委託事業や助成金など、様々な資金調達方法がある中でも、安定した財源となる寄付金の獲得は非営利団体にとって必要不可欠かと思います。
NPO法人Learning for All (以下、LFA)コミュニティ推進事業部の石神さんに、企業寄付獲得の実践事例を伺いました。
プロフィール:石神 駿一
LFAコミュニティ推進事業部 事業部長。明治大学政治経済学部を卒業後、株式会社電通にて4年半勤務。メディアバイイング、メディア開発、企業のCIVI開発などを行う。Learning for All では広報・コミュニケーション領域を担当。関わる全ての人が気づきを得ることが出来て、学びを得られるような団体を目指す。最近ハマっていることは筋トレ、ラーメン、ラグビー。
LFAで募集している寄付の種類
ーまず、LFAで募集している寄付にはどのような種類があるか教えてください。
LFAでは大きく分けて、企業寄付と個人寄付をいただいています。企業寄付では、LFAの活動に共感いただいた企業様から寄付をいただいており、何年も寄付を継続いただいている企業様や、寄付だけではなく事業推進のサポートをしていただいている企業様もあります。個人寄付には、マンスリーサポーター、ワンポイントサポーターという2つの仕組みを用意しています。ワンポイントサポーターは1回限りの寄付をいただくもので、マンスリーサポーターは毎月決まった金額の寄付をいただくものです。
企業との繋がりの作り方
ー企業寄付をいただくためには、まず、企業との繋がりを作る必要があると思います。どのように最初の繋がりを作っていますか。
まずは、個人的に繋がっていた企業様に声をかけるところから始めました。友達や知り合いが働いている企業様に声をかけ、その企業の方からまた別の会社を紹介していただくようにしていました。また、各業界の企業が集まるイベントに参加させていただき、出会った企業様に声をかけたこともありました。
どのようにして活動への興味を持っていただくか
ー企業と繋がったら、次は寄付をしていただけないか、という相談に入っていくかと思います。活動に興味を持ち、共感していただくためにどのような取組を行っているのでしょうか。
そうですね。LFAでは、ただ寄付をいただければよい、という考えではなく、LFAの想いに共感し、ともに子どもの貧困という課題を解決したいと考えてくださる方に寄付いただきたいと考えているので、まず活動を理解し、興味を持っていただくことは、非常に重要です。
取組①活動説明
私たちの活動のお話をする際は、仲間になっていただくという意識を大事にしています。
相手企業様の業務領域やミッションと自分たちの活動を絡めて説明し、相手企業様もLFAも同じように社会の課題を解決しようとしている仲間なのだ、ということをお伝えしています。
また、そもそも熱を持って活動についてお話するためには、自分の団体の活動を深く知ることが大事だと考えています。私は直接支援現場に携わる立場ではありませんが、現場のメンバーと話したり、直接現場に出向いたりして、自分たちの活動の最新情報を知るようにしています。
取組②現場見学
そして、繋がった企業の方には、できる限り支援現場を見学いただくようにしています。現場見学の意義は大きく2つあります。まず1つは、子どもの実際の様子を見て、子どもの貧困はわかりにくく難しい問題なのだと肌で感じていただけることです。現場見学に来た方には、子どもの情報を記録しているシートを見ていただくようにしています。目の前にいる子どもの元気な様子と、その子が抱えている困難のギャップを感じていただくことができます。
また、2つめの意義としては、私たちがプロフェッショナルとして支援を行っているのだと感じていただけることが挙げられます。ボランティアが丁寧に作成した子どもの指導案を見たり、熱い想いを持った大学生ボランティアと直接話したりすることで、現場の想いや取組に共感いただくようにしています。
このようにして活動に共感いただいた企業様からは、自分たちで寄付することは難しいが他企業様を紹介する、とおっしゃっていただけることもあります。
寄付を継続いただいている理由
ー数年間継続して寄付をいただいている企業様もあるとお伺いしました。寄付を継続いただいているのはなぜだと思われますか。
寄付の意思決定をしているカウンターパートの方だけではなく、相手企業の社員さん全体に活動に共感いただけるよう、きっかけを提供させていただいています。社員さんに子どもの貧困問題やLFAの活動を知っていただくことは、会社全体で社会課題に取り組むきっかけづくりになると考えています。
具体的には、企業の社員さん向けに講演会を実施する、社員さん参加型のイベントを実施して子どもと触れ合っていただく、TVなどのメディアにLFAが露出することがあればお知らせする、というような取組を行っています。
まとめ
石神さんにお伺いした企業寄付のポイントをまとめます。
- 友達や知り合いの繋がり、繋がりのある企業様からの紹介、企業が集まるイベントなどで企業様と繋がりを作っている
- 活動を説明する際は、仲間になっていただくという意識を持ち、相手企業様の業務領域やミッションと絡めて説明する
- 現場見学によって、実際の子どもの様子と子どもが抱える困難のギャップ、支援現場の想いやプロフェッショナリズムを感じていただく
- 相手企業様の社員さん全体に活動に共感いただけるよう、社員さん向け講演会などのきっかけをつくっている
石神さん、ありがとうございました!
※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません
八名 恵理子
総合コンサルティングファームで人事・組織系コンサルタントを経験した後、2021年にNPO法人Learning for Allに入職。全国の子どもたちが誰一人取りこぼされずに居場所を持ち、自分自身の気持ちを大事に幸せに生きていける社会を目指したい。「こども支援ナビ」を、そのための一歩としたい。スパイスカレーが好き。