【連載第2回】初めて学ぶ!子ども支援現場における性教育のいろは②

連載第1回では「子ども支援現場における性教育」について、特に大人が持つべき性教育に対するイメージや心がけを中心に、フリーランスの性教育講師として活動されているにじいろさんに伺いました。今回は、時期ごとの子どもの性的発達や具体的な性教育の方法等について、引き続きにじいろさんに伺います。

【連載第1回】初めて学ぶ!子ども支援現場における性教育のいろは①
【連載第1回】初めて学ぶ!子ども支援現場における性教育のいろは①

時期ごとの子どもの性的な発達

—性教育に関わる上で、子どもの性的発達に関して支援者が知っておくべきことを教えてください。

 小学校低学年から中学年の児童では、性についての疑問を素直に言える子が多いです。また、身体に対する興味関心もあり、身体を面白おかしく捉えていることも多いので、「おしり」「おっぱい」「うんち」といった単語をふざけて発することもあります。異性の身体の違いについては、単に違いとして捉えていることが多いです。

 小学校中学年から高学年の児童では、性についての関心はあるけれども、それを表に出しづらくなる傾向があります。性に関して「恥ずかしい」「いやらしい」「気持ち悪い」という感情を抱くことも多くなります。また、異性を異性として意識し始めるので、教員や保護者であっても異性として意識して接するようになることもあります。さらに、性的な身体の発達が始まる子も多くなるので、性についての話を自分の問題として捉えるようになることも多くなります。

 小学校高学年以降になると、恋愛や性についての話を身近な友達から聞いたり、自分が実際に経験したりということも増え、さらに現実的に性についての話を自分の問題として捉えるようになる子が多くなります。また、「自分とは何者であるのか」といった思春期的な問いともあいまって、性別違和や人間関係で深く悩む子もいると思います。一方でそうした悩みをなかなか身近な大人や友達に相談できないという子も少なくありません。

 そうした話しづらさもあるので、第三の大人としての子ども支援現場のスタッフの存在は非常に重要だと思います。大人だけど何を話しても怒られないし否定されない存在は、子どもたちにとって安心できる存在だと思います。

保護者からの相談が来たら?

—子どもの保護者からの相談への対応についても伺いたいと思います。例えば子どもがアダルトサイトを見ていることについてショックを受けて相談に来た保護者に対して、どのように対応するとよいでしょうか?

 保護者だからこそのショックは計り知れないほど大きいと思います。性教育に携わっている私自身も、我が子のこととなるとまた別で、動揺してしまうことはあります。そのためまずは保護者自身のショックや不安に寄り添ってあげて欲しいと思います。

 また、性についての内容に限らず、保護者が自分の子どもについて他人に相談することは大きな勇気が必要だと思います。そのため、保護者が相談してくれた際には、「恥ずかしい」「情けない」という気持ちが付き纏う中で相談してくれたこと自体にまずは感謝の気持ちを伝えることが大切です。その上で、悩んでいるのは自分だけではなく他の保護者も同じであること、その悩みについてこれから一緒に考えていきたいことを伝えると良いと思います。

子ども同士の性的ないじめや下ネタに遭遇したら?

 

画像:性教育いらすと

—子ども同士の性的ないじめ(スカートめくりやカンチョーなど)や、子どもたちが皆で下ネタを言い合っている場面に遭遇した際、スタッフはどのような対応を心がけるべきでしょうか?

