学習支援拠点や居場所拠点に通う子どもたちの中には、複合的な困難を抱えている子どもも少なくありません。だからこそ、子どもに関わる地域の大人たちが協力関係にあることは、困難を抱える子どもたちと出会うために、そしてそんな子どもたちに必要なサポートを行うためにとても大切です。
しかし、地域づくりに興味はあるものの、「そもそも子どもに関わる地域の関係者って?」「地域づくりのためにはまず何から始めれば良いのだろう?」といった疑問を持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。この記事では、地域づくりのポイントについてご紹介します。
※本記事は以下の動画記事に基づいて作成をしております。動画でご覧になりたい方は、以下の記事もご活用ください。
地域ネットワークの重要性
困難を抱える子ども達に適切な支援を届けるためには、「確実に出会い、つながること」、そして「一人一人の子どもに最適な支援を届け、つながり続ける」ことが必要です。しかし、これを一個人・一団体のみで実現していくことは困難でしょう。一方地域では、様々な大人が子どもに関わり、子どものために行動しているものの、それぞれの役割の範囲内でしかサポートできないという現状があります。
子ども達に早期から切れ目のない支援を届けるためには、地域の大人たちで子ども支援のネットワークを形成し、お互いの出来る範囲で協力していくことが鍵となります。
画像:LFA作成
地域内ネットワークづくりのポイント
次に、地域内のネットワークを作るうえでのポイントについて2つご紹介します。
「目の前の一人の子どもにとって必要な支援」から考える
最も大切なのは、「目の前の一人の子どもにとって必要な支援は何か」から考えることです。すでに地域内にある程度ネットワークが存在していたり、自治体が主体となってネットワークづくりを行っていたりする場合を別として、初めからネットワークをつくることを目的としても、周囲の理解を得ることは難しいでしょう。
まずは自分の目の前の子どもと真摯に向き合い、その子にとって必要な支援は何かを考えましょう。そして、つながる必要がある大人は誰なのかを考え、少しずつ大人の輪を広げていく必要があります。
コミュニケーション方法
関係者とのコミュニケーション方法においても、工夫が必要です。まずは団体として信頼を得るために、出自を明確にする必要があります。以下のような基礎情報は可能な限り提示しましょう。
- 団体の理念(何を大切にして支援を行っているのか)
- 団体の人員体制
- 過去の支援実績など
また、以下についても合わせて伝えて、自分たちの目指すものが相手に伝わるように工夫することも大切です。
- どのような子ども達を対象にしているのか
- どのような支援を行っているのか
- 通っている子どもの様子など
その際、大人のやりたいことや決めつけではなく、「子ども目線」で支援を設計していることが相手に伝わるように説明するようにしましょう。子どもを預けるのに信頼できる団体だと相手に感じてもらうことが、ネットワークづくりへの第一歩となります。
また、相手を尊重する姿勢も欠かせません。自分のやりたい事だけを掲げて協力を仰ぐのではなく、相手の立場ややりたいことを尊重してコミュニケーションをとりましょう。そうすることによって、共通の目的を持つ仲間になってもらうことを目指すことができます。一人一人の関係者と、人としての信頼関係を築くことがとても大切です。
子どもに関わる地域の関係者
それでは、地域関係者のそれぞれの役割やつながり方についてご紹介します。子どもに関わる地域の関係者は、大きく「自治体」「学校」「地域」の3つに分けられます。
①自治体
まず自治体の取り組みについて詳しく知るために、ウェブサイトを調べることから始めましょう。組織図を確認し、「子ども支援課/子ども未来課」といった名前の子ども支援の担当部署を探します。このような名前の部署が見つからない場合、生活困窮者自立支援制度法の学習・生活支援の関係部署、子ども若者支援計画を策定している部署を探します。地域によっては、家庭支援課や教育部局がその役割を担っている場合もあります。
ウェブサイト内で「子ども若者支援計画」など、子どもに関わる基本計画を検索してみましょう。困窮世帯の子どもたちに、その部署がどのような関わり方をしているかが確認できます。
自治体における代表的な関係者とその役割について、以下の表にまとめました。
関係者 | 役割 |
子ども支援課担当者 |
子どもの貧困に関わる部署の担当者。 |
ケースワーカー |
生活保護受給世帯に定期的に家庭訪問を行い、福祉面の環境を整えるサポートを行う。家庭に対して必要な地域資源の紹介を行うため、子どもと子ども支援団体の架け橋となってくれる場合もある。 |
児童家庭支援センター |
