同士が関わり合えるきっかけを大人がつくることはありますが、子ども同士で関われていることが自然な状態だと考えています。ですので、子ども同士、子どもと大人、大人同士、どの組み合わせで遊んでいても良いかなと思いますね。
子ども同士の中に大人が入って遊んでいる時も、常に子どもの一挙手一投足に対してアンテナを張っている感覚ではなく、自分自身も一緒になって楽しんでいることが多いです。遊びの中で起こる子ども同士のトラブルは、急に発生するというより雲行きが怪しくなる流れがあるので、雲行きの怪しさを感じ取れるくらいの意識を持って過ごしています。例えば、日頃の様子を知っている大人だからこそ、家庭の事情で子どもがしんどさを抱えている時期や、普段の人間関係と違う様子が見られた時は、いつもよりケア的な意識を持つようにしています。
—子どもが子ども同士で遊ぶのではなく、大人と遊ぶことを求めてくる場合もあると思います。子どもから遊びに誘われる時はどのように考えたらよいのでしょうか。
なぜ大人を呼んでいるのかという子どもの思いを考えるようにしています。深く考えていくと、大人が一緒にいる以外の方法の方が、今のその子の本当のニーズを満たせる場合もあります。
例えば、子どもは寂しい気持ちがあって大人と一緒にいたい場合もあれば、大人を呼ぶことで友達との気まずい雰囲気を解消したい、という場合もあります。大人を呼ぶという行動の背景にどのようなニーズが隠れているのかを考え、一旦そばにいることもありますし、周囲の環境を調整して場を離れることもあります。子どもが表出させている要望の裏にある真の願いを考えて関わる姿勢は常に大切にしていますね。
その他の場面でも、子どもが何を求めて居場所に来ているのかを聞きとることで、子どもへの関わり方を考えています。例えば、コミュニケーションが苦手という子は、その分自分自身と向き合う時間が多いので、自分の「好き」を明確に持っていたりします。その子が一緒に遊ぶ仲間を欲していれば、その子の好きなものを中心に他の子と繋げる試みをします。子ども同士が自分の好きなことを共有できる掲示板を設ける、子どもたちが好きなコンテンツでイベントを開催するなど、好きな気持ちをその子の中に閉じるのではなく、周りと共有して話すきっかけを作るような工夫をしたり、共通の好きなものがある子ども同士を大人が紹介したりしていますね。
画像：Loose Drawing より作成
—他に子ども同士が関係性を作るサポートとして行なっている働きかけはありますか。
1日に1回は大人がその場にいる全員に声がけをして、トランプなどを開催しています。参加は自由ですが、全員に声をかけるようにしています。子どもは自分から新しい人に声をかけることが難しかったりするので、大人が全員に声かけをして、いつも関わらない人も混ぜてみんなで遊ぶ機会を意図的に作っています。はじめはゲームの輪に参加しない子でも、毎日声をかけていることで、他の子と関わってみようという気持ちが出てきた時に輪に参加することができるようにしています。
また、イベントを企画することもあります。イベントの中でペアで活動したり、作品を展示してみんなで感想を言い合う機会を設けることで、子ども同士が自然と関わるよう意識しています。
子ども同士の喧嘩が起きてしまった時の関わり
—子どもたちで喧嘩が起きてしまった時の関わり方は、どのように考えていますか。
まず、暴力や暴言があった場合はすぐに止めに入ります。一方で、子どもたち同士で解決に向かっていくことも大切であると考えていて、口調が強くても相手を傷つけるような言葉が出ていなければ、一旦見守るようにしています。喧嘩の当事者ではない子も、同じ居場所で過ごす存在として無関係ではないので、大人と一緒に喧嘩の様子を見守っていたりします。
ただ、子ども同士の喧嘩では論点がずれたり、パワーバランスが崩れて一方的な物言いになってしまったりすることがあるので、そうなったら喧嘩を止める前にまず論点を戻すサポートをします。子ども同士の言い合いが堂々巡りになりそうな時は、一旦別々に話を聞いて気持ちを落ち着かせたり考えを整理することもあります。
怒りは二次的な感情で、怒りの前に悲しさや悔しさなどの別の感情があることが多いので、子どもたちから話を聞く時には、怒る前にどのような気持ちがあったのかを聞き、子どもが怒りの前に持っていた自分の気持ちに意識的になれることを大事にしています。
画像：photoAC
子ども同士は、お互いのことがすごく好きなのに、気持ちのすれ違いで喧嘩をしてしまうことも多いです。なので、大人が子ども同士の距離感の調整や気持ちの確認をしてあげることが必要な場合もあると思います。
—子どもが大人に対して「〇〇ちゃんにこんなことをされた」と訴えたり、助けを求めてくる場合はどのように関わっていますか。
大人もその場面に居合わせたのであれば、自分も場の一員として感じたことを言います。一方で、大人が関わっていない場面で起きたことであれば、事実が分からないこともあるので、両者に言いたいこと言ってもらう時間を設け、大人は当事者にならない中立的な立場をとるようにしています。
大人が意見を伝える時に感情を入れてしまうと「どっちの味方なのか」という議論になってしまうので、事実と感情を分けて考えることを大切にしています。子どもにも、客観的な事実を伝えることで、「嫌なことをされたから相手が悪い」という理解で終わらずに、自分の視点からは見えていなかったこともあることに気がついてもらえるよう意識しています。
一方で、嫌だったという気持ちに寄り添う姿勢も大事にしています。スタッフが役割分担をして、事実を客観的に伝えることと気持ちに寄り添うことの両方を行えるようにしています。
まとめ
今回は、吉原さんに、子ども同士が遊んでいる場面や喧嘩が起きてしまった場面で、大人はどのように関わっているのかについて伺いました。ポイントを以下にまとめます。
- 子ども同士の遊びでは、自分自身も楽しむことを大切にしながら、子どもの真の願いを捉え、子ども同士の関係づくりをサポートしている。
- 子ども同士の遊びでは、大人が全員に声かけをしたり、イベントを企画して、いつも関わらない人も混ぜてみんなで遊ぶ機会を意図的に作っている。
- 子ども同士の喧嘩では、事実と感情を分ける意識を持ち、子ども同士での解決のサポートをしている。
※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません
この記事は役に立ちましたか？
記事をシェアしてみんなで学ぼう
