【連載第2回】子ども支援団体の地域づくりのあゆみと実践 〜認定NPO法人Learning for All の事例〜

認定NPO法人Learning for All (以下、LFA)では、2016年頃から地域づくり事業に取り組んできました。2016年から現在にかけて埼玉県戸田市・東京都葛飾区・茨城県つくば市での居場所づくり事業と地域づくりに取り組んできました。

今回は、LFA地域づくり事業マネージャーである塩成 透氏がこれまでのLFAの地域づくりの歩みと変遷、活動の中で得られた学びや気づきについてご紹介します。

子ども支援団体として学習支援から始め、その後居場所づくり事業、地域づくりと形を変えながら地域に関わってきた流れや、地域の他団体・地域住民との繋がりのつくり方についても具体的に紹介しているので、地域づくりにご関心のある方はぜひご一読ください。

連載第2回では、地域づくり担当者が設置された2021〜2023年までの戸田・葛飾の事例について、さらに現在の戸田・葛飾での活動についてより詳しくご紹介していきます。

連載第1回はこちら:

【連載第1回】子ども支援団体の地域づくりのあゆみと実践 〜認定NPO法人Learning for All の事例〜
【連載第1回】子ども支援団体の地域づくりのあゆみと実践 〜認定NPO法人Learning for All の事例〜

プロフィール:塩成 透 氏
認定NPO法人Learning for All 子ども支援事業部
2024年度より地域づくり事業マネージャー/個別支援プログラム・マネージャー
こども家庭庁の「こども若者★いけんぷらす」で活動するこども若者のサポートも行う。
東日本大震災をきっかけに有事の際の地域の繋がりの重要性を認識し、前職で地域住民と共に公共施設や自治体の計画づくりを行うといった地域づくりに関わる。

これまでの「地域づくり」の変遷

【2021〜2023年】戸田の「地域づくり」事例

画像:認定NPO法人Learning for All 

LFAの地域づくりは、3つのチームで関わり合いながら活動を行ってきました。

  1. 地域づくりチーム
  2. 企業連携チーム
  3. 全国連携チーム

ここでは、私が担当した地域づくりチームの活動内容を中心に、各チームの取り組みについてご紹介していきます。

地域づくりチームでは、主にこの2つの取り組みを行ってきました。

  • 子ども支援ネットワークの構築
  • 子ども支援の担い手を増やす / 活動をサポートする

この取り組みの目的は、子ども支援のコレクティブ・インパクトを生み出すためのネットワークを構築(a)・増強(b)することです。地域づくりチームでは国内外で行われているコレクティブ・インパクトの研究などを参考にしながら、地域のネットワークづくりに注力してきました。

【コレクティブ・インパクトとは】

複数の団体が共通のアジェンダ・目標をもって社会課題解決に包括的に取り組むことによって生まれる成果。

↔︎アイソレーテッド(個別的)・インパクト…一つの団体で社会課題の解決に取り組むことによって生まれる成果。

コレクティブ・インパクトの全体像

そして、ネットワークづくりの前に地域の各団体のことを知ろうと考えて、地域団体への見学やボランティア活動も積極的に行いました。地域団体との関わりができてからは団体同士の協働イベントも実施しています。

次に「b. 子ども支援の担い手を増やす / 活動をサポートする」についてですが、具体的には以下の3点を行いました。

  • 拠点に関わる地域住民を増やす
  • エリアで活動する地域団体の立ち上げ支援
  • エリアで活動する地域団体の相談支援

1つ目の「居場所拠点や子どもに関わる地域の方を増やす」では、戸田で、子どもたちの生活圏内にお住まいの近所の方との関わりづくりを行いました。

近所の方のお宅にお邪魔して、子どもたちと一緒に柿の収穫をし干し柿にするイベントや、お寺の住職に相談し、境内を使った肝試しイベントを実施しました。

この時期のさまざまな活動を通して、いろいろな居場所づくり事業に関わる方と繋がることができたり、他団体と協働することで LFAではできないイベントを開催したりすることができました。立ち上げ支援をした子ども支援団体さんは我々が運営する戸田の拠点の近くに子どもの居場所をつくりました。それぞれの拠点に通う子どもが相互利用したり、LFAの拠点を利用する子どもが新たに立ち上がった子どもの居場所のスタッフとして働いたりといった関係性も築けています。

企業連携チームと全国連携チームの活動は下記画像の通りです。

画像:認定NPO法人Learning for All 

企業連携チームでは地域企業の方から食材のサポートをいただくなど、地域づくりに企業の方も巻き込んでいく動きをつくっています。また、全国連携チームでは、LFAの地域づくりで得られたノウハウやナレッジを型化し、他団体へ展開していくための資料づくりなどを行っています。

▶︎参考:2021〜2023年の各拠点での主な取り組み

画像:認定NPO法人Learning for All 

2024年現在の「地域づくり」の取り組み

戸田での取り組み内容

現在、戸田エリアではこの4つの活動を行っています。

  • LFA既存サービスの地域移行
  • 活動団体の立ち上げ
  • 活動団体の相談支援
  • LFA拠点と地域住民の繋がりづくり

1つ目の「LFA既存サービスの地域移行」では、LFAが運営しているフードパントリーを地域の方に運営してもらう方針で動いています。

もともとフードパントリーは私とインターン生で行っていて、対象世帯が多いことから地域の方々の助けも借りていました。そこからだんだんと地域の方メインで動かしていただくことが多くなり、最近ではLFA職員がいなくても地域の方だけで運営可能な状態になってきました

