拠点で子どもがスマートフォンを長時間使っていたり、見知らぬ相手とやり取りをしていたり、宿題の答えをAIに聞いてそのまま写していたり――。子どもたちのインターネットやSNSの使い方について、心配に感じる場面は増えているのではないでしょうか。
しかし、保護者や学校の先生とは異なる立場にある「第三の大人」は、どこまで関わってよいのか悩むこともあると思います。そもそも自分が声をかけてよいのか、どこまで踏み込んでよいのかと戸惑うこともあるかもしれません。
そこで今回は、千葉大学教育学部教授の藤川 大祐氏にお話を伺いました。支援者が知っておきたいインターネット利用の重大なリスクや、支援者としての関わり方について詳しく解説していただきます。
前編では、子どもたちのインターネット利用に伴う課題をお聞きしました。
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プロフィール:藤川 大祐(ふじかわ だいすけ)氏
千葉大学教育学部教授(教育方法学・授業実践開発)。1965年、東京生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得満期退学(教育学修士)。メディアリテラシー、ディベート、環境、数学、アーティストとの連携授業、企業との連携授業等、さまざまな分野の新しい授業づくりに取り組む。青少年のインターネット利用やいじめ防止対策等についても実践的な取り組みに関わっている。
子どものインターネット利用をめぐる課題
—子どもたちのインターネット利用をめぐっては、スクリーンタイムや知らない人とのやり取りなど、さまざまな懸念が挙げられています。その中で、特に大きなリスクとして考えられているのはどのようなことでしょうか。
大きく3つの課題を挙げるとしたら、
- 長時間利用
- 犯罪被害
- ネットいじめ
だと考えています。
それぞれ詳しくご説明します。
1. 長時間利用
子どもたちのインターネット利用でまず気になるのは、利用時間の長さです。平日の平均利用時間は1日あたり5時間30分となっていて(出典:こども家庭庁)、生活時間のかなりの部分を占めています。
中でも、ゲームや動画視聴といった娯楽目的の利用が中心となっています。学習に活用される時間もありますが、趣味や娯楽に使われる時間は平均で約3時間にのぼります(出典:こども家庭庁)。こうした利用が増えると、家族と過ごす時間や睡眠、運動、勉強など、子どもたちにとって大切な他の活動時間がインターネットに置き換えられてしまいます。
本来、子ども時代は幅広い経験や活動を通じて成長していく大切な時期です。しかし、他の時間を削ってまで長時間利用していると、その使い方が依存的な利用になってしまうことも心配されます。
—ここでいう「依存」とは、どのような状態を指すのでしょうか。
病気としては医師の診察が必要ですが、目安としては「社会生活に支障が出るほど使ってしまう状態」と考えるとわかりやすいと思います。例えば、大事な試験の前にゲームや動画を観てしまい、勉強に取り組めない場合は依存傾向があると考えられると思います。依存傾向があるとされる人は一定数いると言われている(出典:国立成育医療研究センター)ので、心当たりがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
もちろん、医療的な支援が必要とされるほど深刻なケースの人数は限られると思います。ただ、長時間利用が続くことで生活リズムが崩れ、昼夜逆転が起きたり、学校に通うことが難しくなったりする場合には、一度医療機関に相談してみることをおすすめします。

画像:pexels
—どういった理由で依存や依存傾向に至るのでしょうか。
多様な悩みを抱える子どもたちにとって、インターネットを使っている時間だけはそれを忘れられる、ということも少なくありません。思春期はもともと自分自身について悩みやすい時期ですが、そこに学校や家庭での悩みが重なると、現実から逃れる手段として頼ってしまうこともあります。
インターネットに救われる面があること自体は否定されるものではありませんが、その「救われる感覚」が強くなるほど、さらに利用が増えやすいことには留意しなければいけません。
生成AI(注1)の台頭によって、海外ではチャットボットにたくさん相談して依存的になってしまうケースが報告されるようになっています。チャットボットは24時間365日、いつでも自動的に応答してくれるので、好きなだけやり取りができ、依存的な利用が促されてしまうのです。日本ではそのような話はまだあまり聞きませんが、依存の心配は高まっています。
