【前編】ゲーム依存専門心理士に聞く!ゲームに熱中する子どもに対して「第三の大人」である支援者は何ができるか

近年、新型コロナウイルス感染拡大によ一時外出制限が行われたこともあり、長時間ゲームに熱中する子どもが増加しています。

支援現場でも、ゲーム依存により勉強に集中できない子どもや、居場所拠点でゲームばかりやっている子どもへの対応について悩んでいる支援者も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、インターネット依存・ゲーム依存専門の予防と回復支援サービスのMIRA-i(ミライ)所長、森山沙耶さんにお話を伺いました。前編では、まずゲーム依存とは何か、子どものゲーム依存の現状や家庭での関わり方について紹介します。

プロフィール:森山 沙耶

公認心理師、臨床心理士、社会福祉士。MIRA-i所長。
2019年8月、独立行政法人国立病院機構久里浜医療センターにてインターネット依存の診断・治療等に関する研修を修了後、MiRA-iの設立に携わる。
現在はネット・ゲーム依存専門心理師として、カウンセリングや講演活動を行っている。

執筆記事:https://news.yahoo.co.jp/byline/moriyamasaya

「ゲーム依存」とはどういう状態?

—ゲーム依存の定義について教えてください。

ゲームに限らず、依存症全般の特徴でもありますが、ゲーム依存とは「時間や頻度のコントロールができず、日常生活に支障をきたしているのにゲームをやめられない状態」のことを指します。つまり、「何時間以上ゲームをやっていたら依存状態」という定義があるのではなく、自分自身で制御ができなくなっている状態であれば、依存状態であると言えます。

また、ゲームをやっていて「楽しい」と感じているうちは良いのですが、「自己治療仮説」という考え方があるように、不安な気分やストレスを和らげるためにゲームをやる」という体験が積み重なることで依存状態になっていくと言われています。

 —依存度チェックの方法について教えてください。

依存度チェックには、様々な種類があります。

 ゲームに限らず、インターネット依存全般についてチェックを行う場合は、DQ(Diagnostic Questuionnaire)(註1)という方法が比較的用いられています。これは8項目と、比較的項目数の少ない簡単な自己診断で、臨床現場でも用いられている、依存症の危険性を警告するものです。

註1)DQ(特定非営利活動法人ASK)https://www.ask.or.jp/article/353

また、ゲームに特化したチェック方法としては、IGDT-10(Internet Gaming Disorder Test10)(註2)という方法があります。このチェックだけでは依存か否かという断定はできませんが、「自分が今どれくらいゲームにのめりこんでいるか」を簡易的に、客観的にチェックすることができます。

註2)IGDT-10(ネット・ゲーム依存予防回復支援 MIRA-i)https://mira-i.jp/addiction/check/

—子ども自身にチェックテストに答えてもらうのでしょうか。

基本的には子ども自身に答えてもらうことになりますが、子どもが自分からチェックテストを見つけて実施することもなかなか難しいと思うので、まずは保護者から「こういうのあるけど、ちょっとやってみる?」と子どもに声掛けをして、答えづらい項目については保護者が適宜サポートしながらやってみると良いと思います。

子どものゲーム依存の現状

—新型コロナウイルス感染拡大により、ゲーム依存が増加した傾向はありますか。

そうですね。子どもを対象とした調査ではないですが、成人を対象とした調査では、「ゲーム依存者がコロナ前よりも約1.6倍も増加している」という結果(註3)がでています増加した原因として、コロナ禍でのストレスの増加や、外出制限により社会的リソースが使えず、ストレス対処の方法が限られること、自宅でずっと過ごしていることでオンライン活動が盛んになったこと等が絡み合っているのではないかと考えます。

註3)コロナ禍で変化するスマートフォンの利用方法と、スマホ依存などへの影響調査(KDDI株式会社, 2021)https://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2021/10/12/5468.html

子どものゲーム依存に関しても、長期休校から学校が再開した時は相談が増えていました。現在は、民間でも依存について相談できる団体が増えたり、医療機関を受診するハードルが低くなったため、相談件数はいくぶん落ち着きましたが、ゲーム依存の子どもの数自体が減少した訳ではないように思います。ゲーム依存の子どもはいまだ多いと考えて良いでしょう

