【後編】オンラインで他者と関わる機会を提供する〜For Everyone Studyの不登校支援〜

対面で人と接する場に抵抗を感じている子どもや、拠点に通えない距離にいる子どもでも参加可能なオンラインでの支援。様々な子どもとつながることができる可能性がある一方で、実際に顔を合わせることがない分、子どもとの出会い方や保護者とのやりとりに難しさを感じることもあるのではないでしょうか。

今回は、不登校であったり、学校が苦手な子どもたちを対象にオンラインで支援活動を行っているFor Everyone Study(以下、FES)の代表兼コーディネーターを務める植竹さんにお話を伺いました。

後編では、スムーズに活動を始めるための「マッチング」や、オンライン支援の難しさについてお伝えします。

前編はこちら:

【前編】オンラインで他者と関わる機会を提供する〜For Everyone Studyの不登校支援〜
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プロフィール:植竹 智央 氏
高校時代からボランティア活動を行い、青少年・社会教育・国際交流などの分野を中心に活動。現在はオンライン不登校支援を行うほか、拠点である石岡市のPTA連絡協議会にて、ICT部分のサポートも担うパラレルワーカーの31歳。
茨城県青少年健全育成審議会委員。令和5年度こども家庭庁こどもまんなかアワードにおける「こども・若者活動奨励章」、令和6年度茨城県表彰における「新しいいばらきづくり表彰」受賞。

活動前のマッチング

—ご家庭と繋がったあとは、どのように活動を始めるのですか。

活動を始める前に、子ども、保護者、私(コーディネーター)、担当のボランティアの4者で、zoom上で1時間ほど話をする、「マッチング」を行っています。流れは大まかに以下のようになっています。

  1. 代表(コーディネーター)、担当のボランティア、保護者の3者で話をする(20分程度)
  2. 代表(コーディネーター)、担当のボランティア、保護者、子どもの4者で話をする(10分程度)
  3. ボランティアと子どもの2者で話したり学習したりする(20分程度)
  4. 最後に4者で初回の活動日時を決める(10分程度)

冒頭の保護者と我々の3者で話をする時間では、FESの説明や子どもに関するヒアリングを行っています。

FESについて説明する際には、理念や活動内容、実施の曜日や料金体系などサービスについてだけでなく、特に以下の3点を強く伝えるようにしています。

  • FESの活動は、子どもが学校に行けるようになることを目的とするものではないこと
  • 団体として大学教員と共同研究を行っており、専門家の助言を踏まえて活動していること
  • FESはボランティアによって成り立っていること

1については、保護者の方が、FESの活動を登校刺激のための活動だと誤解してしまわないよう、しっかり説明しています。

2については、FESでは大学教員と共同研究を行っており、保護者の方にもアンケート等のご協力を依頼することがあるため、事前に説明しています。共同研究を実施している背景には、FESでしていることを「良い」活動のままで終わらせたくないという思いがあります。FESの活動から得られる知見をほかの場所でも活かして、より多くの子どもを支えることを目的に、共同研究という形で活動を客観的に捉える機会をもつようにしています。

画像:FES提供

3については、団体を運営する費用のために料金をいただくものの、ビジネスではなくボランティア活動で成り立っていることを説明しています。個別支援を行う学生もボランティアであるため、過度な負担がかからないよう、例えば期末試験の期間には活動が休みになる場合もありうることもありうることを保護者に伝えています。学生がボランティアとして参加することのハードルを下げ、また保護者にきちんと説明をして理解を得ることによって、持続可能な形で活動を行っていきたいと思っています。

ヒアリングでは、子どもの年齢・学年、不登校になった経緯や学習レベルなどを聞いています。これらは活動をする際の注意点にも関わる重要な部分です。例えば、対象の子どもが女の子で、学校で男性の先生が怒っているのを聞き、自分が怒られているように感じて学校に行けなくなったような場合には、ボランティアの学生は女性に依頼するなどの配慮をしています。また、発達障害の有無に関しても、聞ける場合には確認しています。活動の際に子どもが画面の前からいなくなってしまうことがありそうか、子どもの方からたくさん話すタイプの子どもなのかなどを把握しておくためです。そのほかには、子どもの好きなこと、好きなアニメ・ゲームやYouTuberなどを聞いておくと、共通点から話を広げやすくなります。

画像:マッチング用ヒアリングシート(FESで使用しているものを元にLFA作成)

このマッチングのタイミングで、子どもとボランティアの2者になる時間をとることも大切にしています。活動初日に初めて二人きりになるのではなく、まずは保護者やコーディネーターが側にいる環境で顔を合わせることで、安心して活動を始められるようにしています。

活動が始まってからの保護者とのやりとり

—活動前のマッチングでFESの活動について一通り説明しているのですね。活動が始まってからの普段の連絡はどうしていますか。

保護者の方とは、LINEグループで連絡を取ります。それぞれの活動ごとに個別サポートのグループを作っており、代表の私と、保護者、担当のボランティア、FESの運営用の公式ラインアカウントの4者が入っています。

公式ラインアカウントからは、活動回数の確認や更新依頼の連絡など主に事務的な連絡をします。

保護者とのやりとりは基本的にボランティアの学生に任せており、活動の日程調整をしたり、活動の前日にリマインドを送ったりしています。それから学生には活動後に「今日は算数の〇〇をして、英語の△△をしました」「Robloxでこういうゲームをしました」「今日は子どもがいつもよりも自分のことを話してくれました」などの報告の連絡をしてもらうようにしています。

活動で何をしたのかがわかる方が保護者の方にも安心感があると思いますし、運営側としても、「今日はこんな感じでやったんだ」とわかった方が様子が見えてありがたいです。ゲームやYoutubeのことをあまり知らない保護者の方もおり、あまり詳しく報告しても困惑させてしまうので、最低限「こういったことをしたよ」程度の連絡を行っています。

途中で活動が途絶えてしまうことも

—FESの活動の中で難しさを感じることはありますか。

数は多くはありませんが、途中で活動が途絶えてしまうことがあります。特に保護者との連絡が滞ってしまう場合は、スケジュール調整が難航するなどして活動がうまく進まないこともあります。反対に、スムーズに活動が進みやすいのは、保護者の方が困り感を抱えていて、FESの活動に対して協力的な場合が多いです。

ほかには、保護者の方がFESの活動をオンライン家庭教師のように捉えている場合もすれ違いが起きやすいです。FESは成績を上げることを目指すものではなく、学習習慣を身につける場を提供するためのものであるため、それを事前に伝えるようにしています。しかし、学習の遅れに課題を感じていらっしゃるご家庭は勉強ができるようにならないことに納得がいかず、残念ながら支援を終了されることもあります。

まとめ

今回は、For Everyone Studyの植竹さんに、スムーズに活動を始めるための「マッチング」や、オンライン支援の難しさについて伺いました。ポイントを以下にまとめます。

  • 活動前のマッチングでは、活動にあたって配慮が必要な点や子どもが好きなことなどを聞いている
  • 団体と保護者の期待がすれ違わないために、事前にFESの理念や実施体制について説明している
  • 普段の連絡では、日程調整や活動内容の簡単な報告などをしている

※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません

 

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