【連載第2回】子どもの幸福度と「あそび」の価値:Chance For All が実践する、子どもの”やりたい”に寄り添う居場所づくり(こども支援ナビ Meetup vol.29)

投稿日:2026/05/06

2025年12月16日に、子どもに向き合う全国各地の支援者が学び/知見/意見をシェアするオンラインイベント「こども支援ナビMeetup」の第29回が開催されました。

今回は、特定非営利活動法人Chance For All(以下、CFA)の代表理事である中山 勇魚氏をお迎えし、「子どもの幸福度と『あそび』の価値:Chance For All が実践する、子どもの”やりたい”に寄り添う居場所づくり」というテーマで、CFAの問題意識や活動内容についてお話しいただきました。

イベントレポート第2回では、CFAが考える「しあわせ」と「民主的社会」のあり方についてお伝えします。

連載第1回はこちら:

【連載第1回】子どもの幸福度と「あそび」の価値:Chance For All が実践する、子どもの”やりたい”に寄り添う居場所づくり(こども支援ナビ Meetup vol.29)
【連載第1回】子どもの幸福度と「あそび」の価値:Chance For All が実践する、子どもの”やりたい”に寄り添う居場所づくり(こども支援ナビ Meetup vol.29)

プロフィール:中山 勇魚(なかやま いさな)氏

 

特定非営利活動法人Chance For All 代表理事。

早稲田大学教育学部卒業。日本放課後学会副会長、東京都学童保育協会副会長等歴任。学生時代から学童保育の現場で働き、29歳で「こどもたちのための学童保育」CFAKidsを開校。こどもの主体性と民主的な場づくりを重視した取り組みが共感を呼ぶ。学童、駄菓子屋、公園や大学等多様な環境で居場所やあそび場を運営。また、日本で初めて「放課後の質」を向上させるために作られた制度である「認証学童制度」の提唱や、平時でも被災時でもこどもの権利が保障される社会を目指した全国ネットワーク「J-CST」など社会システムの変革も実践している。TOYP/全国知事会会長賞。キッズデザイン賞/内閣総理大臣賞等受賞。

子どもの心を支える放課後の力

近年、さまざまなデータから、いわゆる非認知能力は、放課後の自由な遊びの中で育まれることが分かってきています。

一方で、子どもたちの遊びの環境は大きく変化しています例えば、ある研究によると、「平日に外遊びをする日数」は小学生の約8割で0日であることが知られています。また、「放課後に一緒に遊ぶ友達の人数」については、小学生の18%が0人、29%が1〜2人にとどまっています。このように、多くの子どもにとって、自由に友達と遊ぶ経験そのものが希少になっています。


画像:「子どもが豊かに育つ社会のための緊急政策提言」P.8(一般社団法人TOKYO PLAY)

私たちは、放課後は「子ども誰もがヒーローになれる時間」だと考えています。かつては、学校が終わると子どもたちは家にランドセルを置き、サッカーをしたい子はサッカーへ、駄菓子屋に行きたい子は駄菓子屋へ、図書館で本を読みたい子は図書館へと、それぞれが気の合う仲間とやりたいことに取り組んでいました。放課後は、まさに日中の「課題」から「放たれる」時間だったと言えるでしょう。

他方、学校は本質的に教育の場であり、勉強や運動などを通して、どうしても大人の評価にさらされる環境でもあります。その中で、評価される子どももいれば、そうでない子どももいます。

そのため、学校とは異なる「放課後」の時間は重要な意味を持っています。例えば、学校では叱られてばかりの子でも、泥団子づくりの上手さを認められたり、虫に詳しい子が「虫博士」と呼ばれたりと、それぞれの得意分野が子ども同士の対等な関係の中で評価されます。

こうした経験が子どものストレスを和らげ、「また明日も学校に行こう」と思える心の支えになっていたのではないでしょうか学校そのものが常に楽しいと感じる子どもは、昔も今も決して多数派ではないと思います。子どもたちは学校と放課後という2つの場のバランスの中で、日々の生活を成り立たせていたのです。

しかし現在、そのバランスが大きく崩れつつあるのではないかと、私たちは考えています。

CFAが考える「しあわせ」の形

私たちは、「だれもがしあわせに生きていける社会」をビジョンに掲げていますが、そもそも「しあわせに生きていける社会」とは何でしょうか。

しあわせの形は人それぞれ異なります。だからこそ「自分で生き方を選べること」が大事だと考えています。その反対にあるのは、他者が決めたルールに従って生きることです。

今の日本社会で、私たちは本当に自分の人生を選べているでしょうか。自分で生き方を選ぶためには、①一人ひとりが尊重されていること、②社会づくりに関わることができること、の2つが欠かせないと思います。つまり、社会が民主的であることが前提になります。

日本は、普通選挙や三権分立など、民主主義の制度が整っている国です。しかし、制度があることと、社会が実際に民主的であることは同じではありません。

現実には、私たちの社会は資本主義の価値観に強く影響されています多くのお金を稼げる人が高く評価され、学校でも学力や進学実績が重視されます。その結果、「お金」や「成果」が人の価値を測る基準になりがちだと思います。

