2025年12月16日に、子どもに向き合う全国各地の支援者が学び/知見/意見をシェアするオンラインイベント「こども支援ナビMeetup」の第29回が開催されました。
今回は、特定非営利活動法人Chance For All(以下、CFA)の代表理事である中山 勇魚氏をお迎えし、「子どもの幸福度と『あそび』の価値:Chance For All が実践する、子どもの”やりたい”に寄り添う居場所づくり」というテーマで、CFAの問題意識や活動内容についてお話しいただきました。
イベントレポート第3回では、CFAが提唱する社会のモデルと、活動の中で大切にしていることをお伝えします。
連載第1回・第2回はこちら:

プロフィール:中山 勇魚(なかやま いさな)氏
特定非営利活動法人Chance For All 代表理事。
早稲田大学教育学部卒業。日本放課後学会副会長、東京都学童保育協会副会長等歴任。学生時代から学童保育の現場で働き、29歳で「こどもたちのための学童保育」CFAKidsを開校。こどもの主体性と民主的な場づくりを重視した取り組みが共感を呼ぶ。学童、駄菓子屋、公園や大学等多様な環境で居場所やあそび場を運営。また、日本で初めて「放課後の質」を向上させるために作られた制度である「認証学童制度」の提唱や、平時でも被災時でもこどもの権利が保障される社会を目指した全国ネットワーク「J-CST」など社会システムの変革も実践している。TOYP/全国知事会会長賞。キッズデザイン賞/内閣総理大臣賞等受賞。
「居場所・あそび・貢献」が育む自立共生
私たちは、良いコミュニティが育つには「居場所・あそび・貢献」が循環していくプロセスが大切だと考えています。これは人生の中で何度も繰り返されるループで、その積み重ねが「自立共生」に繋がると思っています。
人は、生まれたときは1人で生きていけません。泣くことしかできず、ご飯も自分で食べられません。だからこそ、泣けば応えてくれる人がいる、安心して身を委ねられる場所が必要です。
やがて子どもたちは保育園や幼稚園に入り、慣れない環境に不安を感じます。けれども、少しずつ安心できる居場所を見つけ、あそびを通して仲間と出会います。年長になると、小さな子の面倒を見るなど、自然と誰かを支える立場にもなっていきます。
小学校に入ると、また最年少として不安からのスタートです。けれども、再び居場所を見つけ、仲間と出会い、やがて今度は後輩を支える側へと回っていきます。中学校、高校、そして大人になってからも、新しい環境に入るたびに同じような循環を経験します。
このような循環を重ねることで、人生への安心感や信頼感、そして社会に関わる力が育っていくのではないでしょうか。
次に、「居場所・あそび・貢献」のそれぞれ重要だと考える点をご紹介します。
1. 居場所
私たちは居場所を「いつも、いるだけでいい場所」と表現しています。そこでは、「何かができるからいる価値がある」「何かをできなければいけない」といった評価はなく、ただ存在しているだけで受け止められることが大事だと考えています。
例えば、暴言を使ってしまう子どもが居場所に来ることもあります。もちろん暴言はそのままでよいわけではなく、他の子どもにとっても安心できる場でなければいけません。しかし、「暴言を吐いたからここにいてはいけない」という対応をしてしまえば、それは居場所ではなくなってしまいます。ただ存在しているだけで肯定される経験を得ることが非常に重要です。
2. あそび
私たちは、あそびこそが最高の学びだと考えています。ただし、学びを求めて大人が主導した瞬間に、それはあそびではなくなってしまいます。大切なのは、子ども自身が「これをやりたい」と決めることです。
私たちはよく「小石を撒く」と表現します。大人ができるのは、小さなきっかけを子どもたちの前に置くところまででしょう。その小石を拾うかどうか、何をするかを決めるのは子ども自身です。自分で選び、一歩を踏み出したときにこそ、最高の学びが生まれると思います。
3. 貢献
貢献とは、誰かが一方的に社会に尽くすことではなく、お互いに支え合いながら、共に社会をより良くしていくことです。
人は社会のためだけに生きているわけではないということも大事だと思います。しかし、「自分」も含まれる地域社会に関わり、支え合うことには意味があると思います。「私とあなたが共につくっている社会」だからこそ、互いに貢献し合うことが大事ではありませんか。
