NPOの活動を始める/継続/成長させるためには資金が必要です。資金調達はまさにNPOの活動の基盤と言えますが、一方で「何から取り組んだらいいのか分からない」「現場を回すのに手一杯で、資金調達に注力できない」など、資金調達について「このままで大丈夫だろうか」という不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
今回は、長期的な視点で資金調達計画を立て、着実に実行していくための「初めの一歩」の考え方について、NPO法人Learning for All(以下LFA)の代表である李さんにお話を伺いました。
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プロフィール:李 炯植
LFA 代表理事。貧困地域で育った原体験から、子どもの貧困問題解決に大学生の頃より取り組む。全国子どもの貧困・教育支援団体協議会理事も兼任。
資金源の特徴を理解して計画の大枠を立てる
NPO法人の資金源は主に①業務委託金、②助成金、③単発の寄付金、④定期継続の寄付金(マンスリーサポーター制度など)の4つに分類することができます。
LFAではまず下の表のように資金源ごとの特徴を捉えました。
画像:LFA作成
一般的に、すぐにまとまった金額が必要な場合には助成金や単発の寄付金、長期的に安定した収入としては定期継続の寄付金が適していると言われています。
寄付・助成金を中心とする寄付型、業務委託を中心とする事業型のどちらでも収入を増やすことは可能ですが、資金調達においては、それぞれの資金源の特徴を理解したうえで自団体の事業戦略に沿った計画を立てることがもっとも重要です。
LFAの場合は幅広い事業を継続的に実施するために、初期は助成金や業務委託で収入を確保し、段階的に大口の単発寄付を獲得、安定してきたら使用使途が自由かつ継続性のある定期継続寄付を増やしていく計画を立てました。
それぞれの調達方法のリスクを考えながら、「数年かけてどのくらいの資金調達額を目指すのか」「その収入の内訳をどうするのか」を具体的に考えることが大切です。
計画の具体化と「初めの一歩」の考え方
計画の大枠を考えた後、「まず何に取り組むか」について考えるために計画をより具体化する必要があります。その際、5W1H、すなわちWhy(何のために)、What(何を)、When(いつ)、Who(誰から)、Where(どこで)、How(どのように)を明確にすることがポイントです。この流れは2つの段階に分けることができます。
①Why、What、When:資金調達計画で「いつどれくらいの資金が必要か」を考える
②Who、Where、How:資金調達実行に向けて「誰からどのように集めるか」を決める
①では先ほど述べた大枠に基づいて、具体的な数値を決めていきます。実際に資金を集める「初めの一歩」を考える段階が②です。LFAでは、②の段階で「ステイクホルダーピラミッド」を作成しました。ステイクホルダーピラミッドを活用すると、顕在的/潜在的なステイクホルダーを洗い出すことができます。
画像:ステイクホルダーピラミッド(LFA作成)
ステイクホルダーピラミッドでは、考えられるステイクホルダーを「自団体に協力的か、否か」「金銭的な協力か、非金銭的な協力か」の2つの軸で洗い出します。
ステイクホルダーを洗い出すことで、例えば「単発の小口寄付者が継続してサポートしてくれるようになるにはどうしたらよいか」、「学生ボランティアが社会人になった後にLFAのマンスリーサポーターになってくれるようになるか」等、「誰に対してどう働きかけられるのか」の可能性をたくさん考えることができます。
これらの打ち手を、「いつまでにどのくらいの資金が必要か」という計画に当てはめて優先度を付け、どの打ち手から手を付けるのかを決めます。優先順位をつける際は、獲得金額やアプローチにかかる時間、継続性の有無等を軸にして考えます。アプローチがしやすく、また獲得金額が大きい且つ継続性がある調達方法が理想的ですが、可能性をできるだけ広く考えることも重要なので、1つのアプローチに固執する必要はありません。
資金調達担当者を置く重要性
現場の業務をやりながら資金調達も同時に進めることは、とても大変だと思います。団体の代表が資金調達担当を兼務することもあると思いますが、代表の忙しさがボトルネックになって資金調達が進まないことも起こり得ます。
そのため、LFAについては、資金調達担当を専任で置き、計画を立ててPDCAを繰り返すことに労力を割いたことが、資金調達の計画実行における成功要因だったと考えています。
まとめ
今回は、LFAの李さんに、資金調達の計画づくりと初めのアクション出しについて伺いました。ポイントを以下にまとめます。
- 資金調達においては、自団体の事業戦略に沿った計画を立てることがもっとも重要
- それぞれの資金源の特徴を理解し、収入の内訳を考える
- 5W1Hを明確にした具体的な資金計画を立てる
- ステイクホルダーピラミッドを活用して、どこにどのくらいアプローチするかを考える
李さん、ありがとうございました!
※本記事の内容は団体の一事例であり、記事内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません
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