【後編】子どもが虐待されているかも?と思った時の対応方法

困難を抱える子どもの中には、養育環境が不十分で、虐待を受けてしまっている子どもも少なくありません。支援現場で子どもと関わる中で、「これって虐待なのかな?」とお悩みになった経験がある方も少なくないのではないでしょうか。

今回は、「子どもが虐待されているかも?」と思った時の対応方法について、ソーシャルワーカーとして活躍されている竹田さんにお話しを伺いました。
前編では、虐待の特徴やそれぞれの虐待が子どもに及ぼす影響についても伺っておりますのでこちらもご覧ください。

前編はこちら

【前編】子どもが虐待されているかも?と思った時の対応方法
【前編】子どもが虐待されているかも?と思った時の対応方法

 

プロフィール:竹田ゆきえ
Learning for All 子ども支援事業部。大学卒業後、ソーシャルワーカーとして精神科医療機関で勤務。重度の精神疾患を抱える患者さんや、救急対応が必要な精神状態の方の地域での生活を支援し、児童精神科でのソーシャルワーク業務にも従事した。その後、JICAボランティアとしてドミニカ共和国で活動。子ども時代の経験がその後の人生に与える影響の大きさ、生まれた環境による選択肢の違いを感じた。2020年6月からNPO法人Learning for All に入職。「ありのままの自分で良い」と思える子ども時代とそれを応援できる社会を実現したい。最近ハマっていること:K-POPの歌やダンスを練習し、子どもたちと楽しむこと

虐待かも?と思った時にスタッフが行うべきこと

━━虐待を発見した時にスタッフがまずすべきこと、対応の流れについて教えてください。

以下のような流れになります。

①虐待の発見

虐待は「疑い」の時点で通告の義務(通告は児童虐待防止法第6条で定められた全ての国民の義務)があるので、見つけたら必ず行政(児童相談所や各自治体担当課)に通告をします。

子どもに対して、いつもとは違う違和感(様子、傷・あざなど)を感じた時や、子ども自身の話を受けて虐待かもしれないと感じた時は、まずは通告することが大切です。虐待かどうかや虐待の詳細については専門機関が判断するため、少しでも疑いを持った時点で通告をしましょう。

子どもが自ら虐待の相談をしてきた場合、できるだけその場で話を聞いてあげることが大切です。ただし、子どもが訴えてきた内容に関してどこまで話を聞くのかについては注意が必要です。

特に、性的虐待に関する訴えがあった際には「子どもが自発的に語る場合を除いて、通告前や司法面接の前に支援者から子どもに被害の詳細を聞くことは望ましくない」という決まりがあります。

性的虐待の被害事実は、専門研修を受けた公的機関の第三者による司法面接で調査される必要があるからです。場合によっては、通告・司法面接前に被害児童と支援関係にある人が聞いた情報は裁判では誘導や示唆性につながると見なされ、結果的に裁判で子どもが不利になることがあります。

さらには、何度も話を聞かれることは子どもに心理的負担を与えることにもなります。自分の話を信じてもらえないと感じたり、開示を撤回する心理的特性もあります。虐待の確証や、本人の確認がない状態で全く問題はありません。疑った段階で通告することが重要になります。

②団体内での共有・行政への通告

知り得た範囲で報告・通告をしましょう。通告後の対応は、行政が主体となるため、対応について指示を仰ぐことになります。

通告の際には、「どうして虐待と感じたのか」という内容を伝えることが最優先です。次に、今その子どもがどこにいるのか、もし自分の近くにいるのであれば現在のその子どもの様子をお伝えすると良いと思います。

それ以外の情報(その子の名前や住所など)は、もし分かればお伝えすれば良いものの必須事項ではありません。通りすがりの人でも通告できるので、「あまり情報がないから通告できない」とならずに、まずは通告して良いと思います。

③虐待を受けた子どもへの対応

虐待を受けていることが確実になってからも、在宅での支援が適当と判断され、保護はされずに在宅のまま支援が進むことがあります。

治療をするのは専門機関の役割ですが、子どもの心理的回復や健全な発達のために何ができるのかを支援現場で考え、対応することが求められます。

私がソーシャルワーカーとして関わる現場では、まずは、子どもにとって支援現場が安心安全な場所であると伝えることを何よりも大切にしています。

虐待対応をしたスタッフのケアも忘れない

━━直接子どもの虐待対応をしているスタッフのメンタルケアも重要かと思います。何か意識していることはありますか?

