支援を必要としている子どもたちに支援機関の存在を知ってもらい、子どもたちとつながるためには、子どもに関わる地域の大人たちが協力関係にあることがとても大切です。また子ども募集においては、個人情報の保護の取り扱いやスティグマなど、注意が必要なポイントもあります。
「どうしたら困難を抱える子どもに出会うことができるのか」「子どもを募集する際は何に注意すべきなのか」といった疑問を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。この記事では、地域の大人で協力して行う子ども募集のポイントについてご紹介します。
※本記事は以下の動画記事に基づいて作成をしております。動画でご覧になりたい方は、以下の記事もご活用ください。
子ども募集における注意事項
子ども募集における注意事項は、大きく2つあります。「個人情報の取り扱い」と「スティグマへの配慮」です。
①個人情報の取り扱い
個人情報とは、生存する個人に関する情報であり、特定の個人を識別できるものを指します。代表的なものとして、氏名や生年月日が挙げられます。子どもの名前が伏せられたテストやアンケート結果などであっても、内容から個人の特定が出来るのであれば、個人情報に当たるため、取り扱いには注意が必要です。
保護者の同意なく、子どもの個人情報を取得・利用したり、他者へ共有を行ったりすることは、個人情報保護法に違反します。地域内の関係者と情報を共有する場合には、個人情報保護の観点から問題のない範囲で実施する必要があります。
例えば、団体Aの拠点に通う子どもの情報を団体Bと連携したい場合、事前にご家庭(保護者)の承諾を得るか、ご家庭に団体Bの情報を紹介し、ご家庭から団体Bへ直接連絡を取ってもらうなどの対応を取りましょう。
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②スティグマへの配慮
ここでは、スティグマとは「貧困」につきまとう、人びとの「マイナスの感情」や「不名誉感」のことを指します。「居場所拠点や学習支援を使うことで、生活困窮世帯だということを周囲に知られるのではないか」、「子どもの勉強が遅れていると思われてしまうのではないか」など、支援を受けることを恥ずかしいと感じ、支援現場がスティグマとなって利用を躊躇してしまう場合があります。
スティグマを回避するためには、まず子ども募集や公報時の拠点紹介において、「困窮世帯向け」「学力遅滞のあるお子さん向け」といったマイナスなイメージを持つ言葉を使わないという工夫があります。また子ども募集時には世帯収入や学力などの制限をかけずに募集し、実際の入所は困難度の高い子どもに絞るという対応もあります。
一方で「困難を抱える子どもが集まっている場所」と周囲に認識される可能性があったとしても、偏見につながらないように、拠点自体が地域に対してオープンであること、地域の一員として地域に受け入れてもらうことが大切です。
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地域の関係者と協力した、子ども募集の方法
地域関係者と協力して子ども募集を行う方法をご紹介します。自治体との委託事業、協定事業の場合、自治体から直接子ども情報を受け取ることが出来ることもありますが、今回はそれ以外の場合をご紹介します。
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①学校経由のアプローチ
子ども達が通っている学校の先生方に協力して頂き、担任教師から教室で子ども達にチラシを配ってもらう、目の付きやすい校内の掲示板に掲載をしてもらうなどの方法が考えられます。また、可能であれば気になる家庭の保護者様に直接連絡をしてもらうことも有効でしょう。
②自治体経由のアプローチ
自治体に協力して頂き、こども支援課やケースワーカーなどから気になる世帯にチラシを配布してもらうと良いでしょう。他にも、公民館や区役所の掲示板など、目に留まりやすい場所にチラシを掲示する方法もあります。
③地域からのアプローチ
まずは町会長・地域内の他団体などに対し、拠点の存在を周知し、困難を抱える子どもをつないでもらうように声掛けを行いましょう。またオープンな場を設計して、子どもの情報を得ることも大事です。例えば、誰でも参加できるオープンな子ども食堂の実施、公園での遊び時間に登録者以外のお子さんとも関わりを持つといった取り組みが挙げられます。積極的に地域の子ども達と関わることで、困難を抱える子ども達のSOSをこちらからキャッチできるようにすると良いでしょう。
地域関係者に協力してもらうためには、事前に各関係者と信頼関係を築けていることが前提となります。まずは相手からの理解を得るところから徐々に始めていきましょう。初めからこちらの望むような協力をお願いすることは難しいですが、相手のペースを尊重しながらタイミングをみて声掛けを継続することが大切です。
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まとめ
- 子ども募集時においては、「個人情報の取り扱い」と「スティグマへの配慮」に注意する必要がある。
- 子どもの情報を他団体に共有したい場合には、個人情報保護法に違反しないよう、事前に保護者の承諾を得るか、家庭に他団体の情報を連携して直接連絡を取ってもらうなどの工夫が必要である。
- 支援の利用をためらうことが無いように、募集時に用いる言葉への注意やオープンな募集を行い、支援団体が地域にオープンであることも重要である。
- 地域関係者の協力を得るためには信頼関係の構築と、相手のペースを尊重することが必要である。
※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません
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