オンラインでの居場所づくりーNPO法人Learning for Allの事例ー

2020年、新型コロナウイルスの流行、それに伴う緊急事態宣言の発令などにより、子どもたちと対面で会う機会が減少してしまいました。様々な団体の運営拠点では、子どもたちと繋がり続けるためにオンラインでの支援を余儀なくされたのではないでしょうか。
今回は、NPO法人Learning for All (以下、LFA)の居場所拠点を運営している岸本さんに、オンラインでの居場所拠点の実践例について伺いました。

プロフィール:岸本 尚子
Learning for All 子ども支援事業部。日本・モロッコにおける小学校教諭、インテリア系メーカー・商社における開発営業を経て、LFA入職。好きなことはものづくり。あらゆる関係者がそれぞれの強みを生かしてボーダーレスに連携する社会の実現を通して、全ての子どもが自分の可能性に気づき選択できる力を。そしてその先に必ずある幸せを一緒に見つけたい。
最近ハマっていること:月1回の断食

 

居場所拠点とは

LFAの居場所拠点は、子どもが安心して過ごせる居場所として放課後に小学校低学年の子どもたちを受け入れ、共に過ごす場です。学校や行政からの紹介で、経済的困窮世帯のお子さんやその他困難を抱えたお子さんを受け入れています。

居場所拠点では「落ち着いてみんなとの生活を楽しむ環境」「自分のペースで学びを深める力」「遊びと体験・世界を広げる人との出会い」を提供し、子どもの自立する力を養うことを目的としています。

オンラインで居場所拠点を実施するために行ったこと

━━オンラインで居場所拠点を実施するまでの経緯と準備内容について教えてください。

2020年の新型コロナウイルス流行に伴い、子どもたちと直接関わることができなくなったため、「支援を途切れさせてはいけない」という思いからオンライン支援に移行しました。

オンライン支援を行うにあたっては、子どもが使いやすいタブレット・通話アプリの選定から始めました。
「保護者が起動しないと使えない」となると、結局繋がれない子どもたちが出てしまうと思ったので、キッズタブレットなど、子どもだけでも使えるようなものを探しました。

また、使い方についても子ども用の説明書を作成し子どもたちに配布するだけでなく、実際にご自宅に訪問し、使い方を一緒に何度も練習しました。

━━確かに、子ども一人でも使えることが大切ですね。最終的にオンライン支援をするために岸本さんが選んだツールはどんなものなのでしょうか。

ハード機器
タブレットセット(Huawei ファーウェイ53010DWD)
通信アプリ
zoom

タブレットは、使用するアプリのダウンロードや会員登録などのセットアップを完了させ、開いたらすぐ立ち上がる状態にしておきました。
タブレットも通信アプリも、前述した通り「子どもにとって使いやすいか」を選定基準にしています。
その他、通信環境がない世帯の子どもに対してはWi-Fiの貸与も行いました。

オンライン居場所拠点で実施した遊び

━━上記の準備を経て、オンライン居場所拠点ではどのような遊びをされたのですか?

基本的にはオフラインでの居場所拠点と変わらず、子どもたちが行いたい遊びを行いました。そのため、ホワイトボードを用いた絵しりとりや、工作など、普段と変わらない遊びも多いです。基本的には、子どもたちの意見を尊重して、遊びの内容も柔軟に変更しながら行いました。

オンライン拠点開始時には「zoomアプリに慣れるための遊び」を取り入れ、その後は「身体を動かす遊び」を中心的に実施しました。

例えば、zoomアプリに慣れるために、オンライン写真しりとりを行いました。家の中にあるものの写真をとって、それをzoom上で画面共有しながらしりとりをしていくゲームになります。このような遊びを通して、子どもたちに楽しみながらタブレットの使い方を学んでもらえるよう工夫しました。

身体を動かす遊びについては、ストレッチやダンスなどを導入しました。学校休校により、一日中家の中にいる子どもが増え、保護者の方から運動不足に対する心配の声が上がっていたのが導入理由です。身体を動かすものは意識的に取り入れました。ある時は、オンライン上で「だるまさんが転んだ」を行って身体を動かしましたよ!


━━オンライン支援を実施してみて、子ども・保護者からはどのような反応がありましたか?

子どもたちは、自粛期間中で人に会えずつまらないという気持ちを抱える子どもが多かったです。そのため、オンラインでも友達やスタッフ、ボランティアの大学生に会えることを喜んでいました。
保護者の方は、どのご家庭からも「ありがたい、助かる」との言葉をいただきました。
学校や支援拠点は閉鎖していても、保護者の方は普段通り仕事に行かなければならない方も多かったので、そのように肯定的に受け止めてくださる方が多かったと思います。

また、子どもにストレスが溜まっていることや、昼夜逆転生活、運動不足などを気にされている保護者の方も多く、それらの悩みがオンラインでの居場所拠点によって緩和されていることへ感謝のお声もいただきました。


子どもたちとオンライン拠点でピザ作りをしている様子

オンライン支援で工夫をしたこと

━━オンライン支援の子どもたちの参加率はどれくらいでしたか?

当たり前ですが、保護者も一緒に見てくださる世帯の方が参加率は高かったです。
接続に不具合があり参加できない子どもに対しては、LINEや電話を用いて私たちスタッフがその場で解決できるように努めました。
また、「3回欠席した子どもについては連絡をする」とルールを定め、それぞれの子どもが参加できない理由、その対策を行うことで参加率を維持していました。

━━その他に、子どもの参加率を上げるための工夫はしましたか?

オンライン支援を楽しい時間だと思ってもらうこと、参加することに責任を持ってもらうことを意識しました。

1点目について、私たちが実施したオンライン支援では、オンラインで皆で遊ぶ日と、子ども一人ひとりと個別で遊ぶ日の2つに分けていました。
個別で遊ぶ日については、子どもが「やりたい!」と思うことを叶える時間にしていたので、スタッフと一緒にゲームをするなどして過ごしました。
オフラインの拠点では、子どもの数も多く、一人ひとりの希望を満たすことはできないので、個別で遊ぶ日があることで子どもからは「オンラインの居場所拠点が楽しみ」と思ってもらうことができました。

2点目についても、オンライン支援への移行に伴い、「朝の会」を始めました。これは、学校休校期間中でも規則正しい生活ができるように、朝に皆で集まってストレッチや1日の流れの確認をする時間です。
その中で、毎回子どもに「明日の朝の会ではxxちゃんがクイズを作って来てね」など、子どもたちに役割を与えることで、参加することに責任を持ってもらう工夫もしました。

まとめ

岸本さん、ありがとうございました。
最後にLFAの「オンライン居場所拠点」についてポイントを以下にまとめます。

・「子どもが使いやすいか」という視点でタブレットと通信アプリを選定する
・タブレットやアプリの使い方については、わかりやすい説明書を作るだけでなく、場合によっては直接自宅に伺い一緒に練習をする
・子どものしたい遊びを中心に、通信アプリに慣れる遊びや運動も取り入れる
・子どもが楽しいと思う時間や参加する責任を持てる時間を取り入れることで参加率を上げる

※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません

 

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