【連載第1回】初めて学ぶ!子ども支援現場における性教育のいろは①

日々子どもと接する中で、「赤ちゃんはどうやってできるの?」など、性的な内容に関する素朴な質問をされてドキッとした経験はないでしょうか。性教育への社会的な関心の高まりも踏まえ、今回は「子ども支援現場における性教育」について、フリーランスの性教育講師として活動されているにじいろさんにお話を伺います。

プロフィール:にじいろ
思春期保健相談士、元養護教諭
小学校、高等学校の養護教諭を経験。退職後、フリーランスの性教育講師として活動中。子どもから大人までを対象とした講演活動、相談活動を行っている。 Twitterでも性教育の情報を発信中。
Twitterアカウント:https://twitter.com/beingiscare

 

性教育を考える上で、まず大切なこと

—性教育について、まず最初に知っておくべきことを教えてください。

多くの大人は、性教育に対して偏ったイメージを持ってしまっていたり(例えば「性教育=性交や妊娠などの話」といったイメージ)、強い抵抗感を持ってしまっていたりします。そのため、まずは性教育についてのイメージチェンジをする必要があります。「性教育=子どもたちが安心して心身ともに安全・健康に生きていくための大切な話」という捉え方をすることが重要です。

そのように性教育を捉えると、性教育は大切なことだけれど特別なことではなく、日常生活の一部として行われるものだということが分かります。しかし、私たち大人の中にも性教育について学んでこなかった人が多いと思います。そのため、「子どもたちに教育しなければ」という態度ではなく、「子どもたちと一緒に考えていこう」という態度の方が性教育に取り組むハードルは下がると思います。

また、大人が持っている性教育に対するイメージや態度は子どもに伝わりやすいので、大人が性教育に対して「恥ずかしい」「簡単に触れてはいけない」と思っていると、子どももそのように思うようになってしまいます。子どもたちに性教育を「日常生活の中の大切な話」と思ってもらうためにも、性教育をタブー視しない雰囲気、性のことについて話しやすい関係性を作ることが大切だと考えています。

親でも教師でもない「第三の大人」だからこそできること

—親でも教師でもない第三の大人という立場から、性のことについて話しやすい雰囲気をつくるためにはどのようなことができるでしょうか?

第三の大人だからこそ、子どもたちが親や教師には話しづらいことを打ち明けてくれたり、普段は見せていない素の自分を見せてくれたりすることがあります。だからこそ、親や教師に聞いたら怒られそう、と子どもたちが思うようなことでもフランクに聞けるような、明るい雰囲気をつくっていけると良いと思います。

実際の雰囲気作りに際しては、例えば何か性に関する本などを本棚に置いておくといった工夫ができると思います。子どもたちがその本に興味を惹かれ、子どもたち同士で盛り上がっている時などは、むしろ性教育の機会です。

子どもから、性について質問された場合の対応

画像:いらすとや

—そうした雰囲気づくりや環境構成の工夫の結果、子どもたちが素朴な性の疑問についてスタッフに聞いてくれることも増えると思います。そのような状況に遭遇した際、スタッフはどのように対応すると良いのでしょうか?

「スルーはしないけれども、かといって過剰に反応しない」ということが大切です。「そんなこと聞かないの!」などと過剰に反応してしまうと、それ以降子どもたちが性についての疑問をスタッフに聞くことはなくなってしまいます。他方で、疑問について聞こえないふりをしたり、適当にごまかしたりすると、子どもたちは「この大人は自分たちと対等に向き合ってくれない」と感じてしまいます。そのため、「怒らない」「逃げたりごまかしたりしない」「嘘をつかないという3つの原則を大切にして欲しいと思います。この原則は性教育に留まらず、子どもとの関わりの基本だと思います。

また、子どもたちの質問の中にも色々な種類があります。単純に知識として知っているかどうか聞かれる場合(例えば「セックスって知ってる?」「セックスって何?」と聞かれるなど)もありますが、個人的なことを面白がって聞く場合(例えば「彼氏/彼女いる?」「セックスしたことある?」と聞かれるなど)もあります。後者の場合、子どもたちは大人の反応を見て面白がっていることも多いので、「スルーはしないけれども、かといって過剰に反応しない」という原則は変わりませんが、スタッフにとってプライベートなことは答えなくて良いです。つまり、そうしたことに興味を持っていること自体は受け止めつつ、プライベートな内容だから答えられないこと、そうしたことを聞かれるだけで嫌な気持ちになる人もいるということを伝えることが大切です。そうすることで、質問をしてきた子ども自身も、もし自分が聞かれて嫌だと思ったときには「答えたくない」と言っても良い、と教えられる機会にもなります。また、年齢にそぐわないと思われるような内容について質問された場合は、その言葉をどこで知ったのかを尋ねることも大切です。

まとめ

今回は、性教育講師のにじいろさんに、大人が持つべき性教育に対するイメージや心がけについて伺いました。ポイントを以下にまとめます。

  • 「性教育=子どもたちが安心して心身ともに安全・健康に生きていくための大切な話」であり、日常的に行われるものという認識を持つことが大切
  • 第三の大人だからこそ子どもたちが普段親や教師には話しづらいことを話してくれる可能性がある
  • 性についての質問を子どもからされた場合には、「スルーはしないけれども、かといって過剰に反応しない」ことが大切

次回も引き続きにじいろさんに、子ども支援現場における性教育について伺います。

【連載第2回】初めて学ぶ!子ども支援現場における性教育のいろは②
【連載第2回】初めて学ぶ!子ども支援現場における性教育のいろは②

企画協力:性教育サイト「命育」https://meiiku.com/

医師・専門家の監修で、年齢に応じた包括的な性教育の情報(子どもへの具体的な伝え方、専門家によるお悩みQ&A、セミナー情報など)を発信している。

※本記事の内容は専門家個人の見解であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません

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