フードパントリーに併設されたカフェでマスターをしてくれたり、来た子ども・保護者と遊びを通じてつながりをつくっている保護者の方や、子どもたちの遊び場として射的をつくってくれた地域の方もいます。また、月1回ほど子ども食堂がキッチンカーで戸田に来るといったLFA以外の活動団体と地域住民のつながりも増えてきています。

このように地域の方にもこの事業の価値を感じていただけるようになってきているので、今年度か来年度にはLFAから地域の方への引き渡しを行おうと考えています。

2つ目の「活動団体の立ち上げ」は拠点を卒業した子どもや地域の大学生・高校生が関わってくれています。メンバーの一人が「LFAのような居場所があることは当たり前ではない。自分に何かできることはないか」という想いを伝えてくれ、その想いに共感した地域の若者たちと一緒に新しい居場所の立ち上げを始めました。

この拠点は、夜9時まで運営する中高生向けの居場所を想定していて、毎月メンバーが集まって資金調達のために助成金を申請する資料をつくったり、居場所のロゴやSNSアカウントをつくったり着々と準備を進めています。今年中にはオープンできる予定です。

このほか、これまで4つの活動団体の立ち上げに関わらせていただいています。定期的に情報交換を行って、相談があればどうしたら解決できるか仲間として一緒に悩んでいる日々です。

4つ目の「LFA拠点と地域住民の繋がりづくり」は、これから重点的に行っていきたい活動の一つです。子どもたちの興味関心ややりたいことと掛け合わせて、拠点に通う子どもたちから地域の方のところへ出向いていき、繋がりをつくっていくことを目標にしています。

葛飾の拠点では現在このような活動を行っています。

  • 既存ネットワークをつなげる団体の立ち上げ
  • 地域団体の活動基盤強化 / 地区ネットワークの構築
  • 地域団体の活動基盤強化 / 資金調達勉強会の実施
  • LFA拠点と地域住民の繋がりづくり

1つ目の「既存ネットワークをつなげる団体の立ち上げ」では、「子どもの権利かつしからいつ」という子ども支援ネットワークの連携を目指した団体も立ち上げました。を立ち上げました

葛飾ではすでに対象の年代などで分かれた子ども支援のネットワークが3つ存在しているのですが、それぞれのネットワークがより一層連携できていけるといいという想いのもと、連携を促す団体を立ち上げ、各ネットワークの方に入っていただき、設立記念イベントには行政の方にもご参加いただきました。

2つ目の「地域団体の活動基盤強化 / 地区ネットワークの構築」についてですが、これは以下のような葛飾の地域団体の課題を解決するために始めました。

  • 子どもに関わる学生世代のボランティアと繋がれない
  • 忙しくてボランティア募集に手が回らない
  • マンパワーでぎりぎり運営している拠点がある

具体的には、葛飾エリアの大学・高校・中学と連携してある地域団体とマッチングする仕組みを社会福祉協議会の方などと共同でつくり、ボランティアがうまく地域団体とマッチングするような流れをつくっています

また、3つ目の「資金調達勉強会の実施」では、戸田と葛飾が連携してLFAの資金調達ノウハウを共有する勉強会を実施することが決まりました。きっかけとなった戸田の団体さんには勉強会の企画から携わってもらい、地域団体がどのように資金調達の面で苦労しているのかなどの視点を提供していただきました。

4つ目の「LFA拠点と地域住民の繋がりづくり(コミュニティユースワーク)」は今後力を入れていきたい取り組みの一つです。

この取り組みでは、子どもたちの興味関心ややりたいことからイベントを企画し、LFA内で行うのではなく、地域にいるその道の専門家や関わりたいと思ってくれる地域住民の方と一緒に行うことを意識しています。

まとめ

今回は、地域づくり担当が設置された2021〜2023年までの戸田・葛飾の事例について、さらに現在の戸田・葛飾の活動についてご紹介しました。ポイントを以下にまとめます。

  • LFAの地域づくりは、地域づくりチーム・企業連携チーム・全国連携チームの3つが連携して取り組んでいる。
  • 地域づくりチームでは、子ども支援のコレクティブ・インパクトを生み出すためのネットワークの構築・増強のために、他団体との繋がりづくりや協働イベントの実施、拠点に関わる地域住民の増加・地域団体の立ち上げ/相談支援などに取り組んだ。
  • 現在戸田では、LFA既存サービスの地域移行・活動団体の立ち上げ・活動団体の相談支援・LFA拠点と地域住民の繋がりづくりを行い、フードパントリー事業の地域移行や新しい居場所の開設、子どもから地域に出ていくイベント・きっかけづくりなどに力を入れている。
  • 現在葛飾では、既存ネットワークをつなげる団体の立ち上げ、地域団体の活動基盤強化 / 地区ネットワークの構築・資金調達勉強会の実施、LFA拠点と地域住民の繋がりづくりを行い、子ども支援ネットワークの連携のための団体立ち上げや学生ボランティアと地域団体のマッチングシステム構築、LFAの資金調達ノウハウを共有する勉強会の実施などをしている。

連載第3回では、これまでの地域づくりの変遷をまとめ、子ども支援団体であるLFAが地域づくりをする意義についてLFA代表理事の李氏の考えをご紹介します。

第3回はこちら:

【連載第3回】子ども支援団体の地域づくりのあゆみと実践 〜認定NPO法人Learning for All の事例〜
【連載第3回】子ども支援団体の地域づくりのあゆみと実践 〜認定NPO法人Learning for All の事例〜

※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません

 

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