【連載第4回】子どもたちの”選択肢”を増やすための包括的な支援とは~一般社団法人チョイふるの実践事例~(こども支援ナビ Meetup vol.22)

2024年6月27日に、子どもに向き合う全国各地の支援者が学び/知見/意見をシェアするオンラインイベント「こども支援ナビMeetup」の第22回が開催されました。

今回は、一般社団法人 チョイふるの代表理事 栗野泰成氏をお迎えし、「子どもたちの”選択肢”を増やすための包括的な支援とは」というテーマで、食糧支援を入口としたワンストップの支援とはどのようなものなのか、他の団体とどのような協働体制を構築しているのか、現状の課題や今後の展望などについてお話いただきました。

イベントレポート第4回では、認定NPO法人Learning for All の宇地原氏をモデレーターに迎え、参加者との質疑応答の様子をお届けします。

過去の連載はこちら:

【連載第1回】子どもたちの”選択肢”を増やすための包括的な支援とは~一般社団法人チョイふるの実践事例~(こども支援ナビ Meetup vol.22)
【連載第1回】子どもたちの”選択肢”を増やすための包括的な支援とは~一般社団法人チョイふるの実践事例~(こども支援ナビ Meetup vol.22)
【連載第2回】子どもたちの”選択肢”を増やすための包括的な支援とは~一般社団法人チョイふるの実践事例~(こども支援ナビ Meetup vol.22)
【連載第2回】子どもたちの”選択肢”を増やすための包括的な支援とは~一般社団法人チョイふるの実践事例~(こども支援ナビ Meetup vol.22)
【連載第3回】子どもたちの”選択肢”を増やすための包括的な支援とは~一般社団法人チョイふるの実践事例~(こども支援ナビ Meetup vol.22)
【連載第3回】子どもたちの”選択肢”を増やすための包括的な支援とは~一般社団法人チョイふるの実践事例~(こども支援ナビ Meetup vol.22)

 

 

プロフィール:一般社団法人 チョイふる 代表理事 栗野 泰成 氏
1990年、鹿児島県生まれ。大学卒業後、小学校教員・JICA海外協力隊での教育現場を経て、2021年に一般社団法人「チョイふる」を設立し、代表理事に就任。
社会経済的に困難を抱える子どもたちが、既存の支援にたどり着けない・頼れる存在がいないといった「本来はたくさんある”はず”の選択肢を、身近に感じられないこと」に問題意識を感じる。
そのため、Choicefulな社会を実現するため、困窮子育て家庭を対象に、①食品配達を通じた見守り ②居場所づくり ③生活相談支援事業を展開している。

 

プロフィール:認定NPO法人Learning for All 子ども支援事業部 エリアマネージャー 宇地原 栄斗 氏
1995年生まれ、沖縄県那覇市出身。
沖縄県立開邦高校を卒業後、東京大学教育学部に進学。
大学時代からLFAでのボランティア、インターン活動に取り組み、子ども達への支援を行う。2019年、新卒でLFAに入職し、現場のスタッフ・マネージャーを務める。
現在は東京都葛飾区、埼玉県戸田市、茨城県つくば市のエリアマネージャーを担当。
2023年度4月より子ども家庭庁が設置する子ども家庭審議会のこどもの居場所部会において委員を務める。2023年度4月より葛飾区くらしのまるごと相談事業推進委員会委員を務める。

 

最初に食料支援で繋がるきっかけを

画像元:認定NPO法人Learning for All

ー参加者)最初の接点である食料支援はどのように対象世帯とつながれているのでしょうか?

栗野:最近は行政からの紹介や、スクールソーシャルワーカーさんが学校で気になる子に対してサービスを紹介するといった形が多いですね。

最初の方は行政の紹介などは全くなかったので、足立区内でシングルマザーの支援などをされている団体さんから繋いでいただいたり、利用した方の口コミで広がったり、そういった形で繋がっていきました。

宇地原:皆さん、やはり一度食料支援を利用してからは、継続して利用される方が多いですか?

栗野:そうですね。基本的には継続してご利用いただいているのですが、ただずっと食料支援をできるわけでもないので、どこかのタイミングで卒業を促したり、定期的に面談などを行いながら生活の立て直しができたと判断できたタイミングで卒業いただいたりしています。

宇地原:わくわく便の希望者殺到しませんか?という疑問もいただいているのですが、この辺りはどうですか?

栗野:そうなんですよね。なので最近は募集してますとオープンに言うのをやめました。先ほどの情報の非対称性の話にもつながるのですが、自分から情報を取りに行ける人はいろいろな情報に自分でたどり着ける人なので、できるだけ口コミか行政からのつながりに限定してクローズドでやっています

複数団体が関わる民間版こども家庭センターの苦労

ー参加者)民間版こども家庭センターというワンストップで相談から支援機関や支援情報に繋げるまでを行う機能を作ろうとした時に苦労した(している)ことはありますか?

