【連載第1回】ゲームを通じて、困っている子ども・若者とつながるには~サンカクシャの実践事例~(こども支援ナビ Meetup vol.9)

2022年7月28日に、子どもに向き合う全国各地の支援者が学び/知見/意見をシェアするオンラインイベント「こども支援ナビMeetup」の第9回が開催されました。

特定非営利活動法人サンカクシャの代表理事の荒井氏をお招きして、荒井氏が取り組まれている「オンラインゲームを通じたアウトリーチ」やその後の支援についてのご講演、および、認定特定非営利活動法人Learning for All (以下、LFA)代表の李との対談を通じて、困っている子ども・若者との繋がり方や、地域や企業と連携した支援の在り方についてお話しいただきました。

今回はサンカクシャの創立までの経緯や、取り組みについて伺います。

プロフィール:荒井 佑介
1989年埼玉県出身。約13年前より、ホームレス支援や子どもの貧困問題に関わり始める。
生活保護世帯を対象とする中学3年生の学習支援に長く関わっていたが、高校進学後に、中退、妊娠出産、進路就職で躓く子達を多く見たことから、NPO法人サンカクシャを立ち上げる。
サンカクシャでは、15歳から25歳前後までの親や身近な大人に頼れない若者の居場所作りや進路就職のサポート、住まいのサポートを行なっている。

 

NPO法人サンカクシャの活動

自己紹介を兼ねて、サンカクシャの創業までのエピソードをお話しします。

私は今32歳で、一番最初に支援に携わったのは18歳、大学1年生の時に、ホームレス支援に携わりました。社会問題に関心があったというのではなく、大学の帰り道に、新宿で道に座り込んでいるおじさんに「大丈夫ですか?」と声をかけたら「俺はホームレスだ」という話から身の上話が始まり、そこからおじさんの話を聞いていたら仲良くなっちゃって「来週も一緒に話そう」と約束することになりました。そこから毎週マクドナルドでコーヒーを飲みながらホームレスのおじさんの話を聞くというイベントが発生し、そこからホームレスの現状を知って、ホームレス支援に携わります。

その頃はちょうど「子どもの貧困」という言葉も出はじめた時期で、小中学生の学習支援にもボランティアで参加して、子どもたちに勉強を教えていました。ただ、その子たちが高校に入ってから、高校を中退したり妊娠したり出産したり…とても大変で、その当時は高校を中退すると本当に何の支援もない状態だったので、「どうにかしたい」と思って立ち上げたのがサンカクシャです。

私たちは親や身近な大人を頼れない若者がどのような道に進んでも生き抜いていけるようにというテーマで活動をしています。「どんな道を進んでも生き抜いていけるように」が、特に私たちが大事にしているところです。もちろんちゃんと働いて生きていくことも大事ですが、まずそこにすら辿り着けない子たちも多く目にしてきているので、まずは死なないで生きていてほしい、ということを彼らに感じています。現在は200名くらいの子に伴走していて、数年かけて一人の子に寄り添って、何とか自立できるように、関係が切れないように伴走しているのがサンカクシャの特徴です。


画像:サンカクシャ作成

親や身近な大人を頼れない若者

「子どもの貧困」という言葉が広がってきて、15歳までの支援は増えてきたと肌で感じているのですが、高校進学以降の居場所はまだまだ少ないなと感じています。特に就労支援は、25歳くらいから何となく皆「そろそろ仕事しなきゃな」という感覚になってきますが、それまでの「15歳から25歳まで」の期間はすっぽり支援が抜けてしまっているという課題意識があります。せっかく地域の中にいろんな支援があるのであれば、この年代も地域でサポートできれば、自立までしっかり支えられるのではないかと思っています。

この「15歳から25歳」という年代がポイントで、私たちがゲームを使っているのも、この年代を支援しているからこそだと思っています。

私たちが関わっている子は、虐待を受けていたりして、人に対して恐怖心や警戒心を抱いていたり、うまくいった経験が少ないので何かに取り組む意欲が無いというのが現状です。なので、自分から問い合わせして「助けてください」と言ってくることはほとんどありません。行政の人たちと一緒に、生きていく意欲すらない子たちをどうサポートするのかを考えています。彼らには支援が届きにくいし、繋がりにくいし、関わり続けることの難しさを感じています。

