2023年6月22日に、子どもに向き合う全国各地の支援者が学び/知見/意見をシェアするオンラインイベント「こども支援ナビMeetup」の第16回が開催されました。
本イベントでは、認定NPO法人育て上げネットの執行役員である山本賢司氏をお招きし、子ども支援と若者支援の両方に取り組んでいる知見をもとに、「若者支援に取り組む立場から、子ども支援に取り組むみなさんに知っておいていただくと良いこと」を中心にお話していただきました。
イベントレポート第2回では、若者支援の人・団体・組織を選ぶときの視点2つ目である「段階・ニーズ・サービス・スタイル」について詳しく解説していきます。
2. 段階・ニーズ・サービス・スタイルをチェック
ここからは、若者支援のなかでも「はたらく支援(就労支援)」について詳しくお話していきます。
就労支援の種類と公的な支援団体
就労支援には大きく3つの段階があると考えています。
画像:認定NPO法人育て上げネット
下から順に、就労のための土台づくりである「就労準備」、スキルをつけるための「能力開発」、そして最後に内定獲得を支援するための「就職支援」です(詳細上画像内)。就労支援に対するイメージは人それぞれあると思いますが、これら3つの段階があることを覚えておいてもらえればと思います。
次に、この就労準備・能力開発・就職支援の支援は、それぞれどこで受けられるのかを確認していきましょう。
画像:認定NPO法人育て上げネット
就職支援は、職業紹介があるところとないところがあります。職業紹介があるところで有名なのはハローワークです。就職の相談はもちろん、求人票を見られたり紹介状を出してもらえます。
地域若者サポートステーション(サポステ)は、職業紹介がありませんが、自己理解や職業理解、応募先検討、応募書類の作成などのサポートを個別で丁寧に行っています。ハローワークでも同様のサポートはありますが、より丁寧な支援を受けたい場合はサポステがおすすめです。
能力開発は、職業訓練機関・教育訓練機関などが行っています。多種多様な職業に関する訓練を行っているので、詳しく知りたい場合は「ハロートレーニング」をチェックしてみてください。
私がこれまで関わってきた能力開発領域の方はとても熱心で、受け入れたからにはとにかく育てて就職まで面倒を見るという姿勢の方が多く、信頼して若者をつないでいます。全国で利用できるリソースであることも強みです。
難点としては、若者がやりたいと思う職業につながる訓練があるとは限らない点が挙げられます。しかし逆に言えば、きちんとコースがあるということはその職業にニーズがあり、就職までつなげていける、つまり雇用の受け皿があるということでもあります。
就労準備は、合宿型と通所型があります。合宿型のメリットは、合宿をきっかけに家から出て、新たな環境に身を置けることです。環境を変えて生活リズムや体調を整えたい方には合宿型の就労準備も選択肢になるでしょう。通所型は、生活困窮者自立支援制度の就労準備訓練のほか、育て上げネットをはじめとするNPOが行うサービスがあります。
今回は公共機関を中心に紹介していますが、ハローワークなどで「合う求人」が見つからない場合には、民間の求人サービスを利用するのも手です。求職者側はほとんどのサービスを無料で利用できるので、ニーズに合わせて活用してみましょう。
段階・ニーズ/課題に合わせた支援サービスの選び方
次の図は、「はたらきたい」という子ども・若者に対して、どのように適切な支援サービスを選んでいけばいいかについて、私の考え方を図にしたものです。
画像:認定NPO法人育て上げネット
「はたらきたいが準備が必要」という段階で「何から始めればいいかわからない」というニーズ/課題がある場合は、就労準備やサポステ、フリースペースなどの居場所につなげるのが良いでしょう。このような場合は進路未決定等から「社会的ブランク」が生まれやすいので、「何から始めるか」を一緒に考えてくれるであろう場所へ繋ぎ、支援が途切れないようにすることが大切です。
ハローワークとサポステ、医療機関とサポステ、のように複数の支援サービスを併用する選択肢もあります。
この図を参考にして、はたらくことを希望する子ども・若者が身近にいる場合は、それぞれの段階やニーズ/課題に合わせて適切な支援サービスや団体につなげてあげると良いと思います。
