子どもたちに安心・安全な時間を届けたい。これは子ども支援に関わる全ての方々に共通する思いではないでしょうか。だからこそ、子ども支援を始める時には団体内でルールを作ったり、必要な保険に加入する等の準備が必要です。
今回は安心・安全な拠点運営のために必要な準備についてまとめました。すでに運営に関わっているという方も、今の困りごとを解決する糸口が見つかるかもしれません。改めて、拠点運営のあり方を見直してみませんか?
関連記事
法律を守りながら支援を行うために
はじめに、個人情報・肖像権・著作権の注意、活動にあたって必要な契約・届け出についてご紹介します。 契約や届け出は法律に関わるため、トラブルが生じると団体の運営自体が危うくなります。個人情報・肖像権・著作権についてはマニュアルを作成し、職員だけでなくボランティアなど拠点運営に関わる人たちにも共有すると良いでしょう。
個人情報
まず個人情報について、必ず団体内で管理フローを決めておきましょう。例えば「保管の必要が無いものは〇日以内に破棄する」など、情報の取得・保管・利用・破棄についてのルールを決め、団体内で共有する必要があります。また、個人情報の入ったパソコンやUSBの扱いについてや、拠点外では子どもの名前は伏字(例:あみ→Aみ)にするといった個人情報の漏えいを防ぐためのルールを作成しましょう。
肖像権
肖像権についても、個人情報と同じように注意が必要です。活動の際に写真等を撮って活動報告や広報等に活用したい場合には、拠点に来る子どもたちから事前の承諾を得た上で、写真を撮るデバイスは団体で所有しているものを使用するなど、制限を設けましょう。
著作権
また学習支援において、教材をコピーして配布・使用することは著作権侵害となります。そのため、教材をコピーした印刷物(プリント)ではなく、教材自体を一人一人に配布することが必要です。しかし、参考書や教材を参考にして問題を作成することは可能です。
保険・契約・届け出
活動にあたって必要な保険・契約・届け出を行いましょう。必要な保険や契約の例を以下に記載します。
- 人への保険(ボランティア保険、傷害保険)
- 施設への保険(火災保険、賠償責任保険)
- ボランティアとの契約(機密保持契約、メディア露出に関する契約)
また、行いたい支援の内容によっても必要な届け出が異なります。子ども食堂などで食事の提供を行うためには、衛生管理の観点から、保健所へ届け出た上で相談・指導を受けなければいけません。また、子どもを拠点まで送迎する場合は、保険加入している車両を利用することや、有料の送迎には運送事業許可が必要となります。
参考資料
- 社会福祉法人全国社会福祉協議会「ふくしの保険」https://www.fukushihoken.co.jp/fukushi/front/top.php
「ボランティア活動保険」などの保険制度について紹介しているサイトです。登録方法など詳細につきましては最寄りの社会福祉協議会にお問い合わせください。
画像:https://www.irasutoya.com/2019/02/blog-post_606.html
トラブルを事前に防ぐために
続いて、トラブルの発生を事前に防ぐために拠点のスタッフやボランティアの間で共有すべきルールについてご紹介します。子ども支援団体は、子どもたちや保護者の方々と信頼関係を築き、子どもたちの安全を守る必要があります。
まず、子どもと個人的なつながりは持たないようにしましょう。私的に連絡先を交換したり時間外に会ったりすることは、個人情報の漏えいや団体としての信頼を失うことにもつながります。最近ではSNSやゲームアカウントなど、子どもの方からコンタクトがある可能性もありますが、子どもとスタッフ・ボランティアが依存的な関係性に陥ったり、特定のスタッフ・ボランティアの負担が過度に上がってしまうことは、拠点運営や支援という観点からも適切ではありません。
また、プライバシーに関することは深く聞かないというルールを共有しましょう。個人情報という観点のみならず、子どもが安心して拠点に通うためにも、子どもに関わるスタッフ・ボランティア全員が意識する必要があります。
一方で、子ども・保護者から得られた情報を運営者と共有し適切に対応するフローを全員が把握することも必要です。例えば、虐待が疑われる時や保護者からの相談があった時、或いは子どもが現場で怪我をしてしまった場合には、必ず運営者が事情を把握し、適切な対応をとる必要があります。運営者以外のボランティアやスタッフがこのような場面に接する可能性があるため、ボランティア含めたスタッフ全員に、「情報共有を運営者に対して行う責任がある」というルールを事前に共有しておきましょう。
緊急事態に対して適切に対応するために
最後に、事故や災害などの緊急事態への対応と虐待通告対応についてご紹介します。
事故や災害への対応
事故や災害に際しての対応に関しては、事前に情報を整理して対応マニュアルを作成しましょう。マニュアルに記載する内容の例を以下に記載します。
- 災害時の避難場所と、避難場所までの経路
- 最寄りの医療機関と、移送方法
- 利用施設におけるAEDの設置場所
- AEDの使用方法
- 事故・災害の対応フロー
これらの情報を整理・共有した上で、現場責任者が常に確認できるように持ち運びしておくと、いざという時にスムーズに対応がしやすくなります。
虐待通告対応
虐待通告についても、事前に団体内の対応フローを共有しましょう。虐待または虐待の疑いを発見した場合、然るべき機関に相談する必要があります。虐待通告は、子どもの安全を守り、困りごとを抱える家庭を支援に繋げるために重要なアクションです。自治体等から発行されているリスト等を事前に確認し、「どのような発言や行動が見られたら、誰に、いつ情報を共有するのか」までの対応を整理しましょう。
参考資料
- 厚生労働省「子供虐待対応の手引き 第3章 通告・相談への対応」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv12/03.html - 東京都「虐待に気づくためのチェックリスト」
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/katei/taiseikyouka310125.files/checklist.pdf
画像:https://thumb.ac-illust.com/a0/a00e013eeb0f4d1dcb58531c7c91f48c_t.jpeg
まとめ
今回は、安心・安全な拠点運営のために必要な規約についてご紹介しました。ポイントを以下にまとめます。
①法律を守りながら支援を行うために
- 個人情報・肖像権・著作権の注意を拠点内に共有する。
- 活動に必要な保険への加入や行政への届け出を行う。
②トラブルを未然に防ぐために
- 子どもと連絡先を交換したり外で会ったりしない
- 子ども・保護者からの情報は運営者が把握し適切に対応する
③事故や災害に適切に対応するために
- 事前に情報を整理しマニュアルを作成する
- 虐待通告に対する団体内の対応フローを共有する
※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません
この記事は役に立ちましたか?
記事をシェアしてみんなで学ぼう