そういう子たちに対して人とのつながり」「しごと」「住まい」を届けて、とにかく生き抜いていけるようにサポートできればと考えています。


画像:サンカクシャ作成

居場所支援:サンカクキチ

居場所には「サンカクキチ」という名前を付けました。イケア・ジャパンさんが内装の提案・家具の無償提供をしてくださり、すごく素敵な空間ができました。


画像:サンカクシャ作成

社会人が働けるようなコワーキングスペースっぽい空間も作っています。若者だけじゃなくて、地域の人たちがここで仕事をしたり、若者たちと交流できるような場になればいいなと思っています。

仕事のサポート:サンカククエスト

仕事のサポートは「サンカククエスト」というちょっとゲームっぽい名前を付けています。地域の人から「クエスト」(仕事の依頼)をもらって、若者たちが依頼をこなして報酬をもらう、ゲーム感覚で仕事をして自信や報酬を得たりできるような取り組みです。


画像:サンカクシャ作成

餃子屋さんから単発の依頼を頂いたり、公認会計士の方が拠点で会計のレクチャーをしてくださった後に仕訳のアルバイトを提供してくださった事例もあります。現在は10社を超える企業と連携をしていて、中には若者を採用してくれる企業もあります。

居住支援:サンカクハウス

ある1人の子が急に深夜に電話をかけてきて「今、八王子でホストやってるんだけど今から来れない?今日お客さんが来ないと、仕事をクビになる。寮付きの仕事だから、クビになったら家も無くなるんだ」と相談されました。ちょうどコロナをきっかけに住まいが無くなるという相談が増えてきた頃だったので、翌日その子に会って話を聞いて、勢いあまってそのままシェハウスできそうな物件を探し、いわばその子1人のために物件の契約をしました。当時はシェアハウス用の財源もなかったので、助成金をとにかく集めて何とか無事に立ち上げました。


画像:サンカクシャ作成

最初に立ち上げた拠点は定員が6名だったのですが、相談や問い合わせも多く、結局8名が住むことになりました。ただ、定員6名の場所に8名住むとなるとトラブルも起こりやすかったので、最近一気に新しい拠点を3つ立ち上げて、今は全部で4つの拠点を運営しています。

ちょうど今朝も相談をもらって入居が決まった子がいますが、「住まいが無い子がこんなにたくさんいるんだな」と感じています。新しい拠点は最近オープンしましたが、それぞれの拠点の定員はほとんど埋まりかけています。

若者支援ネットワーク会議

豊島区と連携も進んでいて、一緒に「若者支援ネットワーク会議」を開催しています。この会議ではとにかく「支援者が仲良くなる」をテーマにしています。


画像:サンカクシャ作成

行政の担当課と一緒に事務局をしているのですが、サンカクシャがなぜ事務局を担うかというと、こういう会議ってどうしても固くなりがちなんですよね。私たちサンカクシャは「フランクさ」や「楽しさ」を持ち込むのが得意なので、とにかく堅苦しくならないように、担当者が仲良くなれるような場づくりをやっています。今では豊島区の中で若者支援をしている団体が結構集まっていて、連携ができるような取組になっています。

社会サンカクまでのステップ

サンカクシャのアプローチをざっくりまとめると、まず最初に「どうやって若者たちと出会うか」というアウトリーチがあります(ツナガル)。そこから、安心できる場としてシェアハウスや居場所があります(アンシン)。安心できる場を獲得してから、地域の人からいろんな体験の機会や仕事の機会を頂き、とにかく自信をつけて、知らない人と交流できるようになることをサポートしています(サンカク)。


画像:サンカクシャ作成

こうして、人にも頼りながら、自分の足でも生きていけるような自立の仕方ができるようになると良いなと思って、一人ひとり伴走しているというのがサンカクシャの取り組みです。

まとめ

今回は、荒井さんに、サンカクシャを立ち上げるまでの経緯や、サンカクシャの取り組みについて伺いました。ポイントを以下にまとめます。

  • サンカクシャでは「親や身近な大人を頼れない若者がどのような道に進んでも生き抜いていけるように」をテーマに、自立まで寄り添ってサポートをしている。
  • 「ツナガル」(アウトリーチ)、「アンシン」(居場所、シェアハウス)、「サンカク」(仕事のサポート)のそれぞれのステップで、一人ひとりの若者に伴走している。

第2回では、サンカクシャがゲームに力を入れるようになった経緯や、現在行っているゲームを使った若者支援の取り組みについて伺います。

【連載第2回】ゲームを通じて、困っている子ども・若者とつながるには~サンカクシャの実践事例~(こども支援ナビ Meetup vol.9)
【連載第2回】ゲームを通じて、困っている子ども・若者とつながるには~サンカクシャの実践事例~(こども支援ナビ Meetup vol.9)

※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません

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