【後編】子どものインターネット利用を支えるために〜第三の大人が知っておきたい課題と関わり方〜

投稿日:2026/04/15

拠点で子どもがスマートフォンを長時間使っていたり、見知らぬ相手とやり取りをしていたり、宿題の答えをAIに聞いてそのまま写していたり――。子どもたちのインターネットやSNSの使い方について、心配に感じる場面は増えているのではないでしょうか。

しかし、保護者や学校の先生とは異なる立場にある「第三の大人」は、どこまで関わってよいのか悩むこともあると思います。そもそも自分が声をかけてよいのか、どこまで踏み込んでよいのかと戸惑うこともあるかもしれません。

そこで今回は、千葉大学教育学部教授の藤川 大祐氏にお話を伺いました。支援者が知っておきたいインターネット利用の重大なリスクや、支援者としての関わり方について詳しく解説していただきます。

後編では、子どもをリスクから守り、より安全にインターネットを使うために支援者ができることをお話しいただきます。

前編はこちら:

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プロフィール:藤川 大祐(ふじかわ だいすけ)氏

 

千葉大学教育学部教授(教育方法学・授業実践開発)。1965年、東京生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得満期退学(教育学修士)。メディアリテラシー、ディベート、環境、数学、アーティストとの連携授業、企業との連携授業等、さまざまな分野の新しい授業づくりに取り組む。青少年のインターネット利用やいじめ防止対策等についても実践的な取り組みに関わっている。

信頼される団体づくりと法律の理解が支援の第一歩

—子どもがインターネットをより安全に使うために、支援者がまず心がけることは何ですか。

まず大前提として、支援を行う団体自身が信頼できる存在だと示すことが重要です。なぜなら、正体がよくわからない団体が「支援」を掲げても、かえって犯罪に繋がるおそれがあるからです。ホームページで活動内容を公開し、信頼性を高めることが第一でしょう。

そのうえで、法律に基づいて「何が犯罪にあたるのか」を説明できることも大切です。例えば、未成年を保護者に無断で泊める行為は誘拐罪にあたる可能性があり、性的な画像を撮らせたり送らせたりすることは児童ポルノ製造という犯罪になります。子どもがこうした行動を取ろうとしたときには、それが犯罪であることを支援者がはっきり伝える必要があります。

また、子どもが「家に帰りたくない」と話してきた場合には、気持ちを受け止めるだけでなく、合法的に利用できる公的支援や相談先を案内することも大事です。自分たちの団体で対応できることを説明し、対応できない部分は信頼できる支援先に繋ぎましょう。

—法律の知識を身につけるために、良い方法はありますか。

やはり一番は、弁護士や行政の担当者と日頃から定期的に情報交換することだと思います。行政の担当者から説明を受ける場合はコストがかからないことも多いので、日頃から関係を築き、法律や制度など専門的な点を教えてもらえる体制を整えておくとよいでしょう。

子どもとの関わり方:自覚を促し、越えてはいけない線を伝える

—子どもの様子が気になる際には、どのように声をかけると良いでしょうか。

法律に触れない範囲では、使い方に自ら意識を向けるように促し、法律に反することについては、きちんと注意することがポイントだと思います。

それぞれについて詳しく説明いたします。

1. 法律に触れない範囲:使い方を考えるきっかけ作り

自分の行動や考え方を客観的に振り返り、内省することを教育の分野では「リフレクション」と呼びますが、子ども自身が自分の行動を振り返られるよう手助けをします。例えば、1日のインターネット利用時間を一緒に確認したり、「どのような使い方をしていると思う?」と問いかけたりすることで、子どもが自分の行動を考えるきっかけを作ります。

支援の場では、つい指導や説教をしたくなることもあると思います。しかし悩みを抱えている子どもは、自分の行動がよくないかもしれないことに気づいている場合も多く、正論を言うだけではかえって追い詰めてしまうこともあります。