栗野:民間版こども家庭センターの構想は、言うのは簡単ですが、本当に実現することが難しいと思っていて、日々壁にぶち当たっています。

例えば、他機関と連携しようとしても同じ目的でやっている団体さんはあまりいないことが多くて、ただ単にネットワークを作ろうとしてもうまくいかないというのがこれまで何回かやってみて感じたことです。

あとは個人情報の取り扱いがすごく難しいですね。各機関で情報を共有しないと同じことを何回もご家庭に聞かなければならなくて負担をかけてしまうことがあるのですが、連携してどこまで情報を共有するかは難しいところです。

宇地原:地域にいろいろな関係機関がいる中で連携していく難しさはありますよね。特に僕らも活動する中で、支援団体や支援する人の価値観をすり合わせていくことの難しさやお互いの機関への期待と実際の動きのギャップを感じることがあります。こうした難しさや思い違いは日々あることかなと思うのですが、こうしたところで栗野さんが心がけられていることなどありますか?

画像元:認定NPO法人Learning for All

栗野:それで言うと、なんとなくネットワークを作らないという点を意識しています。目的がぶれてしまうと何のために集まってる会なのかよくわからなくなって、だんだん人が抜けていって、ネットワーク自体も盛り下がってしまうという状況がよくあるので。

まずは目的を明確にして、そこに賛同していただける団体さんから徐々に徐々に広げていくというやり方を今はとっています。

実は民間版こども支援センターは今3団体で運営しているのですが、その前は10団体ぐらいに加盟してもらっていて、いろいろなことがあって3団体に落ち着きました。なので、そうした実体験があって、今は本当に同じ課題意識を持っている団体と少しずつ広げていこうとなっています。本当に焦って進めるとうまくいかないなというのを感じているところです。

多様なニーズに他団体との連携で対応していく

ー参加者)チョイふるは子育てを中心に家庭・子どもに寄り添っているという印象を持ったのですが、子どもの進路選択といった観点で活動されていることはありますか?

栗野:私たち自身やりたいなと思いつつ、まだまだやりきれてない部分ですね。今後は進路にあたって奨学金の活用サポートだったり、あとは自分たちが学習支援をするというよりは、他団体さんにチョイふるの居場所を使ってもらって学習支援をしていただいたりしながら、子どもたちの進路相談、キャリア相談に活動の幅を広げていけるといいなとは思っています

宇地原:ありがとうございます。まさに活動の様子を聞いていて、ありとあらゆる相談事が舞い込んでくるんではないかなと思ってまして。もちろんいろいろな手を駆使してサポートをしていくかとは思いますが、行政でも民間でも、一団体だけで全てを賄うというのはとても難しいのかなという気がしていました。そういった子ども・家庭の多様なニーズと自分たちの活動とのギャップは感じますか?

画像元:認定NPO法人Learning for All

栗野:いや、本当にそれしか感じないですね。無理だなというのはずっと感じていたので、ワンストップの窓口をつくっていろいろな子ども支援の団体に繋げられるようにしようという発想になりました

私たちは学習支援を行えるリソースや余裕は正直ないので、マイナスからゼロ・ゼロからプラス、という支援の考え方があるときに、私たちがマイナスからゼロまでサポートしてそれ以降の学習支援だったり進路の支援だったりは他の団体さんに接続するといった考え方の方がうまくいくんじゃないかなと思っています。

「ないのだったら作る」で支援者の負担を減らしていく

ー参加者)信頼関係を築く中で他機関に繋げる支援をしたいけど、繋げる先がなかったり他機関と子どもが繋がるのに時間がかかったりして、結果的にチョイふるさんの中で子どもや家庭を抱え続けて負担が大きくなるといった課題はありますか?

宇地原:これはおそらく「あります」という結論になると思うんですが、それに対してどのように取り組まれているのかも含めてぜひお聞かせいただきたいです。

栗野:課題はありますね。繋ぎ先がある場合はいいのですが、結構複雑なパターンとか、そもそもつないでもしょうがないという場合は、自団体で抱えてしまっているのが現状です。

今のままだとただ自分たちが抱えるものが大きくなっていってしまうので、先ほど紹介したスキップという枠組みもそうですが、ないのだったら作る」という考え方を政策提言も含めて今後していかないといけないなと思っています。

「これだけ繋げ先がない」としっかり定量化・可視化して、それを政策提言などを通して新しく作っていかないと、本当に現場が疲弊して終わるだけだなとも感じていたりするところです。

まとめ

今回は、一般社団法人 チョイふる代表理事の栗野さんに、食料支援で貧困世帯と繋がるきっかけや民間版「こども家庭センター」設立の苦悩、多様なニーズに対応するための他団体との連携や新しい枠組みづくりについて伺いました。ポイントを以下にまとめます。

  • 他団体との価値観・活動目的のすり合わせは難しいが、ネットワークを作るときには目的を明確にしてそれに賛同してくれた人と徐々に始めていくようにしている。
  • 自団体で全てのニーズに対応するのではなく、総合相談窓口を作って必要な機関へ繋げていける枠組みを作りたいと思い、民間版「こども家庭センター」を設立した。
  • 繋ぎ先がない場合に「ないのだったら作る」という考えを政策提言も含めて今度していく必要がある。

※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません

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