こうした中で、多くの人は自分でルールをつくる側ではなく、既にあるルールの中で生きています本当に一人ひとりが主体的に生きられているのか、改めて問い直す必要があるのではないでしょうか。

また、個人の権利を重視してきた結果、「私」の利益だけを追い求める社会になっている面もあります。例えば、LGBTQ+の人々の権利は、自分に直接関係がないと感じる人もいるかもしれません。それでも、誰もが尊重され、結婚やライフスタイルを自分で選べる社会の方が、私たち全体にとってよりよい社会だと考えることができます。人権とは、個人の権利であると同時に、社会全体で守るべき価値だからです。このように、「私たち」の視点で考えることが大切です。

今の日本社会が、こうした「私たち」の視点で社会をつくれているかと問われれば、まだ不十分ではないでしょうか。


画像:特定非営利活動法人Chance For All

民主的社会をつくる要素

民主的社会をつくるためには、以下の3つの要素が大事だと考えます。

  1. 意思
  2. 対話
  3. 出会い

それぞれについてご説明します。

1. 意思

自分の考えや意見を持ち、それを安心して発言できることが出発点になります。けれども、日本の学校では、発言に対して「正しい・間違っている」と評価される場面も少なくありません。評価されることよりも、自分の意見を持ち、発言しようとする気持ちが大事なのではないでしょうか。

2. 対話

自分と異なる意見を持つ人がいること自体は、決して悪いことではありません大切なのは、意見の違いに暴力や排除で応じるのではなく、どのように向き合い、対話するかです。なぜなら、自分の意見がいつ少数派になるかは誰にも分からないからです。そこで私たちの学童では、月に一度「ケンカの大学」というプログラムを実施し、「上手な対立の仕方」を学ぶ機会を設けています。

実際に、子どもたちが公園へ遊びに行こうとした際、職員体制の都合で行くなら全員一緒に、という日がありました。多くの子が公園を希望する中、ある子どもは「今日は宿題をしたい」と学童に残りたがっていました。話し合いの結果、その子の希望である「机と椅子で勉強したい」を叶えるため、他の子どもが「机と椅子を公園まで運ぼう」と提案し、全員が納得する形で解決しました。

この出来事から、民主的な関わりとは単に多数決で決めることではないと実感しました。少数の意見も含め、一人ひとりが大切にされることこそが、真に民主的な社会だと考えています。

3. 出会い

子どもも大人も、同じ考えの人とだけ関わっていると、視野はどうしても狭くなると思います。そのため、子どもの頃から多様な人や考えに出会ってほしいなと思っています。

あそびが民主的社会をつくる

意思・対話・出会いの3つが自然に立ち上がる場こそ、あそびではないかと考えています。なぜなら、あそびには「これをやりたい」という子ども自身の意思が出発点として必要で、仲間との調整という対話が欠かせないからです。


画像:特定非営利活動法人Chance For All

例えば、「ドッジボールをやりたい」と思っても、他の子はサッカーをしたいかもしれません。意見が違えば、話し合いを通して折り合いをつける必要があります。また、あそびの最中にはルールをめぐって衝突が起きることもありますが、そうした経験を自分たちで乗り越えていかなければいけません。

さらに、あそびは新しいルールや文化、人との出会いを生みます「ドロケイ」は学校で教わるわけではないのに、子どもたちの間で自然と受け継がれてきました。また、異なる文化の子どもが関わることで、「こんな遊びやお菓子があるんだ」という新しい気づきや会話も生まれます。

このように、あそびの中では、意思を持ち、対話を重ね、多様なものと出会うことができます。この経験が、子どもたちの将来の「しあわせ」に繋がっていくのではないでしょうか。

逆に、あそびが十分に保障されていない今の社会は、本当に「しあわせ」に向かっているのでしょうか「遊んでいないで勉強しなさい」といった言葉に象徴されるように、あそびはしばしば「価値の低い時間」と見なされがちです。

しかし、かつては放課後に生まれていた自由なあそびの時間の中で、子どもたちは他者と関わり、社会性を育んできました。あそびの機会が失われつつある今、むしろ生きづらさが増しているのではないかと感じています。

まとめ

今回は、中山さんに、放課後の意義や民主的社会の理想像について伺いました。ポイントを以下にまとめます。

  • 近年、自由に友達と遊べる子どもは減ってきている。一方で、放課後はどんな子どもも楽しむことができ、学校のストレスを発散することができる場である。学校と放課後というバランスが崩れてきていることで、たくさんの課題が生じていると考えている。
  • 「しあわせな社会」を実現するためには、民主的な社会が必要である。そのために、「私たち」という視点から社会のルールをつくることができているか、考えなければいけない。
  • 民主的な社会をつくる条件として、「意思・対話・出会い」がある。そして、この3つが自然と存在するのがあそびである。あそびの中で、子どもたちが意思を持ち、対話を重ね、多様なものと出会うことで「しあわせ」に繋がっている。

第3回では、CFAが考える社会のモデルや大切にしているキーワードについてお伝えします。

※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません

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