コロナウイルスの拡大により学校も休校となり、子どもが家で過ごす時間が増えましたが、同時に保護者も在宅ワークになったことで、子どもの様子に対して保護者の目が行き届きやすくなりました。そうすると、子どもがゲームをやっている様子を保護者が目にする機会が増えるので、ゲームをしていることに対して注意したり過度に制限をかけたりすることが多くなり、子どもはストレスを感じて、より依存状態になりやすくなるのです


画像:https://www.photo-ac.com/main/detail/23889049

家庭でのゲーム依存の子どもとの関わり方

—共働き等で保護者が家にいない状態が多い家庭もあり、「保護者が家にいなければ、ルールを決めても子どもは守れない」というジレンマが生じてしまうと思います。保護者が家にいないときでも、子ども自身がコントロールできるためにはどうすれば良いでしょうか。

保護者の目がない時に、子どもが自分自身を律するのはとても難しいですよね。正直、子どもが100%ルールを守れるようになる必要はないのではないか、と思います。例えば「ゲームは一日1時間まで」と、一緒に目安のゲーム時間を決めても口約束になりがちです。そのため、ある程度は手放しつつ、ゲーム機器等に「見守り設定」等を行って、子どもを見守ると良いと思います

大事なことは、子どもの出来ていないことに目を向けるのではなく、出来ていることに目を向けることです。例えば、一緒にスクリーンタイム(スマホの利用時間が分かる機能)を見ながら「この日は決めた時間内で利用できたね。どういう風にやったの?」等の会話を通して、徐々にルール内で遊べる日が増やせるようにしていく、根気強い関わりも必要です。

また、ゲームばかりやっていることが気になるのであれば、ゲーム以外の選択肢として、子どもが暇なときにできることや、何か楽しいことを用意することも1つの方法です。

—ゲーム以外の選択肢を増やすということについての具体例を教えてください。

子どもによって何が楽しいかは異なります。例えば、対人型のオンラインシューティングゲームに依存している子どもは、競争心が満たされるようなことに興味を持ちやすいため、ボードゲームやスポーツ系等に取り組ませると効果的です。ありきたりに思えるかもしれないですが、家族が提案すると乗り気になってくれる事例は多いです。 また、ネットで「料理動画」をよく見ている子の場合は、実際に一緒に料理してみるのも良いと思います。その子が興味を持っているものと、同じような機能を持った活動を提案してみると、ゲーム以外の活動の幅が広がります


画像:https://www.photo-ac.com/main/detail/24124051

また、依存症分野には「ハームリダクション」という考え方があります。ゲーム依存に置き換えてみると、ゲームをやめさせたり、ゲームで遊ぶ時間を減らすことを目的にするのではなく、ゲームによって生じる問題を防ぐことに焦点を当てるというものです。同じゲームでも、興奮しやすい刺激の強いゲームから徐々にマイルドなゲームにシフトしていくことが考えられます。ゲームの中には、長時間プレイになりにくいゲームや実際に体を動かすようなゲームもあるので、ちょっとずつ、そういったマイルドなものやプレイ時間をコントロールしやすいものにシフトすることも、依存状態を抜け出すのに効果的です。

まとめ

今回は、MIRA-iの森山さんに、ゲーム依存の子どもの現状や家庭でのゲーム依存の子どもとの関わり方について伺いました。ポイントを以下にまとめます。 

  • 「ゲーム依存」とは、ゲームをやっている時間の長さで決まるものではなく、ゲーム時間をコントロールできず日常生活に支障をきたしたり、不安な気分やストレスを和らげたり無くすためにゲームをやる状態にあることを指す。
  • 子ども自身がコントロールできるようになるためには、保護者が過度に注意したりするのではなく、子どもができている部分に目を向けて根気強く見守ることが大切。
  • 子ども本人の興味や関心に合わせて、ゲーム以外の選択肢を用意することも重要である。
【後編】ゲーム依存専門心理士に聞く!ゲームに熱中する子どもに対して「第三の大人」である支援者は何ができるか
【後編】ゲーム依存専門心理士に聞く!ゲームに熱中する子どもに対して「第三の大人」である支援者は何ができるか

※本記事の内容は専門家個人の見解であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません

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