虐待事例の対応は、その子の訴えを通じて被虐体験を共有することにも繋がり、子どもとのやりとりの楽しさや成長を感じる喜びとはかけ離れた経験となります。そのため、スタッフのメンタルケアは非常に大切だと感じています。

基本的には「ひとりで判断する場面を作らないこと」「気持ちを吐き出す場を作ること」意識しています。

子どもへの対応方法についても、スタッフ間、もしくはソーシャルワーカーを交えて話合いをする場を設け、自分一人で判断する場面がないように気をつけています。
また、「虐待対応をした時に感じたこと」などについて、個別に打ち合わせ時間を設定し、気持ちを吐き出す場を設けることも意識しています。

よくある質問

①虐待に関するフローを作るとき、何を参考にしたらよいでしょうか?

虐待対応について、スタッフ間で共通認識を取るためにもマニュアル・フローを作成しておくことは重要です。
例として、一般的な虐待報告時の論点を下記に記載します。

  1. 虐待の発見
    1. 虐待を発見するためのチェックリストの作成
  2. 発見直後から通告までのフロー
    1. 発見者は団体内の誰に報告をするのか
    2. 誰が行政に通告するのか
  3. 通告以降の当日中の対応フロー
    1. 当日中の対応について、どの関係者で取り決めるのか
    2. 対応内容について、誰にどこまで共有するのか
  4. 通告実施日以降の対応フロー
    1. 通告後の子ども対応方針について、どの関係者で取り決めるのか
    2. 対応方針について、誰にどこまで共有するのか

その他、虐待対応についての基本的な情報が子どもの虐待対応の手引き/厚生労働省に掲載されています。判断に困った際には参照してみてください。

②親も子も虐待と捉えていない、支援者も確信が持てないときであっても虐待通告をしても良いのでしょうか?

判断に迷うということは「虐待の疑い」に当てはまります。

虐待の判断をするのは専門機関の仕事なので、疑ったときは迷わず通告をしましょう。

「通告」というとネガティブな印象を抱きますが、「専門機関への相談」だと思ってもらえれば良いと思っています。通告をしたものの、結果的に虐待ではなかったのならそれで良く、むしろ虐待が発見できず子どもが命を落としてしまう方が問題だと考えています。

児童相談所虐待対応ダイヤル「189」にかけるとお近くの児童相談所につながります。少しでも違和感を感じた場合は、ぜひ通告をしてください。

③「他の人には言わないで」と言われた場合はどのように対応すれば良いのでしょうか?

「あなたがこれ以上怖い思いをしたり、傷付いたりしないように、他の人にも相談したい」「今の状態は、あなたにとって決して良いとは思えない。みんなで改善策を考えたい」などと子どもに伝えて、他スタッフに状況を報告しています。

どうしても子どもが納得してくれない場合でも、「誰にも言わない」という約束はせず、子どもがいない場所で他スタッフに報告をするようにしています。

また、「他の人には言わないで」という子どもにはその理由を聞くことも大切だと思います。子どもに理由を聞いてみると「児童相談所の人が来て、お友達と一緒に帰る約束を破ってしまうのが嫌だ」という理由であったこともあります。子どもの気持ちやその言葉の背景を把握することも大切にしています。

まとめ

竹田さん、ありがとうございました。
最後に子どもの虐待への対応方法について、ポイントを以下にまとめます。

・虐待の疑いには通告の義務がある。判断に迷う場合も、「虐待の疑い」としてまずは通告する
・通告時には、内容を詳しく聞く必要はなく、「どうして虐待と感じたのか」という内容を伝えることを最優先とする。
・通告後の子ども対応においては、子どもにとって支援現場が安心安全な場所であると伝えることを大切にする
・虐待対応を行ったスタッフのケアも重要。ひとりで判断する場面を作らず、気持ちを吐露できる環境を作ることでケアを行う。

竹田さんから、スタッフ間で共通認識を取るためにも虐待対応のマニュアル・フローを作成しておくことが大事だとお話がありましたが、こども支援ナビのメルマガ/LINE@では、参考資料としてNPO法人Learning for All で作成された虐待対応のマニュアル・フローを共有しています。気になる方はメルマガ/LINE@にご登録のうえ、のちに配信される限定コンテンツフォルダをご確認ください。

※本記事の内容は専門家個人の見解であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません

 

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