 子ども同士の性的ないじめについては、できればそういう場面を見かけたその場で、スルーせずに声をかけたり止めたりして欲しいと思います。「昔からあったから」「子どものすることだから」と見逃すのではなく、「待った!」をかけることが大事です。しかし、その際も頭ごなしに叱るのではなく、された側がどう思うのか、自分がされたかどうかなどを問いかけながら、してはいけないことを教えることが大切です。また、被害を受けたり傷ついたりしている子どもに対しては、その後のケアが必要です。

 例えば皆で下ネタを言って盛り上がっている場合など、被害を受けたり傷ついたりしている子どもがいない場合であっても、周りで聞いている人の中に嫌な気持ちをしている人がいないかどうかなどの問いかけを通じて、TPOに合わせた振る舞いや性についてのマナーを考えてもらうことが大切です。

 とはいえ、とっさの出来事にスタッフ自身が面食らってしまい対応できなかったり、どのように対応してよいか分からずスルーしてしまうことも時にはあるかもしれません。そういう場合には、対応に迷った自分の素直な気持ちを子どもに伝えても良いと思います。自分主語でのメッセージ(Iメッセージ)が効果的です。そうした迷いや葛藤を共有することで、「なんで今頃になって言われるんだろう」という不満や、頭ごなしに叱られているという感覚は薄れると思います。

 また、以上のように子どもたちが単に面白がってそういうことをしている場合もありますが、子どもたち自身が性虐待や性被害に遭っているが故に、その兆候が行動として表出している場合もあります。例えば小学校低学年の子どもが明らかに性行為の真似事をして笑っている、といった場面に遭遇した場合、「なぜそのような行動をするのか」の背後にある様々な可能性を考えて対応して欲しいと思います。

—スタッフの見えない場所で、子ども同士の性的ないじめが起こっていることもあると思います。そのような場合、子どもたちからスタッフへの相談や訴えが子どもたち自身の心身を守ることに繋がると思います。そうした相談や訴えを子どもたちができるようになるために、どういう声のかけ方が重要だと思いますか?

 子どもたちが何か小さいことでも相談したり訴えたりしてくれた際に、その内容や気持ちをまずは受け止め、相談や訴えに向き合うことが大切です。そうした小さな行動の積み重ねの上に信頼関係が出来ていくことで、子どもが仮に性的ないじめを受けたり性被害に遭ったりした際にも、子どもがそのことについて相談したり訴えたりすることができるようになります。

 そうした対応の前提には、大人が子どもを子ども扱いするのではなく、ひとりの人間として尊重するという信念があります。子どもからの相談や訴えがあっても、子ども扱いして「大丈夫だよ」「気にしすぎだよ」と言ってしまうと、子どもは自分の気持ちを言えなくなってしまいます。そしてそれは特に「嫌だ」「ムカつく」「怖い」といったネガティブな気持ちに関して当てはまるように思います。周りに合わせて自分の気持ちを出さなくなったり、「これを言ったら悲しませてしまうのではないか」と大人の気持ちを忖度して本音を言えなくなったりしてしまいます。

読者へのメッセージ

—最後に、読者の方に向けてメッセージをお願いします。

性教育に関して「間違ってはならない」「正解しなければならない」というプレッシャーを感じる必要はありません。性教育は生活の一部なので、どうか肩の力を抜いて、子どもたちと一緒に学んで考えていってください皆で出来ることからやっていきましょう!

まとめ

今回は、性教育講師のにじいろさんに、時期ごとの子どもの性的発達や具体的な性教育の方法等について伺いました。ポイントを以下にまとめます。

  • 子どもの性についての捉え方は時期によって異なり、成長するにつれ自分ごととして捉えるようになる
  • 保護者からの相談に対しては、まずはショックや不安を受け止め、みんなの課題として一緒に考えていく
  • 子ども同士の性的ないじめや下ネタを見かけたらスルーせず、できるだけその場で注意する
  • 子どもからの相談や訴えに真摯に耳を傾け、いざという時に子どもが気持ちや考えを主張できるような関係性を作ることが大切

全2回に渡り、にじいろさんに「子ども支援現場における性教育」のいろはについて伺いました。にじいろさん、ありがとうございました。

 

企画協力:性教育サイト「命育」https://meiiku.com/

医師・専門家の監修で、年齢に応じた包括的な性教育の情報(子どもへの具体的な伝え方、専門家によるお悩みQ&A、セミナー情報など)を発信している。

 

※本記事の内容は専門家個人の見解であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません

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