法律に触れない範囲であれば、多少愚かな使い方であったとしても、どうするかを選ぶ自由は子ども自身にありますそのため、無自覚なまま判断するのではなく、自分の使い方を客観的に理解したうえで選べるように支えることが大切でしょう。

2. 法律に反すること:法律違反だときちんと伝える

一方で、法律に違反する行為については、あいまいにせず「それは法律違反だ」とはっきり伝えることも重要です。たとえば、性的な写真を撮らせたり送らせたりする行為は、児童ポルノ製造という犯罪にあたります。これは、子ども自身がしてはいけない行為であると同時に、そうしたことを求めてくる相手も法律に違反する行為です。

法律という確かな根拠に基づいて説明することで、子どもに余計なプレッシャーをかけずに、その尊厳や気持ちを守ることに繋がると思っています。


画像:pexels

課題ごとの対応のポイント

—ここからは、前編でお伺いした各課題に対する対応をお聞きしたいと思います。
まず、長時間利用に対して、支援者はどのように関わるのが良いでしょうか。

そうですね、やはり長時間利用は法律違反ではないので、先ほど述べた対応のうち、「自覚を促す」ことが重要だと思います。

その方法の1つとして、子どもが1日をどのように過ごしているのかを表などに書き出し、インターネットを使っている時間を確認することが挙げられます。自分がどれくらいの時間を使っているのかを認識したうえで、「どのように時間を使いたいか」を考えることが大事です。利用時間を無理に制限しなくても、時間を記録していくことで「もう少し早く寝たほうがよさそう」「勉強にもっと時間を使いたい」といった気づきに繋がりやすくなると思います。

—ありがとうございます。
次に、子どもが犯罪に関わっている可能性があると感じた場合は、どのように接するのが良いのでしょうか。

まず大切なのは、子どもを責めるのではなく、安全を確保することです。犯罪に関わってしまった可能性がある場合でも、子ども自身が状況を十分理解していないことも少なくありません。

そのため、「どうしてそんなことをしたのか」と追及するよりも、「何が起きているのか」を一緒に整理する姿勢が大切です。そのうえで、必要に応じて保護者や学校、場合によっては警察などの専門機関に繋ぐことが重要になります。

特にSNSを通じた犯罪では、子どもが被害者である場合も多いため、証拠となるメッセージや画像を保存し、専門機関と連携することが望ましいでしょう。

—それでは最後に、ネットいじめに対してはどのように対応すると良いですか。

法的には「いじめ防止対策推進法」という法律があり、インターネット上のいじめであっても学校が対応することが定められています加害者と被害者が別の学校に在籍している場合、被害者が所属している学校が対応しなければいけません。

画像:いじめ防止対策推進法の概要(出典:文部科学省

そのため、支援者の皆さんには学校が動きやすくなるようにサポートしていただくのが大切だと思います。というのも、子どもの話を聞くだけでは、出来事の経緯が先生方に十分伝わらないこともあるからです。子どもと一緒に時系列を整理したり、証拠を残したりすることで、学校の先生も状況を客観的に把握しやすくなると思います。

また、被害を受けた子どもが学校にどのような対応を求めているのかを整理し、言語化するための補助を行うことも有用です。いじめの調査を求めたいのか、加害者と接触しないための配慮をお願いしたいのかなど、希望する対応を明確にすることで、学校側も適切に対応しやすくなると考えられます。

—他に気をつけた方が良いポイントはありますか。

さらに、保護者に相談するよう助言することも大事だと思います。子どもの中には、保護者に知られたくないと感じている子もいますが、最終的に保護者の協力が必要になる場合も多くあります。そのため、子どもの気持ちを丁寧に受け止めながら、安心して保護者に相談できるよう支えることが重要です。

また、いじめが犯罪に発展し、警察が関わっている場合でも、学校の対応が不要になるわけではありません。なぜなら、犯罪への対応は警察の役割ですが、いじめへの対応は、子どもたちに一番近いところにいる学校を抜きにして進めることはできません。警察が関わっている場合、学校は何もしなくて良いと受け止められてしまうこともあるので、双方が対応する必要があることを伝えましょう。