サービス提供のスタイル
支援サービスを選択するときにもう一つ見ておきたいのが、サービス提供のスタイルです。
画像:認定NPO法人育て上げネット
アウトリーチ・宿泊・通所・オンラインの大きく4つのスタイルがあります。
ちなみにアウトリーチは家庭訪問だけではありません。夜回りなど家以外の場所でつながるための活動も含まれています。家庭訪問については、宿泊の共同生活型で支援しているNPOや公的機関が行っています。気をつけていただきたいのは、本人の意思と関係なく暴力的な形で「外」に連れ出そうとする悪質な民間組織があることです。きちんとした対応をしてくれる事業者かは、当事者の部屋の「ドアを開けるタイミング」をどのように考えているかで判断できます。ドアを開けるプロセスに対して納得のいく説明がない事業者や支援者には依頼しない方が良いと断言できます。
宿泊型の中の共同生活型は、24時間365日支援者が一緒にいる、いわゆる寮型の支援サービスです。常に支援者が一緒のため安心感はありますが、子ども・若者にとっては良し悪しや向き不向きがあります。入所ありきで進めるのではなく、体験入寮などがあればそのような機会も活用しながら丁寧に進める必要があるでしょう。
サービスのスタイルとして多いのは通所型です。サポステはほぼ全国にあり、予約・申込型で利用する支援サービスとなっています。予約・申込型は自分で予約したり予定を管理したりする必要があり、気がついたら予約を忘れてしまって行かなくなっていた、ということがあるのがネックです。もちろん、支援機関・団体によっては足が遠のいている場合にフォローの連絡をしてくれることもあります。心配な場合は、この辺りの対応についても事前に聞いておくと良いでしょう。
一方、定期利用型は、利用する日が決まっているので、連絡なく欠席していると支援者側から連絡してもらえます。育て上げネットでは、この定期利用型の自主事業を行っています。
オープン型はフリースペースや居場所と呼ばれる支援サービスが該当します。出入り自由のため、気軽に自分のペースで通えるのがメリットです。ただし、支援サービスの効果は場の力量によって左右されるため、通っているだけとなってしまうことがある点は注意した方がいいでしょう。
オンラインには、自習型と伴走型があります。自習型はeラーニングサイトで自主的に学ぶことです。自習型は自分から進んで学べているということなので見ている方からすると安心感がありますが、自習ができる場合でも出口や期限を意識させることが重要だと考えています。もし就労準備や就職まで伴走できるのであれば、資格を取った後どうするのかまで意識させる関わり方ができるといいでしょう。
一方、学んだ後どうするかという関わりまでセットでやってくれるのが、オンライン型の伴走支援です。伴走型は、子ども・若者に合う支援サービスが周りにない場合や、外出が難しい場合の支援として選択肢の一つになります。
このように、若者の就労支援にはさまざまなサービス提供のスタイルがあります。本人の特性や家庭事情・経済事情などを考慮し、本人に一番合った形のサービスとつなげてあげられると良いでしょう。
まとめ
第2回では、認定NPO法人育て上げネットの山本さんに、若者支援のサービスの概要や段階・ニーズ/課題に合わせた選び方、サービス提供スタイルの違いについて伺いました。ポイントを以下にまとめます。
- 就労支援には、就職支援・能力開発・就労準備の3つの段階がある。
- 支援の段階と本人のニーズ・課題を組み合わせると、その人に必要な支援サービスを絞り込める。
- 就労支援サービスには、アウトリーチ・宿泊・通所・オンラインという大きく4つの提供スタイルがあり、本人の状況に合わせて適切に選択する必要がある。
第3回では、若者支援の人・団体・組織を選ぶときの視点3つ目・4つ目と、育て上げネットで行っている働き方拡張支援について解説していきます。
※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません
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