【前編】学校と連携しながら「学習支援」を行う。導入ステップとポイント ーNPO法人Learning for Allの事例ー

学習遅滞を抱えた子どもや発達特性を持った子どもへの学習支援などを、学校や地域のNPOと連携して行っているNPO法人Learning for All (以下、LFA)。LFA独自の拠点だけでなく、公立の小中学校と連携して「学習支援事業」を行っています。

今回ご紹介するのは、学校連携をしているLFAの学習支援事業についてです。学校現場と連携し学習支援事業を導入する際のステップや、学校との連携において大切にしていることなどをご紹介させていただきます。

LFAにて、学習支援拠点・居場所支援拠点の全体統括を担当している、多田さんにお話を伺いました。

プロフィール:多田 理紗
Learning for All 子ども支援事業部。大学生当時、地元での原体験からLFAに参画し、非常勤職員として研修開発・現場運営統括に従事。大学卒業後、IT企業を経てLFAに復帰。全ての子どもの”子どもの権利”・全ての人の”学習権”が保障され、一人一人が主体として思いやりをもち豊かに生きる社会にしたい。”自分が大切にされ、自分を大切に思うこと” ”身近な他者や社会と繋がりをもち、しんどいときは誰かに頼り、自分も誰かから頼られる存在であること” “やりたいことが見つかれば、そこに向かって踏み出す糧となる経験”を届けたい。
最近ハマっていること:お花が自宅に届く定期便、日向坂46の番組を観る

LFAの「学習支援」とは?

まずはLFAの学習支援とはどのようなものなのか教えてください。

LFAは小学4年生〜中学3年生を主な対象として学習支援を行っています。公立の小中学校や、地域の公民館、地域のNPOが持つ施設をお借りして「学習支援拠点(以下、拠点)」とし、放課後や土日に勉強をサポートしています。子どもたちに勉強を教えるのは、研修(40時間程度)を受けた大学生のボランティア教師たちです。このボランティアたちが子どもたちひとりひとりに合わせたカリキュラムを作成しています。

 

━━子どもたちの状況に合わせた対応をされているのですね。支援は無償で行っているとのことですが、財源はどのように確保しているのでしょうか?

私たちの活動は、多くの皆様からの寄付金で成り立っています。その寄付金を元に運営している拠点もあれば、行政からの委託に基づき学校現場(校長先生や現場の先生など)と連携して運営している拠点もあります。

 

━━学校を学習支援拠点とする場合、どのように事業開始のきっかけを作るのでしょうか。

行政(教育委員会・教育センター/市区町村など)に働きかけることで、事業開始のきっかけを作ることが多いです。

行政への働きかけは、急にできるものではありません。学校外で既に支援している子どもについて話すことをきっかけに学校での支援につながったり、それまでの地道な支援実績の積み重ねによって、事業開始のきっかけを作っていきます。

既に学習支援事業を行っている学校の校長先生が近隣地域の校長先生にも話をしてくれ、他の学校での支援につながったこともあります。

 

学校現場と連携した「学習支援」の導入ステップ


━━学校側が支援事業の導入に前向きな場合、その後、具体的にどのように導入を進めていくのでしょうか。

支援事業を始めるにあたっては、学校と信頼関係を築くのが第一歩だと考えています。具体的な進め方を以下にご紹介させていただきます。

1.学校との信頼関係を築く

まずは「怪しい団体ではなく、しっかりとした体制のある組織だ」と認識してもらうことが大切です。そして「団体として個人として信頼できる」と思ってもらうことが、非常に重要だと考えています。LFAの場合は、具体的に以下のような情報を提供する、「実際に見てもらう」ことで、学校の先生方にとって信頼できる組織であると理解していただけるよう、努力しています。

  1. 継続的に支援が可能な資金があること
    LFAの活動は個人・企業から寄付をいただき成り立っており、継続的に支援できる資金があることをお伝えしています。

  2. 理事会などの組織体制
    理事の紹介や組織の成り立ちを伝えています。理事会があることで「しっかりした組織なんだ」と思っていただくことも多いです。

  3. 学習支援を行う人材について
    実際に生徒と接して学習支援にあたるのは、教育や子どもへの支援に関心があり、しっかりと研修を受けた大学生ボランティアであることをお伝えしています。実際に使っているボランティア向けの研修資料なども見せながらご説明をすることもあります。

  4. 既に運営している学習支援拠点を見学してもらう
    事業開始にあたって、LFAが既に運営している他拠点での学習支援をご見学いただくこともあります。実際に見ていただくことで、イメージがしやすくなり、「これなら学校でできそうだ」と思ってもらう、信頼してもらうことに繋がると考えています。

2.学校のニーズを把握

  • 補講の実施など、既に学校現場で行っていること
  • やりたいと思っているが、人手不足などによって手が回っていないこと

をヒアリングし、学校の現状や、先生方はどのようなことを望んでいるのか、学校のニーズを把握していきます。

ヒアリングをしていくと、困難度の高い子どもへの対応が話の中心となることが多く、サポートが必要なすべての子どもへの対応が人手不足によって難しい、などの声が上がります。先生としても、限られた人手・時間のなかで、もどかしい思いをしている方も多くいらっしゃいました。

発達特性のある(特にグレーゾーンの)子どもなど集団授業においてサポートをしたほうがいいと考えているがそこまで手が回っていない、不登校傾向にある子どもへのサポートができていないなど、学校ごとにさまざまな課題・ニーズがあります。どのような困難を抱えた子どもがいるのか、具体的な事象で確認することが大切だと考えています。

3.支援開始・方向性を合意していく

具体的なニーズを把握したら、支援開始に向けて具体的なこと(支援内容やスケジュール等)を合意していきます。LFAの場合、まずは「小さくはじめてみる」ことが多いです。

その例として、不登校傾向のある子どもに別室登校の形で補講を実施したことがありました。その成果が認められて、次年度からは、学習遅滞を抱えた複数の子どもたちに対して放課後に行う、学習支援へと拡大しています。

支援の具体的な方法や方向性は、途中で軌道修正することもあります。たとえば、ある中学校で実施したプログラムは、開始当初は参加者があまり集まりませんでした。私たちは、プログラムの構成が子どもたちのニーズに合っていないのではないかと考えましたが、先生方に話を聞いてみると、別の要因が分かったんです。

プログラムを実施しているのは「夏休みや冬休みの部活のある日」で、子どもたちはそちらを優先したいし、先生方も「部活も頑張ってほしい」と考えているため、参加人数が少なくなっていたのです。そこで、プログラム実施日を「平日の部活のない日」に再設定したところ、参加人数が4倍以上になりました。このように微調整をしながら、プログラムを進めていきます。

 

ここまでは、学校と計画を立案するためのステップを多田さんにお伺いしてきました。後編では、実際に子どもを募集する段階以降のステップや、支援の導入を円滑に進めるためのポイント等についてご紹介しています。

後編はこちら

【後編】学校と連携しながら「学習支援」を行う。導入ステップとポイント ーNPO法人Learning for Allの事例ー
【後編】学校と連携しながら「学習支援」を行う。導入ステップとポイント ーNPO法人Learning for Allの事例ー

※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません

 

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