2024年4月16日に、子どもに向き合う全国各地の支援者が学び/知見/意見をシェアするオンラインイベント「こども支援ナビMeetup」の第21回が開催されました。
今回は、子どもの権利保障に関わるさまざまな活動・ケースに携わるおにざわ法律事務所の代表弁護士 鬼澤秀昌氏をお迎えし、「『法』の観点から、子どもの最善の利益を守る ー子ども・学校に関わる弁護士の取り組みとは」というテーマで子ども支援に関わる弁護士の仕事内容や弁護士の活用方法についてお話いただきました。
イベントレポート第1回では、鬼澤さんが裁判官志望から子ども支援に携わる弁護士になるまでの経緯や子ども支援弁護士の類型についてご紹介します。
鬼澤 秀昌 氏
おにざわ法律事務所 代表弁護士。東京都出身。司法試験合格後、教育系NPO法人の常勤スタッフとして勤務。その後、大手法律事務所を経て、2017年に「おにざわ法律事務所」を開業。第二東京弁護士会・子どもの権利委員会、日本弁護士連合会・子どもの権利委員会、学校事件・事故被害者弁護団などに所属。
自己紹介
こんにちは、鬼澤です。今日は、弁護士が子どものためにどのような活動を行っているかというお話を通して、弁護士がいろいろな立場、観点、場面から子どものために活動していることを皆さんに知ってもらえればと思っています。
今日のイベントの目標は2つです。
- 子どもに関わる弁護士の活動を知ること
- 子ども支援に関わる皆さんが
- 特定の場面に遭遇したときに「弁護士に相談しよう」と思い
- 窓口を子どもや支援者に共有し
- 子どもや支援者が、弁護士に相談しサポートを得られるようになること
一口に子どもに関わる弁護士と言っても、本当にいろいろな活動があります。どのような活動の種類があるのかを知っておくことで、皆さんの活動の視野も広げられるかと思っています。
また、弁護士の活動内容について知っているだけでは、いざというときにすぐ動けません。なので、子ども支援に関わる皆さんには「弁護士に相談すべき場面」「相談の窓口」「弁護士のサポートを受ける方法」についても知ってもらい、今回のイベントで得た知識を使えるようにしてほしいと思います。
裁判官志望から学校・NPO支援の弁護士になるまで
現在私は、主に支援者支援を軸に活動しています。メインとなっているのは、子どものために活動しているNPOや学校の先生への支援です。
まずは、現在の形に至るまで紆余曲折のあった私の経歴について少しお話したいと思います。
私は大学生のころ、裁判官になりたいと思って法学部に入学しました。しかし、大学のサークルでビジネスについて学び、ビジネスはうまくやればみんなが幸せになって、幸せが増えていく仕組みであることにとても面白みを感じました。そこで、そんなビジネスに法の専門家として関わっていくために、裁判官ではなく弁護士を目指し始めました。
そうしてビジネス法務について学んでいたのですが、勉強を進めるにつれてそれが主にお金のある人が対象となることに疑問を感じるようになりました。そんなとき、TABLE FOR TWO 代表理事の小暮真久さんが書いた「20円で世界をつなぐ仕事(ダイヤモンド社|2018年)」に出会いました。
TABLE FOR TWOでは、世界の貧困の問題と先進国の生活習慣病の問題を一挙に解決するための取り組みを行っています。私はこれを知って、「こんなにスマートに社会課題を解決する方法があるのか!」と衝撃を受けました。そこからソーシャルビジネスに興味を持ち始め、大学4年のときにNPOを支援するソーシャルベンチャー・パートナーズ東京(SVP東京)でインターンを始めました。
このときはまだ自分が教育に関わるとは思っておらず、いろいろなNPOの活動を知って感銘を受けていました。教育に関わるきっかけとなったのは、2011年のロースクール中に「Teach For Japan」を知り、現場のボランティアから参加したことです。司法試験合格後にはさらにTeach For Japanの活動にコミットしたいと思い、司法修習前に事務局で1年間働かせていただきました。
2014年の司法修習中には、同時に教育に関する判例について議論する「教育判例勉強会」を、以前Teach For Japanで一緒に活動をしていた教員の方で始めました。この勉強会で先生と子どもたちにどう対応していくかを議論するのが本当に楽しくて、現在まで10年ほど活動を続けています。この活動の中で、自分は子どもたちのために頑張っている人たちを支援することがやりたいことなのだと気づき、軸が定まっていきました。
