連載第2回では、「地域と協働した包括的な子ども支援」のための行政部局とのコンタクトの取り方について、認定NPO法人Learning for All (以下、LFA)のソーシャルワーカー(SWer)に伺いました。
連載第3回にあたる今回も引き続き、地域の他の民間団体や学校とのコンタクトの取り方や、その際に気をつけるべきことについて伺います。
※個人の特定を防ぐため、匿名で掲載させていただきます。
地域の民間団体と連携する際の注意点
—地域の民間団体と連携する際には、どのようなことに気をつければよいでしょうか?
地域の民間団体と具体的に連携する際には、行政部局との連携以上に、個人情報の取り扱いに気をつける必要があります。前回お話しした通り、行政部局とコンタクトを取る際には、事前に子ども本人や保護者の同意を取る必要がありますが、民間団体と連携する際も同様に、事前に子ども本人や保護者に同意を取るようにしています。
また、自団体と連携先の民間団体との関係性や、子ども本人・保護者と連携先の民間団体との関係性にも注意を払う必要があります。地域の民間団体の間にも様々な人間関係がありますし、子ども本人や保護者が、連携先の民間団体を信頼できていなかったり、両者の相性が良くなかったりする場合もあります。良かれと思って行った連携が、子ども本人・保護者にとって傷つき体験にならないように、そうした関係性を丁寧に見るようにしています。
地域の民間団体との連携の具体例
—現在関わっている地域での民間団体との連携について、具体例を教えていただけますか。
現在私が関わっている地域では、LFAの学習支援拠点と、居場所づくりを行っている他の民間団体との間で連携を行っています。
生活状況や本人の心身の状態的に、ニーズが学習支援に合致しなかったためにLFAの学習支援拠点に来なくなった子どもがいるのですが、その子は、他の民間団体の居場所拠点には継続して通っています。LFAの学習支援拠点に来なくなった時は心配していたのですが、現在はその民間団体の支援者から様子を聞くことができており、「今は勉強に気持ちが向かないみたいなので、居場所の方で様子を見ましょう」という判断をすることができました。
また反対に、別の団体の居場所拠点に通っていた子どもが、LFAの学習支援に通うようになるケースもありました。きっかけとしては、連携している民間団体から「この子の学習を見てもらえないか」とLFAに相談があったので、まずその民間団体が主催しているフードパントリーへ行き、その子に直接会いました。そこで本人のニーズや生活・家庭の状況についてお話しして、自分たちの拠点で受け入れできそうかどうかを判断したのちに、LFAの学習支援に通うようになっています。
このように、それぞれの団体の支援の特色を活かした連携をすることで、「地域で切れ目なく子どもを支える」ということが、少しずつできるようになってきていると感じています。
画像:https://www.photo-ac.com/main/detail/2208930
学校とのコンタクト
—学校とのコンタクトの取り方についてはいかがですか。
学校とのコンタクトについては、今まででいくつかのパターンを経験してきました。
・支援会議
LFAと関わりのある学校では、支援の方向性や役割分担などを相談する支援会議を開き、同席させてもらっています。その会議では、LFAの学習支援や居場所での子どもの様子を先生たちに共有したり、反対に、学校での子どもの様子を先生たちから共有してもらったりしながら、より良い支援に向けて連携しています。
・拠点見学への担任の付き添い
子ども本人や保護者によるLFAの拠点見学の際に、担任の先生が付き添って来てくれることがありました。そこで担任の先生と挨拶して名刺を交換したことで、その後もお互いに連絡が取れるようになっています。
・行政部局経由での担任への連絡
児童虐待が絡むケースでは、行政の担当部局(子育てに関する総合相談窓口)経由で担任の先生にコンタクトを取り、子どもの様子で気になることがあればお互いに情報共有したい旨を伝えました。
・保護者面談への同席
保護者からの要望を受けて、担任との保護者面談に同席したことがあります。このような場合には、自分からいきなり担任に連絡を取るのではなく、事前に保護者から担任に事情を説明してもらうようにしています。いきなり民間団体の職員から「保護者面談に同席させて欲しい」と連絡されると、学校の先生も身構えてしまうと考えるからです。
画像:illustAC
学校とコンタクトを取る際の注意点
—学校とコンタクトを取る際の注意点があれば、教えてください。
学校とコンタクトを取る際に気をつけていることが2つあります。
- 進路に関することは、本人と学校に任せる
高校進学や大学進学・就職など、進路に関することは、基本的に子ども本人・保護者と学校の先生との間で相談してもらうように働きかけています。あまりこちらが直接的な支援を行うのではなく、本人や保護者が学校にうまく相談できるようにする、いわば「出過ぎない」ことを意識していますね。 - 連絡方法を工夫する
外部機関との連携については、学校ごとに窓口や連絡先、体制が異なります。いきなり担任に連絡したり、誤った窓口に連絡したりすると学校も混乱してしまうので、可能な限り公的な機関を通じて間接的に連絡するようにしています。例えば、子育てに関する総合相談窓口から連絡してもらったり、スクールソーシャルワーカー(SSWer)から連絡してもらったりすることが多いですね。もしそのような連絡が難しい場合は、まずは保護者から学校に電話してもらって、事情を説明してもらうようにしています。
地域連携において大切にしていること
—改めて、地域連携において大切にしていることを教えてください。
地域連携の際には、「あくまでも主体は子ども本人や保護者である」ということを強く意識しています。例えば、実際に連携を進める前に「〇〇に連絡してもよいですか」と本人や保護者の同意を取ったり、実際に連絡する際にも、本人に同意を得ていない情報は共有しないようにしたりといったことに気をつけています。
また、地域連携においては社会資源との人間関係や信頼関係が重要です。「連絡しやすいな」「信頼できるな」と思ってもらえるように、謙虚で真摯なコミュニケーションを心がけています。
読者へのメッセージ
—最後に、読者へのメッセージをお願いします。
ここまで記事を読んでくださった読者の方の中には、「地域連携は難しいな」「社会資源に連絡するのは気が引けるな」と思われている方もいらっしゃると思います。しかし実際には、連絡すると積極的に連携してもらえるケースが多いです。もちろん子ども本人や保護者の同意を取ることが前提ですが、その上で思い切って、行政や他団体、学校といった、地域の社会資源に連絡してみると、嫌がられずに意外とうまく連携できると思います。最初は尻込みする気持ちもあると思いますが、是非できるところからチャレンジしてみてほしいです!
まとめ
今回は、LFAのソーシャルワーカーに、地域の他の民間団体との連携の仕方や学校とのコンタクトの取り方、およびその際気をつけるべきことについて伺いました。ポイントを以下にまとめます。
- 地域の民間団体と連携する際には、個人情報の取り扱いや団体間の関係性、本人と連携団体との関係性に留意する。
- 学校との連携の方法は、支援会議への出席や保護者面談への同席など多岐に渡るが、進路関係のことに関しては出過ぎないことや、可能な限り公的な機関を通じて間接的に連絡することを大切にしている。
- 地域連携においては、あくまでも主体は子ども本人や保護者であることの認識や、社会資源との人間関係や信頼関係が重要である。
全2回に渡り、社会資源との繋がり方についてお話しを伺いました。ありがとうございました!
※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません
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