子どもとのコミュニケーションを行動・思考・感情・欲求で振り返る ーNPO法人Learning for All の事例ー

子どもと関わっていると、時には子どもとのコミュニケーションで上手くいかないこともあるのではないでしょうか。そのような時には、なんとなく対応方法を考えるのではなく、子どもや自分自身の行動の背景にある想い、そして自分の行動が子どもに与えていた影響を振り返ることが大切です。そこで今回は、NPO法人Learning for All (以下、LFA)で実際に行っている、子どもとのコミュニケーションの振り返り方法をご紹介します!

子どもとのコミュニケーションを振り返る目的

子どもとのコミュニケーションを振り返る目的は大きく2つです。

1つ目の目的は、子どもの行動の背景にある欲求に目を向けることです。後でも紹介しますが、子どもの発言や行動の背景には「〇〇してほしい」「〇〇したい」というような子どもの欲求がある場合が多いです。

2つ目の目的は、子どもの欲求に目を向けた上で、関わる大人の行動をどのように変えればコミュニケーションが上手くいくのかを考えることです。子どもの欲求を想像することで、その欲求に合わせて大人の行動を変えることができます。大人の行動が変わることで子どもの行動も変わることが多いので、大人の行動の何を変えるかを意識することが大切です。

このような目的に沿って子どもとのコミュニケーションを振り返らなければ、子どもが持っている欲求を見落としてしまい表面的な関わりをしてしまうかもしれません。「自分の気持ちを大人に理解してもらえていない」と子どもがなるべく感じないためにも、LFAでは子どもとのコミュニケーションを日常的に振り返るようにしています。

LFAで行う振り返り:行動・思考・感情・欲求のフレームワーク

LFAでは子どもとのコミュニケーションを振り返る際に、下の図のような行動・思考・感情・欲求のフレームワークを用いています。このフレームワークは、子どもと大人の行動の背景にどのような思考・感情・欲求があるのかを明らかにするものです。

画像:LFA作成

図にある通り、行動は「実際にとった行動」、思考は「その時考えていたこと・頭の中の独り言」、感情は「その時抱いていた感情を一言で表したもの」、欲求は「その時したかった本質的な欲求・願い」を指します。

行動・思考・感情・欲求のフレームワークを使う時の手順は以下の通りです。

  1. 子どもとのコミュニケーションが上手くいかなかった場面を選ぶ
  2. その場面における子どもの具体的な行動を書く
    子どもの発言や行動・姿勢などを具体的に出来る限り沢山思い出すことが大切です。
  3. 子どもがその行動を取った背景にある子どもの思考を想像して書く
    子どもの立場に立って考えるようにしましょう。
  4. その時の子どもの感情を一言で書く
  5. その背景にあった子どもの欲求・願いを書く
  6. 同じ手順で大人の行動・思考・感情・欲求も記載する

行動・思考・感情・欲求フレームワークの活用例

ここからは具体的な事例をもとに、行動・思考・感情・欲求のフレームワークの使い方を見ていきます。

学習支援の現場で、スタッフが次のような振り返りをしているとします。

画像:LFA作成

スタッフの発言を行動・思考・感情・欲求のフレームワークに当てはめると次のようになるでしょう。図の通り、子どもの行動とスタッフ自身の行動・思考・感情を振り返っている一方で、子どもの思考・感情・欲求とスタッフ自身の欲求はまだ振り返ることができていないことが分かります。

画像:LFA作成

まだ振り返ることのできていない空欄を埋めてみた一例をご紹介します。

画像:LFA作成

こうして振り返ることで、足をバタバタさせるという子どもの行動の背景には「失敗したくない」という本質的な欲求・願いがあったかもしれないということに気づくことができます。さらに、図の中の矢印のように、子どもとスタッフの行動・思考・感情・欲求が相互に作用していたのではないかと考えることができます。自身のちょっとした行動が子どもに影響を与えていたことが見えてくるかもしれません。

子どもの欲求を理解することで、同じような場面に再び遭遇した際に「子どもの方を見ながらゆっくりと話す」「子どもが問題を間違えていても、まずは出来ている箇所を褒める」などの行動を取れるかもしれません。

深く振り返るためのポイント

ここまで行動・思考・感情・欲求のフレームワークの使い方について見てきましたが、子どもとのコミュニケーションを一人で完璧に振り返ることはとても難しいです。そのため、振り返りを行うときには他の人の意見を聞きながら考えることが大です。また、他の人の振り返りも積極的にサポートすると、お互いの振り返りの質が上がるでしょう。

相手の振り返りをサポートする時のポイントは大きく2つです。

1つ目は、まだ出ていない思考・感情・欲求を考えることです。

振り返りの内容に明確な正解はなく、特に子どもの思考・感情・欲求の正解は子どもにしか分からないはずです。正解がない振り返りだからこそ、1人の考えだけでは振り返りに偏りが出てしまうかもしれません。多くの人の意見を入れることで、偏りがなくバランスの良い振り返りにすることができます。

2つ目は、次からどのような行動を取ればいいかを一緒に考えることです。

冒頭でも紹介した通り、振り返りの目的の1つは関わる大人の行動を変えることです。どのように行動を変えれば子どもとのコミュニケーションが上手くいくのかについて、子どもの感情や欲求に寄り添いながら、打ち手を一緒に洗い出してみましょう。

また、過去に同じような経験をしたことがある人がいれば、どのような行動を取っていたのかを聞いてみると参考になると思います。

まとめ

  • 子どもとのコミュニケーションを振り返る目的は2つ
    • 子どもの行動の背景にある欲求に目を向ける
    • 関わる大人の行動をどのように変えればコミュニケーションが上手くいくのかを考える
  • LFAで使っている行動・思考・感情・欲求のフレームワークは、子どもと大人の行動の背景にどのような思考・感情・欲求があるのかを明らかにするもの
  • 振り返りを行うときには他の人の意見を聞きながら考えることが大切
  • 相手の振り返りをサポートする時のポイントは2つ
    • 振り返りにまだ出ていない思考・感情・欲求を考える
    • 次からどのような行動を取ればいいかを一緒に考える

※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません

下記から、行動・思考・感情・欲求フレームワークのワークシートをダウンロードできます。支援現場での振り返りに是非ご活用ください。

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