子どもたちが今も将来も幸福であるために
活動の中で大切にしているキーワードはいくつかありますが、まずお伝えしたいのは「幸福なくして、教育なし」という考え方です。
子どもたちはよく、「将来のために頑張りなさい」と言われます。けれども私たちは、将来のしあわせのために今を我慢するのではなく、「今、しあわせであること」が大切だと考えています。
子どもにとってのしあわせとは何でしょうか。私は、夜眠るときに「ああ、今日楽しかったな」「また明日も楽しみだな」と思えることだと考えています。そのように、日々希望を持って生きてほしいと願っています。そしてそれは、家庭や学校だけでなく、社会全体で守る責任があると思っています。
また、子どもたちのくらしを子どもたち自身でつくることも大事にしています。子どもを大人が一方的に守る存在として捉えるのではなく、子ども自身も社会の一員として一緒に社会をつくっていくことが重要だと考えているからです。
学童では、おもちゃや折り紙の購入だけでなく、校舎の修繕費なども子どもたちが話し合って決めています。あるとき、室内で遊んでいて壁に穴を開けてしまった子どもたちがいました。通常であれば、大人が叱り、保護者と謝罪し、修繕も大人が手配するかもしれません。
しかし子どもたちに委ねたところ、本人たちが仲間に謝り、修繕費を予算から出してよいかを相談しました。最終的には、地域の大工さんに協力をお願いし、子どもたち自身も作業を手伝う形で修繕を行いました。しかも、ただ元に戻すのではなく、黒板のある新しい壁へと生まれ変わりました。
最近では、地域のお祭りに出店し、子ども自身が企画・運営し、お金を稼ぐ取り組みも行っています。お金をもらうだけでなく、自分たちで収益をあげ、使い道を考える経験も、くらしを自分たちでつくる感覚に繋がっていると思います。
歴史が語る「あそび」の大切さ
実は、あそびの重要性は新しい考えではなく、昔の人々もその意味を深く理解していました。
例えば、後白河法皇は「人は遊ぶために生まれてきたのではないか」と詠んだり、荘子もあそびを「最も目指すべき自由な心のあり方」と考えていたりしました。仏教やヒンドゥー教に見られる「遊戯三昧(ゆげざんまい)」という言葉も、子どもがあそびに没頭するように、何かに夢中になる姿を理想的な生き方を表現しています。それは、他人の評価や社会の尺度に縛られない自由な姿でもあります。
さらに、オランダの歴史学者ホイジンガも「ホモ・ルーデンス」という言葉を残し、「人間とは遊ぶ存在である」と述べています。彼は、人類の文化や社会はあそびを土壌として生まれてきたと指摘しています。
このように、あそびの大切さは古くから語られてきました。私たちが大事にしていることは、新しい思想というよりも、むしろ人類が大切にしてきた価値の再確認なのかもしれません。
テクノロジーが進化し、社会が複雑化する現代だからこそ、もう一度立ち止まり、人として、そして社会として、どう生きていくのかを問い直す必要があるのではないでしょうか。そしてその問いを、大人のみならず子どもたちとともに考え、共に未来をつくっていくことが求められていると感じています。
まとめ
今回は、中山さんに、CFAが考える社会モデルと心がけていることについて伺いました。ポイントを以下にまとめます。
- 良いコミュニティが育つには「居場所・あそび・貢献」が循環していくプロセスが大切。このプロセスを繰り返すことで人生への安心感が養われる。
- 居場所では、ただ存在しているだけで受け止められることが大事。あそびでは、大人が主導するのではなく、子ども自身がやりたいことを決めるのが重要。貢献とは、誰かが一方的に社会に尽くすことではなく、お互いに支え合いながら、共に社会をより良くしていくことを指す。
- 「幸福なくして、教育なし」というキーワードも大事にしている。将来のしあわせだけでなく、子どもたちが今しあわせを感じることも大切である。
- 子どもたちのくらしを子どもたち自身でつくることも重視している。子どもたちは社会の一員で、一緒に社会を形成したいと考えているからだ。
第4回では、質疑応答の模様をお届けし、具体的なあそびや対立のポイント、そして大人の接し方についてお伝えします。
※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません
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