自治体が運営し、主に0〜18歳までの子どもとその保護者が利用できる施設。地域によって接地の有無・担う役割は異なるが、子どもの一時預かりや子育ての悩みや不安を相談することができる。 |
画像:LFA作成
②学校
学校関係者の方々は、子ども達と最も頻繁に関わる存在だと言えます。それぞれの役割について確認していきましょう。
関係者 | 役割 |
校長 |
学校運営や、行政・地域との連携などを司る。 |
教員 |
クラス担任、部活動の顧問など、子ども達の「学びの環境」の提供者であり、最も子どものたちの様子をよく把握している。 |
スクールソーシャル ワーカー |
不登校児童や生徒に関する相談・援助を行う。 |
スクールカウンセラー |
発達面や心理面で困難を抱える子どもたちの相談・援助を行う。 |
画像:LFA作成
学校との連携事例として学校内に民間団体の放課後学習支援が入ったり、学校外の支援拠点を案内したりする仕組みが整ったりした例があります。また、日々子ども達と接する教員の方々は、家庭の事情なども把握している場合も多く、学校の方針にもよりますが、子どもや保護者に地域資源を紹介することも可能な場合があります。子どもたちと確実につながるためにも、協力関係を築けると良いでしょう。
③地域内他団体・地域住民
包括的な支援のためには、地域内の他団体や地域住民の協力も欠かせません。主にNPO等非営利団体や社会福祉協議会が運営する、学習/居場所支援(児童館)・子ども食堂などの地域内の子ども支援団体はもちろん、母子家庭支援施設や若者就労支援団体、日本語学校やフードパントリーなどの他団体の協力があることで、子どもに届けられる支援の可能性が広がります。
地域住民の代表ともいえる町会長も、重要な協力者です。役割は地域によって異なりますが、地域の事情に詳しかったり、地域の催し物の主催をしていたり、地域情報に詳しい人物と言えます。地域に溶け込む子ども支援拠点を目指すために、是非協力して頂きましょう。また、子どもが集まることによる騒音などの問題もあるため、地域住民には挨拶に伺うなど、友好な関係を結ぶための工夫も必要です。周辺住民が、困りごとを抱える家庭を支援団体に紹介してくれる例もあります。
他に児童委員・民生委員も、有力な協力者です。厚労省からの委嘱で、地域の見守りを担当しています。子育てや福祉に関する相談を受け、必要な資源の紹介を行うのが主な役割であるため、子どもと子ども支援団体をつなぐ一助となってくれる可能性があります。
出典:photoAC
地域関係者とのつながり方
これらの地域関係者と実際につながる方法として、まず「ご挨拶に伺う・拠点の見学に来てもらう」という方法があります。この際、基礎情報の提示など、コミュニケーションを取るポイントを意識しましょう。実際の取り組みや子ども達の変化を目の当たりにすることで、団体への信頼感が強まるでしょう。業務などで忙しく、なかなか足を運んでもらえないこともありますが、タイミングを見ながら根気よく声掛けをすることが大切です。
次に、「地域内の催し物に参加する」という方法もあります。これは地域住民とのつながりのうえでは、特に大切です。地域のお祭りやゴミ拾いなどのイベントに子どもたちも一緒に参加することで、地域住民とのつながりを持つだけでなく、地域に開いた拠点を作り上げることができます。結果として子ども達にとって通いやすい拠点となることにもつながるでしょう。子ども達にとっても自分の世界を広げたり、様々な大人と関わる良い機会となると言えます。
つながりを作ることが出来たら、そのネットワークを活かしていくことも重要です。地域の関係者とは、個人情報保護の範囲内で定期的な情報共有・意見交換を行い、子どもにとって最適な支援の形を考え続けられると良いでしょう。
まとめ
今回は、地域づくりについてのポイントをご紹介しました。内容を以下にまとめます。
- 困難を抱える子ども達に適切な支援を届けるためには、「確実に出会いつながること」、そして「一人一人の子どもに最適な支援を届け、つながり続ける」ことが必要。そのためには、地域の大人たちで子ども支援のネットワークを形成し、お互いの出来る範囲で協力していくことが鍵となる。
- 地域づくりの上では、「目の前の一人の子どもにとって必要な支援は何か」から考えることが最も大切。
- 子どもに関わる地域の関係者には、「自治体」「学校」「地域内他団体・地域住民」の大きく3つが挙げられる。子ども達を支援団体につないでもらったり、支援の仕組みを整えたり、地域に開かれた拠点を作るうえで協力が欠かせない。
※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません
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