2017年にはそれまで勤めていたTMI総合法律事務所から独立し、子ども支援や学校・NPO支援に100%力を注ぐために「おにざわ法律事務所」を開業しました。現在は子ども支援に関わる活動を主に行い、学校やNPO支援がそれぞれ業務の半分ずつ行っています。
弁護士の仕事
まずは、弁護士の一般的な仕事について解説していきたいと思います。
画像引用元:おにざわ法律事務所
一般的には「一般民事事件」「刑事事件」「企業法務」が弁護士の主な仕事です。これ以外の仕事もたくさんあります。
一般民事は離婚・相続・交通事故などの裁判、刑事事件は逮捕・裁判となった場合の弁護、企業法務はM&Aのサポートやファイナンスの契約書類作成、知的財産保護のための活動などを行います。
弁護士のさまざまな活動の中で共通しているのが、「法律で定められている権利を守り、実現する仕事」という点です。
2023年には「こども基本法」が制定され、子どもの権利が条約ではなく日本の法律上で明確に定められました。子どもの意見表明権などの基本的な権利がすべての弁護士にとって守るべきものとなり、そのためにさまざまな弁護士が活動をしています。
子ども支援に関わる弁護士の類型
ここからは子ども支援者や支援者支援に関わる弁護士の類型について詳しくお話ししていきます。
画像引用元:おにざわ法律事務所
支援は、大きく分けて「直接支援」と「間接支援」の2種類です。
直接支援は、子どもから直接話を聞いて子どもをサポートする場合もあれば、家庭内のトラブルを解決・サポートする場合もあります。
間接支援は、学校や子ども支援のNPOといった支援者を支援するものです。
直接支援について
直接支援は主に3つの類型があります。
- 子どもから相談を受ける
- 子どものために活動する
- 家庭の法律相談に乗る(法テラス)
1つ目の「子どもから相談を受ける」については、SNSや電話で弁護士に直接相談できる形が一般的です。全国的には電話相談がメインで、LINE相談は最近一部で始められています。
2つ目の「子どものために活動する」は、子どもの話を聞いて子どもの権利保障のためにさまざまな機関への働きかけを行う「子どもオンブズマン(オンブズパーソン)」などがあります。そのほか、活動という点でみると、付添人や子ども担当弁護士、未成年後見人、子どもの手続代理人などがあります。
3つ目の「家庭の法律相談に乗る(法テラス)」は、直接支援のうちの家庭支援を担うことが多いです。無料で相談できるので、弁護士を利用するのが経済的に難しい家庭でもまず相談をすることができます。
法テラスは無料で相談できるのがメリットですが、一方必ずしも子ども分野に詳しい弁護士に相談できるとは限らないというデメリットもあります。そのため、子どもが直接相談するなら、電話相談やSNS相談を利用するのがおすすめです。
間接支援について
画像引用元:おにざわ法律事務所
間接支援を行う弁護士には、主に3つの類型があります。
- スクールロイヤー
- 児童相談所勤務弁護士
- NPO等の支援を行う弁護士
1つ目のスクールロイヤーでは、学校の相談を受けて助言をし、学校の判断をサポートします。子どもたちや保護者の話を直接聞くと利益相反という問題が発生するため、一般的にスクールロイヤーは相談を受けた学校側についてサポートを行います。
2つ目は児童相談所に勤務する弁護士です。この弁護士は児童相談所の判断を法的にサポートします。常勤職員の場合もあれば、非常勤職員の場合や顧問として適宜相談に乗る場合などがあります。
3つ目は、NPO等の活動をサポートする弁護士です。これが私の広げていきたい活動で、NPO等の運営をサポートすることで、直接支援の仕組みを支えています。
まとめ
今回は、おにざわ法律事務所代表の鬼澤さんに、教育や子ども支援に関わるようになったきっかけや子ども支援に関わる弁護士の類型について伺いました。ポイントを以下にまとめます。
- 子ども支援に関わる弁護士は大きく分けて「直接支援」と「間接支援」の2種類ある。
- 直接支援は、「子どもから相談を受ける」「子どものために活動する」「家庭の法律相談に乗る(法テラス)」といった類型に分けられる。
- 間接支援に関わる弁護士としては、スクールロイヤー、児童相談所勤務弁護士、NPO等の支援を行う弁護士がいる。
第二回では今回紹介した直接支援と間接支援それぞれの相談窓口についてご紹介します。
※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません
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