—もし学校がいじめに十分対応してくれない場合、どのように対応すると良いでしょうか。

子どもや保護者が学校に相談しても状況が動かない場合には、次の手として弁護士への相談を検討するとよいでしょう。弁護士を通じて対応を求めることで、学校が問題をよりしっかりと受け止め、状況が進展するケースも見られるからです。

また、支援者が子どもに付き添って学校に行く場合もありますが、代理人として交渉を行うことは、法律上グレーな側面があります。そのため、支援者は見守りなどのサポートにとどめ、必要に応じて弁護士などの専門家に相談するよう助言することが望ましいでしょう。

オンライン支援でも信頼性を大切に

—少し話は変わりますが、オンライン支援を実施する際に重要なことを教えてください。

まずは対面支援と同様に、団体の信頼性を高めることです。なぜなら、インターネット上では相談を装って犯罪に繋がるケースも多いからです。どの団体が運営しているのかや、どのような立場で相談を受けているのかをわかりやすく示す必要があります。

また、相談に対応できる時間を明確に示すことも大事です。オンラインであっても常に対応できるとは限らないため、24時間いつでも対応してもらえると誤解されないよう、「相談対応の時間」や「返信の目安」をあらかじめ伝えておくことが望まれますあわせて、対応時間外に緊急の支援が必要な場合は、警察や児童相談所などの相談先を案内しておくとよいでしょう。

生成AIを「道具」として使う視点

—最後に、生成AIの使用についてもお伺いできればと思います。
昨今、生成AIの凄まじい発展によって、子どもが学習においても生成AIに頼ってしまい、自力で考える場面が減ってきているように感じます。そのような中で、支援者はどのように関わるのが良いのでしょうか。

まず大前提として、これからの時代は生成AIが身近なツールとして広く使われていくと考えます。そのため、「AIを使うか否か」ではなく、「どう使うか」を考えることが重要です。生成AIを使えば効率的に学習を進めることもできますが、内容を理解しないまま課題を終わらせるためだけに使ってしまうと、もちろん学びは深まりません。

大切なのは、生成AIを自分を成長させるためのツールとして活用することです。疑問に思ったことを繰り返し質問したり、難しい内容を噛み砕いて説明してもらったり、資料や音声解説を作ってもらったりすることで、自分が納得できるまで理解を深める姿勢が重要です。そして、わからなかったことが理解できるようになる面白さや喜びを感じてもらえたらと思います。

宿題に追われてAIを使い続けている子どもがいる場合は、一度立ち止まり、「自分は学習を通してどのように成長したいのか」を一緒に考えることも大切です。そして、目標に向かってAIをどのように効果的に使うかを考えることが、生成AIとの望ましい付き合い方だと思います。

まとめ

今回は、藤川さんに、子どものインターネット利用に対して支援者ができることについて伺いました。ポイントを以下にまとめます。

  • まずは自分たちの団体が信頼できると認知してもらい、法的な理解を深めることが重要である。法律の知識は、弁護士や行政の方との情報交換を通じてアップデートしていけると良い。
  • 子どものインターネット利用の使い方が気になるとき、法律に触れない場合は自覚を促す声掛けを心がけることが大切。悩みを抱えている子は、自分の行動が必ずしも良くないことに気づいている場合も多いので、正論を伝えるだけだと、より追い詰めてしまう可能性もある。一方で、法律に違反している場合はきちんと指摘し、相手の行為に問題がありうることを伝える。
  • いじめは学校が対処する責任がある。そのため、支援者は学校が動きやすくなるよう、客観的な証拠を残したり、学校に求める対応を一緒に整理したりすると良い。
  • オンライン支援においても団体の信頼性を高め、24時間対応できない場合はきちんと明記することが大事である。
  • 生成AIは、あくまでも自分を高めていくツールとして使う。

※本記事の内容は専門家個人の見解であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません

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