(注1)生成AIとは、自らデータを学習することによって、オリジナルの新しいコンテンツを生み出せるAIのこと。例として、自動的にテキストを生成できるChatGPTやGeminiが挙げられる。
—どの年代から利用時間に気を配ると良いですか。
中学1年生が一番気をつけるべき年代だと思います。というのも、小学生の頃は保護者の端末を使って連絡を取るケースも少なくありませんが、中学校に入ると多くの子どもが自分のスマートフォンを持つようになるからです。部活動も始まって先輩との関わりも生まれることで、SNSを通じたコミュニケーションが高まります。
一方で、中学1年生は発達の面ではまだ未熟な部分もありますよね。そのため、心が不安定になったときについインターネットを使いすぎてしまったり、周囲の雰囲気や悪ノリに流されて思わぬトラブルに繋がったりするケースも多いです。
—最近、SNSの使用が子どもに与える影響が問題視され、禁止する国も出てきましたが、どのような点が問題として挙げられているのでしょうか。
写真や動画を通じて、他人の「良い一面」ばかりを目にすることで、劣等感を抱きやすくなる点が一番指摘されています。実際には、誰もが常に良い状態で過ごしているわけではありませんが、そうした一面だけが切り取られて発信されることで、「自分だけがうまくいっていない」と感じてしまい、自己肯定感が下がることがあります。
また、ネットいじめの問題も見過ごせません。些細なきっかけで攻撃される、いつ攻撃されるかわからない不安を抱えるなど、インターネットがなかった頃には存在しなかった新しい問題も生じています。
2. 犯罪被害
次に、犯罪の被害に遭うこともかなり深刻なリスクです。とりわけ、性的な被害と闇バイトが大きな危険となっています。
①性的な被害
性的な被害というと、児童売春や援助交際が想像されるかもしれませんが、それ以外にもさまざまな形の被害が報告されています。例えば、「自画撮り被害」と呼ばれるものは、子どもを騙して猥褻な写真を撮影させて拡散したり、拡散すると脅して要求をエスカレートさせたりする被害を指します。
また近年では、SNSで知り合った相手の家に、保護者に知らせずに泊まるケースも見られます。未成年の子どもを保護者の同意なく泊める行為は、誘拐罪にあたる可能性があり、実際にそのような状況から性的な被害に繋がる事例も報告されています。
—子どもたちはどのように危険な大人と出会うのでしょうか。
ここ数年は警察から詳しいデータが公表されていませんが、X(旧:Twitter)やInstagram、TikTokなどのSNSを通じて被疑者となる大人と出会い、被害に遭うことが多いと言われています。Xは複数のアカウントを作りやすいため、援助交際を目的としたアカウントを作る人もいて、それを通じてやり取りが始まるのです。
Xで知り合った後は、LINEやテレビ会議ができるアプリなど、1対1でやり取りができるツールに移り、外部から見えない閉じた空間でコミュニケーションが続く事例が多いです。閉ざされた場で性的な写真や動画を送らせたり、悪質な情報を共有するグループ内で拡散されたりする被害も報告されています。

画像:pexels
—被害者は、やはり女子が多いのでしょうか。
そうですね。データからは、女子の被害が多いことが読み取れると言っていいと思います。たとえば、以下の資料には児童ポルノの被害者の男女別人数が載っており、多くが女子です。

画像:「令和7年における少年非行及び子供の性被害の状況」P.19(警察庁生活安全局人身安 全・少年課)
ただし、男子だからといって被害が起きないわけではありません。男子同士の間でも、恥ずかしい思いをさせるいじめなどが起きることもあります。
—その他にも、性的な被害に関して注意しておきたいことはありますか。
赤の他人からの被害だけではなく、身近な人との関係の中でも被害が起きうることは知っておくと良いと思います。例えば、元々付き合っていた男女間ですれ違いがあった際に、リベンジポルノ(注2)のような形で画像や動画が拡散されることもあります。
(注2)リベンジポルノとは、元配偶者や元交際相手などの性的画像や動画を、復讐や嫌がらせ目的で拡散すること。
②闇バイト
また、闇バイトにも注意する必要があります。
闇バイトが広がっている背景として、「隙間バイト」が増えていることが挙げられます。隙間バイトを通じて稼ぎたいと考えている若者も多く、正規のアルバイトと区別がつきにくいのが問題になっています。
以前は信頼できる求人情報が人材会社を通じて掲載されていましたが、現在ではSNSを使って企業が個別にアルバイトを募集できるようになりました。その結果、募集元を十分に確認しないまま応募し、身分証などの個人情報を渡してしまう事例も見られます。そうした情報が脅しの材料となり、犯罪に関わらざるを得なくなることも増えています。
—他にも気をつけておくべき犯罪被害はありますか。
成人年齢が18歳に引き下げられたことから、高校生の段階から保護者の同意なしに契約を結ぶことができ、詐欺被害に遭っていることも心配です。件数としてはまだ多くありませんが、今後増える可能性もあります。
3. ネットいじめ
学校がいじめ自体をしっかり把握するようになったこともあり、近年いじめの認知件数が急上昇しています。その中で、高校生では15%前後、中学生では約10%、小学生では1〜2%のいじめがインターネットで起きていると言われています。(「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」P.33より)典型的な例として、嫌なことを言われたり、嫌な写真や動画を拡散されたり、仲間外れにされたりすることが挙げられます。
さらに、いじめかどうかがわかりにくいものも結構あります。例として、「ステメいじめ」と呼ばれるものがあります。これは、LINEのステータスメッセージ(注3)に、特定の相手を想定した悪口を書き込む行為を指します。相手の名前が直接書かれることはほとんどありませんが、周囲の人が見れば誰のことを指しているかは明白で、書かれた方はもちろん傷つきます。
しかし、「自分への悪口だ」と客観的に証明することは難しく、被害を周囲に訴えにくいという問題があります。勇気を出して声を上げても勘違いだと非難され、かえって恥ずかしい思いをしてしまうこともあります。
このように、証拠が残りにくく、被害を訴えにくい点が、ステメいじめのような最近のいじめの特徴だと言えるでしょう。
(注3)LINEのステータスメッセージ(通称:ステメ)とは、LINEアカウントのプロフィールや友だちリストに表示される一言メッセージのことで、自身の気持ちや状況を表現することができる。

画像:写真AC
オンラインで広がる居場所と可能性
—これまではデメリットについて伺ってきましたが、最後にインターネット利用の良い面についても教えてください。
多様な人との繋がりや機会を通じて、自分自身の世界を広げられることだと思います。SNSを使っていろいろな方々から学んだり、自身の作品などを直接世の中に発表できたりすることは非常に素晴らしいと考えております。
また、幅広いコミュニティに属することができるのも魅力に感じますね。例えば、「推しアカウント」を通じて、アニメやゲームなど共通の趣味を持つ人と交流を楽しむ人も多く、身近に仲間がいなくてもオンラインで繋がれる点は意義があるでしょう。
まとめ
今回は、藤川さんに、インターネット利用に関する注意点について伺いました。ポイントを以下にまとめます。
- 子どものインターネット利用の第一の課題として、長時間利用が挙げられる。特に、近年では睡眠、運動、勉強など、他の時間が犠牲となり、インターネット利用が増えている。社会生活に支障が出る場合は、依存傾向にあると考えられ、深刻な場合は医療機関への相談もおすすめされる。
- 犯罪被害には、性的な被害と闇バイトの大きく2つがある。性的被害は自画撮り被害、SNSで知り合った人の家に泊まって性的な被害を受けるなど、さまざまな形態がある。SNSで知り合った後、閉じたコミュニケーション空間で子どもと仲良くなる手口も見られる。また、闇バイトは隙間バイトと区別できず、個人情報を送ってしまうことによって生じやすい。
- ネットいじめも深刻な課題である。インターネット上では証拠が残りにくく、いじめかはっきりわからない点が特徴的である。
- 推しコミュニティに所属するなど、インターネット利用にはもちろん良い側面もある。
後編では、子どもとの関わり方のコツや声掛けのポイントをお伺いします。
※本記事の内容は専門家個人の見解であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません
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